11月17日、松山ケンイチが公式X上で「【誰も傷つけない悪口選手権】」というタイトルのポストでユニークな呼びかけをしたことが、大きな話題になっている。X内には本日のニュース一覧にも表示され、当然ネットニュースにもなった。


 Xを含め、松山ケンイチは各種SNSをフレキシブルに使い分ける。そこでは誰もがほっこりするような複数のキャラクターを設定して、気さくに振る舞う。そしてそのキャラはそれぞれまったくブレないのだ。

 連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合、2024年)で松山が演じた判事役もまたブレないキャラが最大の魅力だった。男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン研究家”加賀谷健が、SNSも演技もブレない松山ケンイチを解説する。

気さくなジューシー“トマト人間”として

 2024年の松山ケンイチの公式Instagram画面をスクロールしていると、何だかやけにあざやかな赤色が目にとまる。その赤色の正体……。2024年8月13日投稿の動画を見てみる。松山が開口一番に言う。「トマト」。赤色の正体はトマトだった。しかも体現止めで強調している。

 どうやらトマトが植えられたビニールハウスにいるらしい松山がさらに続ける。
「今日は葉っぱがすごいことになってるんで、葉かきしたいなと思ってます」。とある農家から送られてきたトマトジュースの味わいに感動したことがきっかけで、松山は自ら農作業を始めた経緯がある。主にInstagramで画像や動画を投稿しながら、トマトの栽培から収穫までをリポートしている。

 動画では「葉かき」と説明しながら、「でもちょっと下のほうが赤くなってきてて、ちょっと食べたいんですよね」と言って松山のアップがインカメで写り、完熟した縦長トマトを口に放り込む。

 咀嚼音とともに口いっぱいに広がるジューシーな味わいが伝わってくる。あまりの旨さに松山は目を丸くするのだが、日本を代表する俳優が、SNS上では気さくなジューシー“トマト人間”として振る舞うキャラ立ちが素晴らしい。

朝ドラ『虎に翼』でもキャラがブレない

 こうしたトマト人間キャラを確立する松山はとても伸びやかだ。それは2019年から東京と北日本で二拠点生活をするようになった、暮らしのスタイルから得た心の余裕から生まれるものだろうか?トマトの味わいに感動したことが高じて、撮影現場でも自作トマトジュースを振る舞っているらしい。

 近年の重要な俳優仕事でも固有のキャラクター性を堅持する名演があった。伊藤沙莉主演の朝の連続テレビ小説『虎に翼』で演じた、孤高の判事・桂場等一郎役だ。司法の独立を信念として、最高裁判所第5代長官にまでなった人物。いつでも口元をへの字に結んで厳めしい表情を崩さない。

 厳粛な態度とその佇まいは、書類などをそろりと移動させる手元の動作にまで行き渡る(その微動をつぶさにフォローしてすくい取るカメラワーク!)。


 一方で、足繁く通う甘味処・竹もとであんこ団子を食べるときだけは、一人満足気で口元をハの字に緩ませる。伊藤演じる主人公・佐田寅子を除いて、第1回から最終回までキャラが全くブレずに、レギュラー出演を続けた役でもあった。

各種SNSをフレキシブルに使い分け

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『虎に翼』放送後、まだ本編を見ていなかったという松山はX上で感想ポストを投稿し始めた。

 たとえば、桂場はさつまいもの皮や桜の花びらなど、一貫して顔に付着物がある役柄でもあったのだが、松山は自ら演じた役に対して「花びらついてんだよ」とセルフ突っ込み(2024年10月11日ポスト)。放送後のお楽しみポストにはほっこりしたものだ。

 松山にとって相当な当たり役になった判事役。その名演の功績を呼び水として、2026年1月からは主演ドラマ『テミスの不確かな法廷』(NHK総合)が放送予定で、同じNHKドラマ作品で判事(補)役を再演する。

 Xには「畑以外では殆ど法曹界に入り浸っていますが相変わらず今回もやっぱり癖あるキャラクターに仕上がっております」とユニークにポスト(2025年11月7日)している。

 今年もInstagramとInstagramと連携するThreadsでは主にトマト栽培の「畑」仕事を逐一報告しているが、Xでは「法曹界」キャラを確立しつつある。

 11月17日、松山が「【誰も傷つけない悪口選手権】」と題して「誹謗中傷が飛び交うSNS時代からこそ“誰も傷つかない悪口”を」と呼びかたポストが大きな話題になっている。このポストは固定され、プロフィールにも「開催中」ときちんと明記してある。

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松山ケンイチと妻・小雪が立ち上げた、捨てられていく貴重な「資源」をアップサイクルするプロジェクト「momiji」(オーロラ株式会社のリリースより)
 畑仕事や2022年に立ち上げたアップサイクルライフスタイルブランド「momiji」に力を入れるInstagramやThreads、「ちょびっと法律家」キャラでご機嫌に更新するXといったように、松山ケンイチは豊かなキャラクター性に合わせて、各種SNSをフレキシブルに使い分けているのだ。


<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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