山田孝之の近影が話題だ。物凄いヒゲ面。
ちょっとやそっとのヒゲ面ではない。もはや顔全体を覆い尽くすかのような勢いで、ヒゲが生えている。パッと見て誰だかわからないくらいだ。

 10月20日に42歳になった山田が、公式Instagram上に大きなマグロを釣り上げた一枚をアップした。ここでもマグロより気になるヒゲ面。コメント欄には「ヒゲすごい」「海賊みたい」などの中に、世界的文豪の名前まで引き合いにだした感想も。

 山田孝之が、原点回帰的に目指すワイルドライフとは? 男性俳優の演技を独自視点で分析するイケメン研究家・加賀谷健が解説する。

山田孝之が馴染む場所とは?

 ある晩、レコード会社の友人たちと都内某所のバーに流れ込んだ。終電後でも賑わい、ジュークボックスが置かれたレトロで少しワイルドな店内。壁際にはたしか山田孝之の写真が飾られていたと思う。日本を代表する俳優の気さくな一枚もまた、さりげなく店内装飾として馴染んでいるのがいい。

 どうやら山田孝之はこの店の常連客の一人であるらしいが、L字型のカウンター席にどかっとワイルドに座る姿を想像してみた。きっと物凄く絵になるだろう。
さらに想像してみる。山田孝之の存在感が際立つ空間や場所が他にもないだろうか。もっと言うと、山田孝之が馴染む場所とは?

 意外なことに、今年の11月から山崎育三郎が開設したYouTubeチャンネル「どうも、山崎育三郎です。」にここぞという場所があった。同チャンネル初回ロケ地は沖縄。

 山崎とは26年来の付き合いである山田がゲストとして登場し、いろいろ案内して回る。山田のプロフィールを見ると出身地が鹿児島となっているが、母が宮古島の出身であることから、生まれは那覇。沖縄はゆかりの地なのだ。

断崖とヒゲのパワースポット

 オープニングトークを軽く済ませ、山田と山崎が移動する。山田が指差したのは灯台。その先に美しい海が広がる。山崎は断崖の下をのぞく。

 沖縄をよく知る山田は、観光客がはしゃぐビーチから見える海ではなく、残波岬の断崖からの景色を旧友に見せたかったのだろう。そしてこの断崖に自分も立ちたかったのかもしれない。


 顔全体を覆い尽くす勢いで生えるヒゲ面の山田がおもむろに言う。「ここにいると、すごい馴染んでるでしょ?」。確かに馴染む。このヒゲ面で断崖に立っていると、万物を司るような雰囲気すらじわじわ漂う。

 少なくとも俗世を超越した感はある。このYouTube場面での山田の足元が、断崖とヒゲのパワースポット化しているとでもいったらいいか。

 逆に馴染まない場所(シチュエーション)もある。YouTube動画中盤、沖縄で人気の道の駅・おんなの駅に立ち寄る場面。甘い物を求めて仲良く並んで歩く山田と山崎は、南国の果物やシロップがたっぷりかかったかき氷を注文する。

 かなりボリュームのあるかき氷を二人でシェアしていると、山崎が「一番似合わないから」と言う。とはいえ、俗世を超越したかのような山田が浮世のかき氷をじゃりじゃり食べる風景もそれはそれで絵になる。

 かき氷店まで歩くまでの間、気になる仕草があった。
山田はしきりにたくわえたヒゲを指でつまむように触るのだ。ヒゲをたくわえた人はよくこういう仕草をするが、山田のそれはどこか仙人のように達観した動きを極めている。

ヒゲを生やすことにした意外な理由

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そもそもヒゲを生やそうとしたきっかけはあるのか。2024年11月9日放送の『王様のブランチ』(TBS系)でコーナー出演した山田がきっかけを明かしていた。

YouTube冒頭でも山崎が「あんな美少年!!」と言っていたように、俳優デビュー当時の山田は見目麗しい童顔だった。本人はどうにか大人っぽくならないかと考え、ヒゲを生やすことにしたらしい。

 あまり深くヒゲを剃りすぎると、肌を守ろうとしてヒゲが濃くなったりするが、山田はこの原理を利用した。少しエキセントリックだが、顎まわりの皮膚を拳でたたいて刺激し続け、何とかヒゲを濃くしたというのだ。それで今ではあそこまでのヒゲ面になった。

目指すは世界的文豪のワイルドライフ!?

 10月20日に42歳になった山田が公式Instagram上に大きなマグロを釣り上げた写真(10月21日投稿)をアップして話題になった。その一枚もまた覆い尽くす勢いで生えたヒゲで顔が隠れている。

 コメント欄には「アーネスト・ヘミングウェイみたい」という感想があった。これは興味深い。
アーネスト・ヘミングウェイは、戦後派(第一次世界大戦)としてアメリカ文学を代表するノーベル文学賞作家だ。1953年にピューリッツァー賞を受賞した代表作『老人と海』では、主人公が激闘の末にカジキマグロを釣り上げる。

 ヘミングウェイは小説の舞台であるキューバに移住して釣りを愛好したことでも知られる。沖縄に移住した山田との共通点を見出したコメントだったのだろう。

 確かに豊かなヒゲ面と原点回帰的な移住は、世界的文豪のようなワイルドライフを目指しているのかもしれない。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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