子どもたちが主役のはずのクリスマス会。ところが、テーブルコーデ、写真の角度、SNS投稿まで――。
“映え”を意識しすぎたママたちによって、その場は異様な空気に包まれていたとのことです。一見キラキラした時間の裏で、息苦しさを感じたという地獄のママ会の様子について話を伺いました。

キラキラママたちの“映えクリスマス会”が「地獄すぎた」。お菓...の画像はこちら >>
 地元宮城県で家族3人で暮らしていたという美紀さん(仮名・40歳)は、夫の転勤をきっかけに東京に引っ越してきて2年。去年の12月、娘の幼稚園のお友達ママから誘われたクリスマス会に参加したといいます。

 東京に越してきて初めてのママ会参加にドキドキしつつも、子どもたちの喜ぶ姿を見るのがとても楽しみだったんだそう。

 実際に参加してみて、これまで地元で参加してきたクリスマス会とのギャップに驚いたという美紀さん。実際はどのような空間だったのでしょうか……。

東京で出会ったキラキラママたち

「宮城から東京への引っ越しが決まり、幼稚園で出会ったママたちはとてもキラキラしていて、『さすが都会のママだなぁ』と感じる瞬間が多かったです。幼稚園の送迎だけでもヒールを履いておしゃれをしている姿を見て、地元とのギャップに正直とても驚いたのを覚えています」

 そう語ってくれた美紀さんは、東京への憧れはありつつも、実際に家族で上京することに馴染めるか不安もあったそうです。

「娘は、幼稚園に入園してからお友達がたくさんできたようで、毎日楽しく過ごしていました。私自身も娘のお友達ママと次第に仲良くなり、幼稚園帰りに一緒に遊んだりお茶をするような関係になっていきました。

 そんな中、ママ友の優奈さんから『毎年我が家でクリスマス会をやってるんだけど、美紀さんも娘ちゃん連れて来ない?』とお誘いを受けたんです。私以外のママたちは、子どもが幼稚園に入る前から仲が良いようで、毎年イベントごとに優奈さん宅で子どもたちのためにパーティをしているんだそう。
娘に話すと、『楽しそう! 行きたい!』というので参加させてもらうことにしました」

キラキラママたちの“映えクリスマス会”が「地獄すぎた」。お菓子を前に泣く子どもたち…もう帰りたい!
笑顔の親子
 引っ越してきて慣れない環境の中、クリスマス会に誘ってもらえたことが嬉しかったと美紀さんは話してくれました。

「映え意識で!」ママたちの撮影会が始まった

キラキラママたちの“映えクリスマス会”が「地獄すぎた」。お菓子を前に泣く子どもたち…もう帰りたい!
クリスマス
「東京のママ会はすごいと聞いていましたが、正直ここまでとは思わなかったです。案内されたママ友の自宅リビングには、壁一面に風船のアーチ、大きなツリーの下には英字ボックスやライト。まるでフォトスタジオのようで『すごい! オシャレだね!』と娘は目をキラキラさせていました。

 そして優奈さんから『映え意識でよろしく!』と言われ、周囲を見渡すとママたちは自分の子どもをツリーの前に立たせて、それぞれ撮影に夢中な様子。娘がお友達と遊ぼうとすると、『今写真撮ってるからちょっと待ってね!』と言われて、ママたちは『可愛い顔して!』『もっと笑って』『楽しそうにして!』と子どもに指示を出しながらしばらく撮影会が繰り広げられていました」

 キラキラしたクリスマス会に圧倒されつつ、撮影や飾り付けの準備が長時間続いたことで明らかに飽きはじめている子どもたちを見て、モヤッとしつつもせっかくだから写真を残したいという気持ちも分かると、複雑な感情を抱いたと美紀さんは話してくれました。

子どもたちが泣いているのに……

「ママたちの撮影タイムが終わると、優奈さんがお菓子を丁寧に並べてくれました。アイシングクッキーやツリー型のカップケーキ、海外風のキラキラしたオシャレなカトラリーの数々……。子どもたちはお腹が空いたようで、クッキーに手を伸ばそうとしましたが、『待って! 写真撮ってないからまだ食べちゃダメ!』と言われてしょんぼり。

