『スタンド・バイ・ミー』や『恋人たちの予感』など数々の名作を生み出したロブ・ライナー(78)監督とミシェル・シンガー・ライナー夫人(68)が12月14日(日)、ロサンゼルスの自宅で遺体で発見された。その後、夫妻の次男ニック・ライナーが、両親を刺殺した罪で逮捕、訴追された。
次男は10代の頃から薬物などの問題を抱え、事件前日にはクリスマスパーティーでライナー監督と激しく口論する姿が目撃されていた。

死因は「鋭器損傷」

米有名監督夫妻が非業の死。「その日会う予定だった」「大きな穴...の画像はこちら >>
 ロサンゼルス・ブレントウッドの自宅で死亡しているのが見つかったライナー夫妻。このたび新たに公開された記録から、「複数の鋭器損傷」で死亡したことが明らかになった。

 鋭器損傷とは、ナイフなどの鋭利な物や尖った物体が皮膚に刺さって引き起こされる外傷。こうした状況から、現地の検視当局は夫妻の死因を「殺人」と断定したと報じられている。

 12月17日には、両親殺害の容疑で身柄を拘束されていた夫妻の息子ニックが初めて出廷。自殺を防ぐためのベストを着用し、ごく短い時間だけ法廷に姿を現したという。罪状認否は1月7日になる見通し。

 CNNなどの現地メディアは、ニック被告は2件の第1級殺人罪で訴追され、有罪となれば、仮釈放なしの終身刑あるいは死刑が言い渡される可能性があると伝えている。

寝室で両親の変わり果てた姿を発見

 夫妻が死亡しているのを発見したのは娘のロミー。14日午後3時前後、両親の様子を見に行ったところ、遺体を発見した。

 通報を受け、当局者が午後3時半頃に現場へ駆けつけたが、夫妻はすでに死亡していたという。現地の警察によると、遺体は自宅の主寝室で発見された。

 遺体には刃物によるとみられる傷があり、警察は「殺人事件の可能性が高い」として捜査を開始。
遺体が発見された当日夜9時過ぎ、ロサンゼルス郊外でニックの身柄を拘束した。

前日のクリスマスパーティーで親子が激しい口論

 事件前日の12月13日、夫妻はニックとともに、コメディアンのコナン・オブライエンが主催したクリスマスパーティーに出席していたと報じられている。しかし、ニックは当初、招待客に含まれていなかったことが明らかになった。

 米誌『ハリウッドリポーター』などの現地報道によると、夫妻がニックをパーティーに同伴させてほしいと主催者のコナンに頼んだという。ここ数週間、ニックの過激な言動がエスカレートしており、彼の精神状態が悪化していることに大きな懸念を抱いていた夫妻。そんな状況で、息子を自宅に残して出かけることをためらっていたそうだ。

 ピープル誌やニューヨーク・ポストなど各メディアの報道や目撃証言によると、パーティー会場ではニックの不審な行動が多々見られ、ゲストたちを困惑させていたとのこと。その場にいた人たちに「君は有名人か?」と執拗に聞いたり、支離滅裂な行動でトラブルを起こしたりしていたという。

 さらに、ニックは両親に激昂し、激しい口論に発展。ライナー監督と大きな声で言い争う姿が目撃されていた。その後、夫妻は動揺した様子でパーティーを途中で切り上げ帰宅。ニックはゲストの会話に割り込んで注意を受けた直後、怒った様子で会場から出ていったという。

10代の頃から薬物依存の問題を抱えていた次男

 ライナー監督は名優カール・ライナーの息子として生まれ、1970年代にドラマ『Allin the Family』で人気を得た。監督としては『スタンド・バイ・ミー』を皮切りに、『プリンセス・ブライド・ストーリー』『恋人たちの予感』『ミザリー』『ア・フュー・グッドメン』などを手掛け、アメリカ映画史に残る作品を数多く生み出した。
最近も『スパイナル・タップII』が公開されたばかりだった。

 ミシェル夫人とは1989年の『恋人たちの予感』撮影中に出会い結婚。長男ジェイク、次男ニック、長女ロミーと3人の子どもをもうけた。

 子供たちも米エンタメ界で活動しているが、ニックは10代の頃から薬物依存の問題を抱え、リハビリ施設への入所、さらにはホームレス状態を経験。そうした自身の半生を題材にした映画『ビーイング・チャーリー』(2015年)を父ロブと共に制作したこともあった。

「その夜に会う予定だった」長年の友人が明かす

 映画界に大きな影響を与えただけでなく、政治的・社会的な発言やリベラルな立場でも知られていたライナー監督。夫妻の訃報を受け、ロサンゼルス市長やカリフォルニア州知事が声明を発表し、哀悼の意を表した。

 バラク・オバマ元大統領もXに追悼文を投稿し「ロブとミシェルの悲劇的な死に心を痛めています」「目的に満ちた人生を送り、多くの人々にその価値観とインスピレーションを残した2人を心から悼みます」とメッセージを寄せた。

 また、オバマ氏と妻のミシェル夫人は、監督夫妻が死亡したとされる日に、2人に会う予定があったと明らかにした。ミシェル夫人は米トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』に出演した際、「私たちは彼らと長年の友人で、その夜に会う予定だったんです」と語り、衝撃と深い悲しみを示した。

元子役や俳優仲間らが悲しみのコメント

 米映画会ではとりわけ深い悲しみが広がっている。俳優や監督仲間たちが相次いで追悼コメントを発表する中、かつてライナー監督が手がけた作品に出演した俳優たちからは沈痛な声が上がっている。

『スタンド・バイ・ミー』の元子役たちも悲しみのコメントを次々と発表。
ジェリー・オコネルは「彼は父のような存在でした。親を亡くしたような気持ちです」、ウィル・ウィートンは「彼は実の父親以上に愛を示してくれました」、コリー・フェルドマンは、「彼は私たちみんなに、愛と思いやりを示してくれました。そのおかげで、私たち子役たちは彼との間に強い絆と信頼を築くことができました」と亡き監督を偲んだ。

『恋人たちの予感』に出演したメグ・ライアンは自身のSNSで、「真実の愛や物語、笑いの価値を教えてくれた」と感謝したうえで「彼がいなくてどれほど寂しくなることか……」と悲痛な思いを明かした。

米有名監督夫妻が非業の死。「その日会う予定だった」「大きな穴があく」広がる衝撃と悲しみ
ロブ・ライナー監督の名作『恋人たちの予感』※画像はAmazonより
 同じく『恋人たちの予感』に出演し、長年にわたってライナー監督と交友関係が続いていたビリー・クリスタルは、事件後すぐに現場となった自宅を訪れ、悲しみに暮れる姿が目撃されていた。そんなビリーは、自身の妻や友人ら数名で共同声明を発表。「彼の才能と人柄は映画界だけでなく多くの人々の人生に残る」と深い悲しみと敬意を表し、最後にこう結んだ。

「ロブのお気に入りの映画『素晴らしき哉、人生!』にこんな台詞があります。“人の人生は、たくさんの人の人生に触れている。だから、その人がいなくなると、とても大きな穴があくんだよね? あなたは、その意味をまったく分かっていない”」

<文/BANG SHOWBIZ、女子SPA!編集部>
編集部おすすめ