「○○さんだけ特別にこの価格でいきます」

 ハウスメーカーの営業マンにこのように言われたら、あなたはどのように感じますか? もしラッキーと思った人は、営業マンの口車に乗せられて損をしてしまうかもしれません。「営業マンに騙されるケースは今もある」と警鐘を鳴らすのは、YouTubeでプロならではの視点で住宅の情報を発信する平松建築の平松明展さんです。


住宅営業マンに騙されて損をするケースとは…

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「例えば、ライフプランを捏造するケース。家を建てる時にライフプランを考えると、家の予算が明確になるのでやりましょうと提案をします。この提案自体は間違っていませんが、ライフプランは簡単に捏造できてしまうので、売りたい家の価格に合わせて難しい返済計画のライフプランを提案するところがある。

 さらに悪質なケースでは、曖昧な見積もりを作って誤魔化すなんてこともありました。極端な例ですが、『見積もりから1000万円値引きしますよ』なんて言うんです。すごい値引きじゃないですか? でもふたを開けてみると、キッチンは別料金と言われて、結果的に値引きはされていない。キッチンが別料金なんて、普通はありえません」

 さらに、モデルハウスを持っているメーカーが得意とする手口もあるそうです。

「エアコンを最大の強さにしておいて、お客さんが来る直前に弱運転に切り換える。すると性能の低い家でも、『弱運転でもこれだけ快適なんですよ』とアピールできるというわけです。弱運転でも本当に快適かどうかは、長時間見学してチェックしたほうが安全です」

 また、ライフプランを考えるファイナンシャルプランナーの知識不足によってトラブルが起こるケースもあるとも。

「ファイナンシャルプランナーの提案で予算が数百万単位で下がったとしても、断熱性能などを犠牲にしてしまうと、光熱費やメンテナンスの費用が増えて逆にお金がかかってしまうことも。長い目で見て、どちらがお得かをちゃんと考える必要があります」

いい営業マンを見抜くポイント

 ハウスメーカーの営業マンとやり取りするときは、どのような心構えで臨むのがいいのでしょうか?

「残念ながら、住宅業界は騙しの手口が通用しやすい構造になっています。もちろん、営業マンがすべて騙そうとしているとはいいませんが、相手のいう通りに家を建てるのはリスクが高い。

 そのうえで、営業マンの良し悪しを見分けるポイントは、①技術的な質問にちゃんと答えられるか、②実際にデータを見せてくれるか、③メリットだけではなくデメリットも説明してくれるかの3つになります。
これら3つの条件を満たしている営業マンは、ある程度信頼できると思います」

ただし、「契約を急がせる人は避けたほうがいい」と指摘し、次のように語ります。

「『今月契約していただけると、数百万円値引きします』という手口は、実はすごく多いのですが、急かすということは、ほかと比べてほしくないからですし、思考能力を鈍らせて速く契約させたいからなんです。

 それに工務店の営業利益は、3000万円の家で90万円から150万円が相場。数百万円の値引きなんかしたらすぐに赤字になってしまうので、最初から値引き後の価格で売ってもいいように作っています。

値引き額に騙されるのではなく、そもそも家の性能と販売価格がきちんと見合っているのか、きちんと質問したり、ほかのハウスメーカーと見比べたりするなどして、冷静に判断する必要があります」

営業マンからこんなワードが出たら要注意!

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写真はイメージ
 また、打ち合わせの時に出てきたら注意したほうがいいワードも教えてくれました。冒頭に挙げた「○○さんだけ特別にこの価格でいきます」もその1つです。

「先ほども説明したように、値引き額は織り込み済みであって、特別ではなく“普通”の価格なんです。そもそも公平ではないので、特別に値引きするというスタンス自体、非常に不誠実だと思います。

 次に『細かいことは後で決めましょう』は注意したほうがいい。これは追加費用が発生して、予算が大幅に超過する可能性もあるのでかなり危険です。細かいことまでしっかり確認したうえで契約することが大事です」

危険なワードが出てきた時は…

 人情に訴えかける危険なワードもあるそうです。

「人柄のいい営業マンに『ここはもう僕を信じてください』と言われると、流さ
れてしまうかもしれませんが、信じていい理由にはなりません。感情論に訴えかけて判断を急かしている可能性もあるので、いったん冷静になってください。


 注意すべきワードが出てきた際の正しい対応はどういったものになるのでしょうか。

「『少し考える時間をください』とはっきり伝えたうえで、他社と比較したり、家族と相談したりして、本当に契約を進めても大丈夫か、冷静に考える時間を作るようにしてください。悩んだときは、ハウスメーカーの家づくりのスタンスを確認するといいですよ。

 たんに家を売るために作っているのではなく、住む人に幸せになってもらう、喜んでもらうために家を作っているところなら任せても安心できると思います。そういう会社は、施工の品質がよくて、建てた家の光熱費のデータをしっかり残しているので、データを見せてもらったり、建設中の現場を見学したりして確認するといいのではないでしょうか」

<取材・文/黒田知道>
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