漫才日本一決定戦『M-1グランプリ2025』(ABCテレビ・テレビ朝日系)が、12月21日に決勝戦を放送し、新王者が誕生する。2001年にスタートし21回目となる『M-1グランプリ』は、数ある賞レースの中でもダントツの権威と人気を誇る大会として知名度抜群だ。
今年は、どのコンビが優勝するのか、楽しみにしているお笑いファンも多くいるだろう。

『THE W』不出場が生んだ大きな注目

そんな中、意外な形で注目を集めるコンビがいる。それが、女性コンビとして唯一決勝に進んだ「ヨネダ2000」だ。ヨネダ2000は、12月13日放送の『女芸人No.1決定戦 THE W 2025』(日本テレビ系)に出場せず、『M-1グランプリ2025』に標準を定め、決勝へ駒を進めた。その姿勢が評価され、SNSで高い注目を集めている。

ちなみに、今年の『THE W』は、霜降り明星の粗品が審査員を務めるサプライズがあったものの、全体的にパッとしない賞レースになった。SNSでも酷評が多く、粗品は「賞金1000万円にしてはレベルの低い大会やったと思う」とコメントするなど、散々な結果に終わっている。

そんな女性芸人限定の『THE W』に出場せず、男女混合の『M-1グランプリ』でしっかり結果を残したヨネダ2000に、改めて称賛の声がSNSで挙がっているのだ。

では、ヨネダ2000は『M-1グランプリ2025』で優勝する可能性はあるのか?これまで、歴代の『M-1グランプリ』で女性コンビが優勝したことは一度もない。決勝に進出したのもアジアン、ハリセンボンなど限られた女性コンビで、ヨネダ2000をふくめ好成績を挙げたとはいえない状況だ。しかし、ヨネダ2000はその快挙にもっとも近づいている女性コンビだと考えられる。

奇想天外でも成立するヨネダ2000の漫才

「賛否分かれる漫才」『THE W』不出場で話題のヨネダ200...の画像はこちら >>
ヨネダ2000は、「誠(マコト)」と「愛(アイ)」のコンビで、トリオ活動などを経て2020年4月から始動。『THE W』をはじめ、『ABCお笑いグランプリ』でも決勝進出を果たし、『M-1グランプリ』では3年ぶり2度目のファイナリストとなった。

基本的に奇想天外な設定の漫才をみせ、主に誠の縦横無尽なボケに愛が抜群の演技力で戸惑いながら対応する形のネタが多い。
例えば、『M-1グランプリ2022』の決勝で披露した「餅つき」は、海外で餅つきを行い「ぺったんこ」という軽快なリズムで笑いをとるネタだ。説明だけでは良くわからないネタだが、実際に漫才を見てもなにをしているのかは良く分からない…。

ただ、漫才にリズムネタを組み込み、そこに次々とボケを被せるスタイルは新しく、なんとも言えないおもしろさを見せてくれる。

ヨネダ2000は、ランジャタイや真空ジェシカに近い雰囲気だが、そこに女性特有のネタも混ぜ合わせることで新しい笑いを生み出している印象だ。ツッコミが薄いのも特徴で、愛はネタの最中に戸惑いながら誠の「手伝い」を行うことが多い。強いツッコミをしないスタイルは没入感が高く、一度ハマると病みつきになる魅力を持っている。

初の女性コンビ王者は誕生するか

「賛否分かれる漫才」『THE W』不出場で話題のヨネダ2000はM-1優勝できる?懸念点は“新審査員”か
ヨネダ2000・誠さん 画像:四国電力株式会社 プレスリリースより
今回の『M-1グランプリ』でも、予選は中毒性の高いネタで勝ち上がってきた。決勝でも審査員にハマれば、一気に優勝に近づく可能性を秘めている。特に、2度目のファイナリストとなった今回は、2人のキャラクターが広く認知されている点も追い風だ。

前回の決勝後にブレイクし、多くのバラエティ番組で大暴れしているので、それぞれのキャラクターが世間に知られている。変わったネタをするコンビだと審査員も深く理解しているので、奇抜なネタに戸惑うことも前回よりはないだろう。

「賛否分かれる漫才」『THE W』不出場で話題のヨネダ2000はM-1優勝できる?懸念点は“新審査員”か
ヨネダ2000・愛さん 画像:四国電力株式会社 プレスリリースより
もっとも、課題がないわけではない。
ネタの好みがはっきり分かれるタイプであり、劇場では客席の反応に差が出る場面も見受けられる。実際、筆者も劇場でヨネダ2000の漫才を見たことがあるが、すべての観客が大爆笑という雰囲気ではなかった。『M-1グランプリ』では、ハマらない審査員が低い得点を出すと優勝の目は消えてしまう。

今年の審査員の顔ぶれを見ると、初審査員となる後藤輝基(フットボールアワー)、駒場孝(ミルクボーイ)の傾向が全く読めない状況だ。比較的、新しい笑いの形が好きな審査員が多い印象だが、1人でも低得点が出されると優勝は厳しくなる『M-1グランプリ』なだけに心配は残る。

とはいえ、ネタの爆発力をみると、初の女性コンビによる王者の可能性は十分にあるヨネダ2000。もっとも注目すべきコンビとして、『M-1グランプリ』の決勝の舞台でどんな大暴れを見せてくれるのか楽しみだ。

<文/ゆるま小林>

【ゆるま 小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆
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