マーラータンの人気はどこまで続く?

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 今年のトレンドフードとして真っ先に挙げてもおかしくないほど大人気なのが、「麻辣湯(マーラータン)」。2025年日経トレンディヒット商品でも6位にランクインするほどの注目株で、都内の専門店は連日大賑わいになっています。


 並んでいる客層を見ると、明らかに若い世代の女性が多く、中高年サラリーマンや家族連れは多くありません。やはりブームの火付け役は情報感度の高い女性にありそうです。

 このマーラータン人気、果たしてどこまで続くのでしょうか? これまでのトレンドフードをさかのぼると、ブームが継続するケースと陰りを見せてしまう場合とで明暗が分かれますが、結論から先に申し上げれば、マーラータン旋風は超ロングランの予感。

 そしてあるスタイルで定着するのではないかと考えています。その理由は一体? そこで今回は、マーラータンが気になる皆様に向けて魅力をご紹介しながら、今後の行方についても考えていきましょう。

行列グルメに成長。人気の秘密は3つ

空前の「麻辣湯ブーム」の明暗は?大注目の3つの理由と“唯一のネック”
ある日私が注文したマーラータン。しましま模様の団子や練り物が気になっている人は多いのではないでしょうか?
 そもそも麻辣湯は中国で一般的な屋台料理の一つとして長く愛され、麻=痺れる、辣=辛い、湯=スープの意味を持った中華料理です。

 日本では山椒や唐辛子が効いた火鍋風のスープにもちもちの春雨麺を投入した薬膳的な麺料理として2007年頃から提供されはじめました。

 現在はさまざまな専門店が登場し、スープの味や具材に個性が光りますが、いずれも共通して言える大人気の秘密は3点に集約できます。

大人気の理由①2000円以内で自由に具材や麺が選べる

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50種類以上のトッピングや麺を自由に組み合わせることができるのが醍醐味。価格は重量で決まり1500円前後が平均価格
 マーラータン最大の魅力は、具材や麺を自由に選べる楽しさにあります。その種類は50種類以上。鴨の血、牛ハチノス、干し豆腐、イイダコなど未体験の食材がずらりとそろっています。

 価格は具材と麺の重量で決まり、1500円前後が平均価格。
通常のラーメンと比べると高いと感じられるかもしれませんが、この選べる楽しさは唯一無二。まるで中国本場を訪れたような気分で組み合わせることができ、そこにヘルシーさが付いてくるのですから、感度の高い女性にとっては決して高くはないのです。

 むしろアフタヌーンティやケーキビュッフェなどに比べたらリーズナブル。“2000円以内の癒される美容食”として大成功していると言えるでしょう。

大人気の理由②SNS映えするしましま模様の魚団子

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マーラータンにおなじみの「蟹味みそ入り魚団子」はいったいどんな食べ心地なのか?
 マーラータンに熱狂するもう一つの理由は、バズリ具材“しましまのアレ”ではないかと考えられます。その正体は、蟹味みそ入り魚団子。異国感たっぷりなかわいいビジュアルに、魚介のおいしそうなイメージが相まってSNSでも頻繁に見かけるようになりました。

 どんな味? どんな食べ心地? と気になっている人も多いことでしょう。食べてみるとカニカマよりもプリプリ感が強く、中の蟹味みそは変なクセはなく旨味を感じるまろやかさがあります。

 他にもしましまファミリーは増えつつあり、黄色いしましまはサザエ風味魚団子、オレンジのしましま棒はレインボーロールという肉入り魚団子で、いずれも日本では食べたことのない異国感が魅力になっています。

大人気の理由③ラーメンとは違うモチモチ麺の世界

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モチモチ食感の麺を自由に組み合わせること、従来のラーメン店では実現できなかった
 3つ目は、日本人が好むモチモチ食感を麺で味わえる点。しかも種類は豊富で、トウモロコシ麺、牛すじ麺、サツマイモ春雨などが揃い、これらを組み合わせ可能な店が増えています。

空前の「麻辣湯ブーム」の明暗は?大注目の3つの理由と“唯一のネック”
麺の種類はさまざま
 ミスタードーナツにおけるポンデリングやもっちゅりんのブームにあるように、もちもち食感がヒット性を持っていることは間違いありません。従来のラーメン店ではこのモチモチ麺を味わうことはもちろん、異なる麺を複数種類同時に選ぶことは難しいはず。


 つまりマーラータンはラーメンの世界を知る日本人にとって、親近感を感じながらも新しさを楽しめる麺料理なのです。

マーラー味は、リーズナブルな鍋つゆとして定着する可能性大

空前の「麻辣湯ブーム」の明暗は?大注目の3つの理由と“唯一のネック”
マーラー味が定番化しそうなのは鍋つゆ。中でもリーズナブルな商品が勝ち残るだろう。左:麻辣火鍋 750g(大榮貿易公司)3パック2880円/右:キッコーマン 芯からぽっと 麻辣火鍋(キッコーマン)214円
 トレンドフードを振り返っても、マーラータンのようなヒットの条件がそろうことはなかなかありません。つまり今回のブームは全国的にしばらく広がり続けるに違いありません。

 しかしながらネックになるのは、価格。毎回1500円払って食べることに不満を感じる人は一定数存在するでしょうから、マーラータンの味わいが広く定着するのは“鍋つゆ”なのではないかと予想しています。

 今年の鍋つゆトレンドをチェックすると、“麻辣火鍋”をうたった商品が多いことが分かります。細かく見ていくと1袋1000円近くする本場味から、200~300円程度のおひとり様用までありますが、手軽な後者が勝ち残っていくはずです。

 今年であれば話題の専門店に行くのも良し、リーズナブルな鍋つゆを選んで自宅で味わうのも良し。気になる人は麻辣の世界を自由に味わってみてくださいね!

<文/食文化研究家 スギアカツキ>

【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。
女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
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