橋田壽賀子脚本の人気長寿ドラマシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で10歳から12年間、“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じていた宇野なおみさん(36歳)。かつて“天才子役”と呼ばれた宇野さんは現在、フリーライター、エッセイストとして活動中です。


 そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けるエッセイ連載。今回は「人との縁」をテーマに綴ります。

特技は「人との縁を手放さないこと」

36歳になった“元天才子役”が当時の共演者と再会するときに心...の画像はこちら >>
 先日、渋谷クロスFM「渋谷女子企画」というラジオ番組のゲストに出ました。このエッセイのおかげで呼んでいただいたんですよ! わーい。

 しかしそのきっかけは、なんと、25年ほど前の出会いに遡ります。

 皆様、ご機嫌よう。ハロウィンで大はしゃぎして「文化祭にノリでメイド服を着る平成ギャル」の仮装をして、軽く風邪を引いた宇野なおみです。

 今回はわたくしの特技、「人との縁を手放さない」ことについてお話いたします。

「渡鬼」子役時代の縁がラジオ出演へ

 私には2つ違いの姉がおりまして、かつて、姉妹で劇団若草という児童劇団におりました。齋藤こず恵さん、杉田かおるさん、山本耕史さんや高橋一生さんを輩出。声優さんでは飯塚雅弓さん(ポケモンのカスミの方ですね)などもいらっしゃいました。

 ある時、その劇団の新たな試みとして、所属者で公演を打つことになりまして。渡鬼出たてくらい? の私もウキウキで参加しました。この間金八先生に憧れていたという話をしましたが、とにかく当時の私は同世代で何かやることに強い憧れがあったんですよね。


 今もありますが。沖縄アクターズスクールみたい! と当時読んでいたちゃおの漫画になぞらえてウキウキしておりました。そこで、出会ったきれいな年上のお姉さんがいまして。勝手に懐くというご面倒をおかけし、お世話になりました(昔から、きれいな女性にすこぶる弱い)。

36歳になった“元天才子役”が当時の共演者と再会するときに心がけていること「縁を手放さないために」
当時の私たち
 そのお姉さんは時を経てアメブロのトップブロガーになっておられ、ラジオのMCを務めていて、偶然の再会を機にゲストとしてお招きいただきました。出演したラジオでは、当時の呼び名がつい飛び出しましたね。

自分が大人になったことでつながる縁もある

36歳になった“元天才子役”が当時の共演者と再会するときに心がけていること「縁を手放さないために」
第33回橋田賞授賞式にて(2025年5月10日)
 こうしたことはちょくちょく起こります。元子役として生きておりますと、小さい頃にお目にかかった方に再会するなんて事はよくあるのです。

 特に2025年は久しぶりに橋田賞のパーティーがあったので、渡鬼メンバー・スタッフさんにもたくさん再会できて、喜んだものでした。

 時代が変わったなぁと思うのは、皆さんInstagramのアカウントをお持ちだったこと! 野村真美さんや藤田朋子さんと相互フォローになるなんて、平成の私に言っても信用してもらえなさそうです……。

「まひる」役の西原亜希さんは、現場ではほとんどお目にかかることはなかったんですが、なんと橋田賞での立ち話をきっかけにランチをして、大変興味深いお話を聞かせていただきました。

 亜希さんの主演映画『スノードロップ』絶賛公開中ですので、皆さんぜひご覧ください。しんどい映画ですが、家族がいれば誰もが他人事ではないお話です。


ご無沙汰してます!元野生児です!という開き直り

 大人になってから再会すると、嬉しくもあり、気恥ずかしさをもりもり生じます。なんでございましょうね、緑山スタジオの前室で差し入れのおやつを物色しているといった、野生児時代やすっぴんを皆さんに知られているわけです。

 その恥の記憶を飲み込み、しれっとお目にかかることを心掛けております。また卑屈にも尊大にもならず、にこやかに接することがポイントでしょうか。

 人生、誰しもいろんなことがあります。比較的ぼけ~っと生きている私とて、それなりの艱難辛苦がございます。

 でも久しぶりにお目にかかった方にそんなことをベラベラと喋ったとて、だから何? という……。それよりも、今、その瞬間(とき)を楽しく過ごすことを最優先事項としています。

生きて再び会えることに感謝して

 何より、生きて再会できたことを喜ぶことがとても大事だと思っていて。いきなり大げさなと思われたかもしれません。でも、コロナ禍のときに、何度も訃報を聞き、再会できないまま終わってしまった方は何人もいます。ここ最近もお世話になった方の訃報を聞いたばかりで……。

 以前書きましたが、私は冠婚葬祭の「葬」の連絡を多く受ける人生です。だから「一期一会」の感覚はとても強いんです。


 今の友人とも、少し選択が違えば会えていませんでした。例えば、定期的に会うとある友人(以前のエッセイに登場)は、10年前に1回だけ、舞台で一緒だった共演者です。

 特に、子役としてキャリアをスタートさせていなければ、会わなかったはずの人。“会うことが間に合った”人がたくさんいます。

「縁」のはじっこを握りしめて

「縁の端緒を離さない」。これは心に刻んでいる、人生の座右の銘のひとつかもしれません。もちろん向こうから外されることもままありますが……。それもそれでご縁です。

 何があるかわからない人生だからこそ、出会った人たちを大切にしたいと思います。

 加津ちゃんだって、縁戚でもない「離婚した父親の再婚相手の実家」である幸楽に長く居候していたわけですからネ!

<文/宇野なおみ>

【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。
趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中
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