あなたは誰かの無理解で傷ついた経験はありませんか?

 今回は義母の心ない言葉に悩まされてきた女性が救われたエピソードをご紹介しましょう。

デリカシーのない義母に悩まされて

 船越真由子さん(仮名・33歳)は結婚して3年目。デリカシー皆無の義母に、ずっと我慢を重ねてきました。


「結婚当初は『仕事は早く辞めて妊活しなさい』『子どもは33歳までには絶対に産んでよ?』なんて当然のように言われて、本当にストレスでした」

帝王切開を「寝てたらパッと出されるだけの楽な出産」と笑う義母...の画像はこちら >>
 妊娠がわかった時も、里帰り出産を希望すると「真由子さんの親より私が後に孫に会うなんて絶対に許せない!」と怒り狂い、夫が必死でなだめてようやく里帰りを認めたほど。

「出産後初めて会った時にも『太ったね~! すっかり豚みたいになって。実家でエサ食べまくったの?』と、1ミリも面白くない事をまるで気の利いた冗談を言っているような感じでニヤニヤ言われて頭にきましたね」

帝王切開を侮辱する義母

 そして極めつけは、帝王切開を侮辱する数々の発言でした。

「『帝王切開だからお腹痛めてないでしょ。赤ちゃんも誰がお母さんでもいいって思っているわよ』『寝ていたら終わったんだって? 楽ちんね~』とか……よくもまぁそんな酷いことを言えるなという感じでした」

帝王切開を「寝てたらパッと出されるだけの楽な出産」と笑う義母を、笑顔で黙らせた“隣人のひと言”とは?
帝王切開を馬鹿にする義母
 もちろん、帝王切開は決して“楽”などではありません。母親が選ぶ方法ではなく、様々な理由で経腟分娩では母子に危険が及ぶ可能性がある場合に、医師が命を守るために判断して行う手術です。その背景には、胎児の状態、逆子、母体の病気、出血リスクなど、いくつもの重大な医学的理由があります。

 さらに母体には感染や出血、術後合併症などさまざまなリスクが伴います。にもかかわらず「帝王切開はラク」「痛みがない」「母親が誰でも同じ」などの言葉が向けられてしまうのは、医学的事実とはまったく異なる“根深い偏見”だといえます。

楽どころか、死ぬかと思うほど痛かった

 そんなある日、義母と町内会の懇親会に出席した時のことです。

「町内会の雑談の中で、義母がいつものクセで調子に乗り始めたんですよ。『うちの嫁ね~、帝王切開だったのよ。ほら、寝ているだけの楽なやつ。パッと出されるだけだから、お母さんが誰でも同じよねぇ~』とベラベラ大声で言い出して」

 真由子さんはギュッと唇を噛み「またか」と思った瞬間……。
助け船を出してきたのは、近くの席にいた2児の母・木村さん(仮名)。朗らかで気さくな“町内のお姉さん”のような存在です。

「木村さんが穏やかな笑顔のまま、スッと義母のほうに向き直り、『お義母さん、私も帝王切開でした。楽どころか、死ぬかと思うほど痛かったですよ。術後は笑うだけで激痛だし、くしゃみなんて地獄。寝ているだけで終わるなんて、経験した人の前で言う言葉じゃありませんよ』と言ってくれたんですよね」

帝王切開を「寝てたらパッと出されるだけの楽な出産」と笑う義母を、笑顔で黙らせた“隣人のひと言”とは?
口論
 義母は驚いた表情のまま固まってしまったそう。

「木村さんが『帝王切開を誰でも同じなんて言う人は出産を知らなすぎるし、なにより自分の周りの人を平気で傷つけていますよ。そんな失礼なことを言うのは止めた方がいいです』と続けると、周囲の人たちが静かになり、義母に注目が集まりました。義母の顔はみるみる赤くなり、耐えきれなくなったのか立ち上がって足早に帰って行ったんですよ」

楽なお産はないし、出産方法に優劣もない

 真由子さんは胸がスッとして気持ちが軽くなり、木村さんにお礼を言いました。

「帰ると義母は『何なのあの女! 私に恥をかかせて!』とブチ切れていました。でもこの出来事は私にとって、救いになりました」

 帝王切開であろうと経腟分娩であろうと、どの出産にも痛みと恐怖、そして母の覚悟が伴います。どの方法で生まれた命も、同じだけ尊く、同じだけ愛されるべきものです。
そして、出産にまつわる偏見や無理解な言葉からお母さんたちを守るのは、周囲の大人たちの責任でもあります。

 木村さんのように「間違っていることは間違っている」と穏やかに伝えられる人がいるだけで、救われる母親はきっと増えるのではないでしょうか?

 出産方法に優劣はありません。どんな形であれ、母は命をかけて子どもを迎えます。だからこそ、お母さんたちが安心して「頑張った」と胸を張れる社会であってほしい……このエピソードは、そんな願いをそっと私たちに投げかけています。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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