『こっちの角度の方が可愛い!』『ライト少し落とそうか!』とお菓子を前にスマホを構えるママたちをよそに『早く食べたい、まだ?』と泣き出す子もいました。ママたちみんなが映え写真撮影に数十分かけていることに衝撃でした」

キラキラママたちの“映えクリスマス会”が「地獄すぎた」。お菓子を前に泣く子どもたち…もう帰りたい!
大泣きする子供たち
 美紀さんは「もはやクリスマス会というより、雑誌の撮影現場のようだった」と言っていました。

「ママたちはみんなそれぞれが手作りしたスイーツを持ち寄っていることを知らず、私が持ってきたのは市販のお菓子。まわりとの違いに次第に居心地が悪く、気まずさを感じ始めてしまいました。

 オシャレなスイーツを撮影しているママたちは、お腹が空いて不機嫌になった子どもたちに『美紀さんが持ってきたお菓子食べてて!』とテーブルの端の方に私が持ってきたお菓子を出し、撮影中子どもたちに食べさせていたことにかなりモヤモヤ。
私は映えを意識したようなお菓子を持参したわけではないので仕方ないですが、撮影よりもみんなでワイワイ食べたりする方が楽しいのになぁと思いました」

写真用に“笑顔”を作らされる子どもたち

「やっと撮影が終わり、子どもたちもみんな席についてお菓子を食べていたところ、ママたちはお菓子を食べる子どもたちの撮影を始めました。『ケーキこっちに向けて笑顔で!』『ツリーが映らないからもっと寄って!』など、子どもが食べる手を止めて、またしばらく撮影……。子どもたちが遊び始めようとすると、『みんなツリーの前に立って!』と言い、楽しそうな写真を撮ることに必死なママたちを私は遠目で眺めていました。

 子どもたちは親の指示通り楽しそうな笑顔を作らされ、決められたポーズで決められた場所で写真を撮られるだけで、決して楽しそうには見えず、娘も『もう帰りたい』と言い出しました。終始写真撮影会のようで、正直“これって誰のための会なんだろう”と思ってしまいました」

キラキラママたちの“映えクリスマス会”が「地獄すぎた」。お菓子を前に泣く子どもたち…もう帰りたい!
つまらなそうな顔の女の子
 せっかくだから子どもたちの笑顔の写真を残したい、可愛いスイーツも写真に収めたいという気持ちは理解できると言っていた美紀さんですが、キラキラの裏を見てしまった気がしたんだそうです。

SNSで見た“幸せな写真”にため息

「会が終わった翌日、スマホに通知が届きました。ママたちのSNSには『楽しかったね~!』『手作りお菓子可愛すぎ!』の文字と、まるで雑誌1ページのように整った写真が並んでいました。“いいね”の数もすごくて、あの会が写真で見るとこんなにもキラキラして見えることに複雑な気持ちでした。

 娘もお友達と仲が良いし、私もママたちが嫌いなわけではないですがうちはもう、来年はこの会には参加しないかなと思います。子どもが心から楽しめるなら、映えなくても我が家はそれで十分なんです」

キラキラママたちの“映えクリスマス会”が「地獄すぎた」。お菓子を前に泣く子どもたち…もう帰りたい!
笑顔な家族
 美紀さんはママたちとの意識の違いを身をもって感じたんだそう。写真映えは、一瞬のキラキラを残してくれるけれど、その裏で感じる「見えない圧」の重さは想像以上だったはず。完璧な写真よりも笑顔溢れる空間の方がずっと温かいのかもしれません。

<取材・文/鈴木風香>

【鈴木風香】
フリーライター・記者。
ファッション・美容の専門学校を卒業後、アパレル企業にて勤務。息子2人の出産を経てライターとして活動を開始。ママ目線での情報をお届け。Instagram:@yuyz.mama
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