90年代なかばから、その時代時代を代表する様々なヒロイン像を確立してきた松嶋菜々子さん(52歳)。

 1996年には朝ドラ『ひまわり』(NHK)のヒロインを演じたことを皮切りに、1998年には人生のパートナーとなる反町隆史さん主演の学園ドラマ『GTO』(フジテレビ系)のヒロインを好演。
1999年からは医療ドラマ『救命病棟24時』(フジテレビ系)のヒロインを務め、人気作に押し上げて長期シリーズ化に貢献しました。

 そして、20世紀最後の年である2000年に放送された恋愛ドラマ『やまとなでしこ』(フジテレビ系)は、社会現象を巻き起こすほどの大ヒットに導き、その時代の恋愛ヒロインを象徴する存在に。

29年前“朝ドラヒロイン”が『あんぱん』“嫌われ義母”で話題...の画像はこちら >>
 それから時を経て2011年、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)では、無表情でミステリアスという斜め上をいくヒロイン像を作り出し、最終話で世帯平均視聴率が40.0%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)という驚異的な記録を叩き出したのです。

 こうして次々と新たなヒロイン像を築き上げてきたのが“俳優・松嶋菜々子”でした。

脱ヒロイン化を進めており、順調に次のステージへ

 そんな松嶋さんですが、近年は脱ヒロイン化を進めており、順調に次のステージへとたどり着いています。

29年前“朝ドラヒロイン”が『あんぱん』“嫌われ義母”で話題。52歳・視聴率40%女優が見せる“脱ヒロイン”の覚悟
画像:株式会社資生堂プレスリリースより
 9月に大好評のまま最終話を迎えた朝ドラ『あんぱん』(NHK)では、今田美桜さん演じるヒロインと対立する“嫌われ義母”役で、作品にピリッとしたスパイスを加えていたのは記憶に新しいところ。

『あんぱん』は『アンパンマン』の作者・やなせたかし先生の妻・暢を主人公のモデルとした作品です。ヒロイン・のぶを今田さんが演じ、夫・嵩を北村匠海さん、のぶの母を江口のりこさん、嵩の母(ヒロインの義母)を松嶋さんというキャスティングでした。

 義母・登美子は文化的な教養がありエレガントな佇まいながら、勝ち気で自由奔放な性格のため、嵩を苦しめ、振り回し続けていたキャラクターだったのです。

義母の嫌われっぷりのおかげでヒロインが引き立った

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画像:リシュモン ジャパン合同会社プレスリリースより
 登美子は劇中で3度も結婚しているのですが、最初の夫との子である嵩を幼い頃に捨てて出ていきます。にもかかかわらず2番目の夫と離婚すると、8年もほったらかしにしていたのに、いけしゃあしゃあと再び嵩の前に現れて翻弄するのです。

 そんな登美子に対して怒り心頭ののぶが、「今ごろ何しに戻ってきたがね! これ以上、嵩を傷つけるのはやめちょってください」とブチ切れたシーンは、物語序盤のハイライト。のぶの他者を思いやる愛情深さや大人を相手にしても物申せる芯の強さが、視聴者に伝わったのです。

 ただ、裏を返せば、そのシーンで今田さん演じるヒロインの魅力が際立ったのは、登美子の一挙手一投足の振る舞いがとにかくムカつき、視聴者からのヘイトを集めていたからこそ。
松嶋さんがヒールに徹していたからこそ、ヒロインが抜群に輝いたのです。

江口のりこが演じる“実母”とのピリピリした掛け合い

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画像:株式会社資生堂プレスリリースより
 物語終盤、のぶと嵩は結婚して夫婦となっていましたが、2人が暮らすマンションで義母・登美子(松嶋さん)と実母(江口さん)のバトルが勃発。嵩が書いた物語にダメ出しをする登美子に、実母がブチ切れてメンチを切り合う事態に発展してしまいます。けれど、すかさずのぶが間に割って入り、「それまで!!」と力強く両者を制止。緊張の糸が切れた両母親は思わず笑い合って一件落着というシーンがありました。

 ここでも、松嶋さん演じる義母と江口さん演じる実母のバチバチした掛け合いの熱量が高かったからこそ、今田さん演じるヒロインの胆力が光ったシーンになったのでしょう。

 1996年の朝ドラ『ひまわり』でヒロインを務めた松嶋さんが、約30年の時を経て、いじわるな役どころでヒロインを引き立てていたというのは、なんとも感慨深いものです。

『SUPER RICH』でも主人公・江口のりこと対決シーン

 近年はヒロインの引き立て役を好演することが多い松嶋さん。『あんぱん』では義母vs実母として丁々発止の掛け合いで魅せた江口さんとは、江口さんが主演のドラマでも一触即発なキャラクター同士として共演していました。

 2021年の『SUPER RICH』(フジテレビ系)では、主人公を江口さん、主人公の元上司で憧れの存在だったビジネスパーソンを松嶋さんが演じていたのです。松嶋さんの役どころは登場するたびに不穏な雰囲気を漂わせるIT企業取締役で、終盤に主人公の会社に敵対的買収を仕掛けるというラスボス的なポジションでした。

『あんぱん』では面と向かっての言葉の応酬のバトルでしたが、『SUPER RICH』ではクールな頭脳戦を展開しており、まったく違う戦いが楽しめたのです。

90年代の絶対的ヒロインからの大胆転身

 また、2022年の松本潤さん主演『となりのチカラ』(テレビ朝日系)にも松嶋さんはレギュラー出演していましたが、この作品では主人公の隣人の“奇人おばさん”を怪演していたのです。全身黄色や全身青といったコーディネートをする電波系のキャラクターで、おばさんパーマに老け顔メイクまでして、あえて“美”をゼロまで消していたのには驚きました。


 前述したように90年代には可憐で気高いヒロインを次々に演じ、ビジュアルも最強だった松嶋さんが、性格も見た目もトリッキーな役どころで作品を盛り上げている姿を見ると彼女の役者魂を見せつけられたようで、感動すら覚えました。

『SUPER RICH』や『となりのチカラ』で脱ヒロイン化を着々と進め、主人公を引き立てる役作りと芝居を経験していたことが結実したのが、『あんぱん』で今田美桜さんの魅力を最大限にまで引き立てた“嫌われ義母”役だったのではないでしょうか。

<文/堺屋大地>

【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』(扶桑社)で恋愛コラム連載、『SmartFLASH』(光文社)でドラマコラム連載、『コクハク』(日刊現代)で芸能コラム連載。そのほか『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)などにコラム寄稿。LINE公式のチャット相談サービスにて、計1万件以上の恋愛相談を受けている。公式SNS(X)は @SakaiyaDaichi
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