今年の秋クールドラマは、見応えのある作品が本当に多かった。年間100本以上の日本ドラマをチェックするアラフォー筆者独自の視点で、この秋地上波プライム帯(19~23時放送)に放送された秋ドラマから、“最後まで観てよかった”珠玉の5作品をご紹介します。


※一部作品のネタバレを含みます。

じゃあ、あんたが作ってみろよ

秋ドラマ名作ベスト5。最もバズった「じゃあつく」も素晴らしか...の画像はこちら >>
この秋、最もバズったドラマといっても過言ではない作品は『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)でしょう。自分らしさを見失った鮎美(あゆみ/夏帆)と、完璧主義で超亭主関白思考な勝男(かつお/竹内涼真)のふたりが主人公。

鮎美にフラれたことをきっかけに、勝男は料理を通じて自分の在り方を振り返り、鮎美も別れと新たな出逢いを通じて自分の在り方を模索していく姿に多くの共感が集まりました。

衝突と歩み寄りの先にある“前に進む力”

筆者は令和の時代に昭和的価値観をもつ鮎美と勝男が、アップデートしていく物語と捉えていましたが、そう単純ではありません。アップデートできても、人とはぶつかるし、人生がすべてうまくいくわけではない。他者との行き違いを通じて自己を内省しながら、他者を理解しようと歩み寄り、前に進んで歩んでいくことの素晴らしさを丁寧に伝えてくれる作品でした。

そんな主人公をコミカルに愛らしく演じ切った夏帆&竹内も素晴らしかったです。

小さい頃は、神様がいて

秋ドラマ名作ベスト5。最もバズった「じゃあつく」も素晴らしかったけど、圧倒的No.1ドラマは
画像:TVerより
同じように夫婦のすれ違いと再生を描いた『小さい頃は、神様がいて』(フジテレビ系)も、リアルな人間模様に惹きつけられました。約19年前に夫婦が交わした「子どもが二十歳になったら離婚する」という約束が、実は生きていたと妻・あん(仲間由紀恵)に突き付けられた夫・渉(北村有起哉)。

すれ違いの中で確かめ合う、中年夫婦の愛と人生

“普通の夫、父親”である渉の、ちょっとダメなところも残念なところも、でも決して悪い男ではない一面も、そんな渉を愛おしく思う気持ちがありながらも、離婚の約束を心の支えに自分の生き方を模索する妻・あん。ふたりの中年夫婦の解像度が高く、名優ふたりの演技も光りました。

ふたりがすれ違いながらも想い合って歩んできた時間は愛おしくも切なく、理解しようと歩み寄りながら想い合う姿に涙した人も多いのではないでしょうか。


ぼくたちん家

違うカタチながら、他人が子どもの保護者になろうとするふたつの物語も令和ならではの視点で家族を描いていて、興味深かったです。

秋ドラマ名作ベスト5。最もバズった「じゃあつく」も素晴らしかったけど、圧倒的No.1ドラマは
画像:TVerより
まず、ゲイのカップルが中学生の保護者を担う『ぼくたちん家』(日本テレビ系)。50歳の心優しき飼育員・波多野(及川光博)と、人生にも恋にも冷めた38歳の中学教師・索(さく/手越祐也)のふたりに、15歳のトーヨコ少女・ほたる(白鳥玉季)が3000万円をもって保護者になってもらおうとする奇想天外なスタートでした。

優しさと勇気で寄り添う、“恋と革命”の群像劇

本作で描かれたのは、社会における居場所を模索する人たちの葛藤や苦悩に、優しさと勇気をもって寄り添ってくれる“恋と革命”の物語。登場人物たちを通じて社会が包括する問題を描きながらも、全体はコミカルな展開でエンターテイメント性も高かった。

役者陣も秀逸で、毎週観るのが楽しみな作品でした。

一方で、社会的マイノリティであると感じる人たちがいることを忘れてはいけないとも強く感じさせます。誰もが自分らしい生き方を選択できる優しい社会になったら……と願わずにはいられない作品でした。

フェイクマミー

秋ドラマ名作ベスト5。最もバズった「じゃあつく」も素晴らしかったけど、圧倒的No.1ドラマは
画像:TVerより
元ヤンで社長のシングルマザー・茉海恵(川栄李奈)とバリキャリ優等生・薫(波瑠)が、子どもの未来のために“母親なりすまし”という契約を交わした『フェイクマミー』(TBS系)も、現代社会が抱える子育ての難しさをテーマにしながらも、エンタメとして昇華させている良作でした。

偽ママという嘘から始まり、周囲の人たちを巻き込みながら、関係者たちの繋がりや闇落ちを思わせる展開でハラハラドキドキするサスペンス的な要素がしっかりと組み込まれています。

母と子、そして家族の絆を描く希望の物語

一方で、茉海恵の非公表の娘・いろは(池村碧彩)と、茉海恵・薫が家族として絆を深めていく様子や、茉海恵・薫それぞれの母親との関係性も丁寧に描かれました。

名門私立小学校が舞台だったこともあり、さまざまな母親が登場しますが、心を乱すことはあってもすべての母親が「子どもの幸せを願う」というスタンスが変わらない大団円の最終回であったことにも希望を感じます。


ザ・ロイヤルファミリー

秋ドラマ名作ベスト5。最もバズった「じゃあつく」も素晴らしかったけど、圧倒的No.1ドラマは
画像:TVerより
そしてこの秋、全10話を通じて筆者が最も胸を熱くしたのは日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)。競馬の世界を舞台に、20年にわたって馬主と競走馬を中心に夢を追い続ける人たちの姿を描いた作品です。

はじめから日曜劇場らしいクオリティではあったけれど、正直今ひとつ乗り切れていませんでした。しかし目黒蓮が本格的に登場した第6話から、一気に物語の展開に惹き込まれました。抗いようのない血の繋がりや、熱い気持ちに呼応していくように紡がれていく人々の想い。

その一つひとつが1話ごとに膨らみ大きくなっていき、毎話の山場となるレースには、彼らを観てきた視聴者もどんどん熱を帯びていったように感じます。ただの勝ち負けではない!最終話2025年の有馬記念のレース展開には、涙が止まりませんでした。

登場人物の誰もが、その役が持つ魂をそれぞれに表現しており、実力派俳優たちの熱演にも脱帽です。

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この秋クールドラマは名作揃いで、さまざまな作品に心動かされました。年明けまでその余韻を楽しみたいと思います。皆さんのお気に入りの作品はなんですか?

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。
X:@makoto12130201
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