テレビで放送されているバラエティ番組が、過剰ともいえるコンプライアンス重視により年々つまらなくなっている。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などいくつかの番組は奮闘しているが、世間を騒がせるおもしろい企画をテレビで見る機会は少ない。


配信バラエティ台頭の中で存在感を増すABEMA

一方で、勢いを増しているのが配信サービスで制作されるバラエティ番組である。大成功を収めている『DOWNTOWN+(ダウンタウンプラス)』をはじめ、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、U-NEXTなどで、次々と興味深いオリジナルのバラエティ番組が制作されている。そんな中で、独自性が高く「バズる」番組を数多く配信しているのがABEMAだ。

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ここ数週間だけでも、ABEMAが制作したバラエティ番組はネットニュースで多く取り上げられている。例えば、霜降り明星・粗品がMCを務める『ドーピングトーキング』では、元俳優の押尾学氏を取り上げて大きな話題を呼んだ。

同番組は、「日常では絶対に行くことがない場所」「絶対に交わらない人」を対象に、芸人たちが取材を行い映像は使わずにエピソードトークを披露するトークバラエティ。見取り図・リリーは、「映像を使わない」という番組の趣旨がマッチして、押尾氏の事件後テレビ初となる取材に成功した。

この番組では、他にも「港区のギャラ飲み女王」「AV業界の裏側」「最恐心霊スポット」など、地上波では扱いにくい下世話なネタを数多く放送し、人気を集めている。

“問題作量産”のABEMAが女性企画でも攻め倒す

地上波が“つまらなくなった”本当の理由。ABEMAが独占する、テレビが封印した“刺激”の正体
画像:株式会社AbemaTV プレスリリースより(PRTIMES)
そして、同じくネットニュースの常連なのが『ダマってられない女たち』シリーズ。現在は「season2」を配信中で、MEGUMI、剛力彩芽、ヒコロヒーがMCを担当している。さまざまな女性たちの生きざまを紹介する番組で、夫が娘の元同級生だという21歳差婚をした夫婦が登場し、SNSで賛否両論を巻き起こした。

また、SNSで話題の人物を取り上げるのがうまく、「ゆうこす」こと菅本裕子や伝説のキャバ嬢・愛沢えみりなどに密着。ネットニュースでネタにされることが多く、高い人気を維持している番組だ。

地上波では絶対無理な“禁断企画”を連打

同じくネットでバズりやすいのが、ニューヨークとさらば青春の光がMCを務める『愛のハイエナ』だ。2023年に放送をスタートしてから、セクシー女優や男優を積極的に起用し、俳優・山本裕典のホスト企画や木下優樹菜がキャバ嬢になる企画も実施。
セクシー女優による恋愛リアリティーショーを展開するなど、テレビではできない攻めた企画が満載の番組である。

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画像:株式会社AbemaTV プレスリリースより(PRTIMES)
そんなABEMAの中で、不動の人気を得ているのが、MCを千鳥が務める『チャンスの時間』だ。尖った企画を数多く放送し、アンジャッシュ・渡部建を不倫ネタで何度も出演させている番組としておなじみである。

再ブレイクした永野がかつてのような毒舌キャラで登場するなど、人気芸人をうまく起用し独自企画を次々と生み出している。番組内ではタバコやギャンブル、下ネタを取り扱うことが多く、いまやテレビで売れっ子となった千鳥の荒々しい姿を見られるのも魅力だ。ABEMAを代表するコンテンツで、2018年4月のスタート以来現在も続く長寿番組となっている。

“深夜テレビの亡霊”を呼び戻すABEMAの異端性

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画像:株式会社AbemaTV プレスリリースより(PRTIMES)
この他にも、都市伝説を取り扱う『ナオキマンの都市伝説ワイドショー』、パチンコ・パチスロ番組『パーラーカチ盛り ABEMA店』、現在令和ロマン・くるまが挑戦中の『世界の果てに、○○置いてきた』シリーズなど、配信中の番組だけでも多種多様なバラエティを制作している。では、こういった番組は何が魅力的なのだろうか?

ABEMAで配信されるバラエティは、昭和の深夜番組を彷彿とさせる“人間の欲望むき出し”な企画が多く、芸人が自由に暴れられる空気感を持っている。テレビでは許容されなくなった刺激的な世界観が、配信という舞台で復活しているのだ。

同じ配信サービスでも、Netflixなどのバラエティ番組は予算をかけて高尚な作り方をしていることが多い。下世話な部分にこそ、ABEMAの魅力があると考えられる。

11月14日に発表されたサイバーエージェントの決算報告によると、ABEMAなどを含むメディア&IP事業が黒字化したニュースが報じられた。
軌道に乗ったABEMAがさらに勢いをつけるために予算を投じ、新たなバラエティ番組を生み出す可能性は高い。

近い未来、バラエティを視聴するならテレビではなくABEMAという時代が訪れるかもしれない。

<文/ゆるま小林>

【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆
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