霜降り明星の粗品さんの辛口コメントが大きな話題を集めた『女芸人No.1決定戦 THE W 2025』(日本テレビ)。同大会は毎年「女性芸人のレベル」が議論されがちな故に、粗品さんのコメントはお笑いファンからも賛否を呼んでいました。


ヨネダ2000、唯一の女性コンビがM-1決勝へ

この『THE W』の裏で、間もなく放送される『M-1グランプリ2025』(テレビ朝日)の決勝の舞台に駒を進めたとある女性コンビに熱い視線が寄せられています。

今年の『M-1グランプリ2025』では真空ジェシカやヤーレンズなどの決勝常連組に加えて、初出場コンビ5組を合わせた計9組が決勝進出を果たしました。当日はここに敗者復活枠の1組が加わり、計10組で優勝が争われることになります。

その中で決勝進出2回目となるヨネダ2000は、今大会の決勝進出者の中で唯一の女性コンビです。2022年にも結成わずか3年目で決勝進出を果たし、今年は3年ぶりに返り咲きました。ヨネダ2000はボケの誠さんとツッコミの愛さんによるコンビで、2020年に結成。漫才をメインとし、突飛な設定や2人のシュールなやり取りが笑いを誘うコンビです。

正統派のしゃべくり漫才ではないものの、評価は高く、ファンも多いです。現在は劇場出演がメインでレギュラー番組は多くありませんが、子ども向け番組『天才てれびくん』(NHK Eテレ)にも不定期で出演しており、お茶の間にもじわじわと人気が浸透しています。

“イロモノ”から真の実力者へ急浮上

“女の武器を使っていない”『THE W』を離れM-1で勝負。...の画像はこちら >>
M-1だけでなくキングオブコントなど男女合わせたお笑いの賞レースで女性コンビが優勝はおろか、決勝に進出することは快挙とも言え、M-1ではこれまでに2005年にアジアン、2006年にはアマチュアの変ホ長調、2007年と2009年にはハリセンボンが決勝に進出してきました。そこからは女性コンビの決勝進出者は現れない時代が続きましたが、ヨネダ2000が2022年に13年ぶりに女性コンビがM-1ファイナリストとなったことで大きな話題に。

話題にこそなったものの、2022年当時はヨネダ2000の知名度そのものがあまりなかったことからダークホースのような存在で、M-1はいわばお披露目のような出方だったことは否めません。また奇抜でシュールなネタや2人のビジュアルインパクトもあって、どちらかと言うと「イロモノ」のように見られていた感もあります。

しかし今回の3年ぶり2回目の決勝進出を果たしたことで、真の実力者であることが証明されたことは間違いないでしょう。


『THE W』の余波が続く中、ヨネダ2000のM-1は「女性芸人の笑いはどこまで通用するのか」「面白い芸人に性別は関係ないからこそ正当な評価を」という『THE W』で粗品さんが提示し続けてきたテーマと真っ向から向き合う形となり、そこに世間が注目しているのは自然な流れでしょう。

立川志らくも絶賛!97点を叩き出した斬新ネタの秘密

“女の武器を使っていない”『THE W』を離れM-1で勝負。ヨネダ2000に「初の女性コンビ優勝」期待が高まる理由
画像:株式会社WOWOW プレスリリースより
特にヨネダ2000は、『女芸人No.1決定戦 THE W』には2021年と2022年に決勝進出を果たしましたが、2023年以降は不参加となっています。『THE W』への参加を続けなかった一方で、キングオブコントやM-1には出場を続け、今年M-1の決勝へ再び進出。この経歴を知った人々からは「女性芸人だけの賞レースには出ずに男性芸人に混ざり決勝進出は格好よすぎる」「M-1の歴史を変えるかもしれない」と高まる期待が寄せられています。

また賞レースの出場だけでなく、ネタそのものもヨネダ2000はいわゆる「女性芸人らしくない」とも言える面白さが人気の要因にもなっています。恋愛あるあるや容姿をいじるような内容ではなく、奇妙な掛け合いがクセになるよく練られた構成で、2人のユニークな人間性が出るヨネダ2000にしかできないネタばかり。

2人ともまだ20代という若さでありながらも、ネタ中の肝が据わった振る舞いは安心して笑える雰囲気があります。ツッコミの愛さんは大柄な体型ですが、その点を大々的にいじることもしないという新時代の女性芸人らしさが感じられるコンビです。

実際に2022年には審査員の立川志らくさんが「女の武器を使っていない」として100点満点中97点と高く評価していました。2022年から審査員の顔ぶれがガラリと変わり、今年は『THE W』の司会も務めたフットボールアワーの後藤さんも含めた審査員たちが彼女たちをどう審査するのかに注目は集まります。

2回目で栄冠?M-1のジンクスと歴史的快挙

“女の武器を使っていない”『THE W』を離れM-1で勝負。ヨネダ2000に「初の女性コンビ優勝」期待が高まる理由
画像:四国電力株式会社 プレスリリースより
ヨネダ2000に優勝の期待が寄せられている理由の一つに、近年のM-1では「初出場はお披露目、2回目で優勝」というケースが多いからです。2002年のますだおかだを皮切りに、2004年のアンタッチャブル、2020年のマヂカルラブリー、2021年の錦鯉、2022年のウエストランドはいずれも2回目の決勝進出で優勝。その傾向は近年さらに強まっています。
ヨネダ2000もネタやキャラクター性から、優勝の可能性が非常に高いと言えるでしょう。

また、もしヨネダ2000が優勝すれば女性コンビ初という快挙だけではなく、ボケの誠さんは奇しくも2018年に霜降り明星の粗品さんが打ち立てた25歳11か月という史上最年少優勝とせいやさんの26歳3か月に次ぐ、26歳8か月という若さでの優勝となります。

昨年のM-1では令和ロマンによる史上初の2連覇という結果で大いに盛り上がりました。近年のM-1は霜降り明星による「史上最年少」優勝、錦鯉の「史上最年長」優勝、令和ロマンの「2連覇」など、歴史を動かす優勝が続いています。今年のヨネダ2000も「初の女性コンビ」という形でM-1の歴史を塗り替える可能性が非常に高そうです。

2025年は日本初の女性総理大臣として高市早苗首相が就任した年。「性別に関係なく、実力でトップに」という世論の流れに、ヨネダ2000が乗ることに多くの期待が寄せられていると感じます。

『M-1グランプリ2025』は12月21日に生放送。その瞬間を見届けるのが待ち遠しいですね。

<文/エタノール純子>

【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中
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