『花よりガッツ』で入社1年目から活躍
――田村さんは2019年にRCC入社されました。アナウンサーになられて楽しかったことや大変だったことをお聞かせください。田村友里さん(以下、田村):もともと私は報道志望だったのですが、入社1年目に情報番組で『花よりガッツ』というコーナーを持つことができました。台本なし、アポなしで何も決まっていない状態で、街の人々と触れ合い、その魅力を発見していくという内容なのですが、視聴率がよくて、街の皆さんからロケに行くたびに「ガッツ!」と声を掛けていただけるようになりました。当初は「明日、○○町に行きます!」と放送で発表していたので最寄り駅で歓迎してくれる方もいました(笑)。
田村:ロケは「アナウンサーらしくやらないこと」を心がけています。広島弁で話しかけますし、こちらが素で接することで、はじめて相手の自然な言葉が出てくるんですよね。身近に感じてもらうことが一番大切だと思っています。今は『花よりガッツ』をやりながら、報道もやらせてもらえるようになったので、仕事の幅も広がり、やりがいを感じています。
――「ガッツ」というニックネームの由来はどこからきているのですか?
田村:『花よりガッツ』のディレクターが考えてくれたんです。私と話す中で「花こそないけど、こいつにはガッツがある」と感じたようで(笑)。
『ゴゴスマ』「ダレなんサー大賞」を3連覇
田村:「ダレなんサー大賞」は全国各地のアナウンサーが中継を行い、頂点を決めるという企画で、最初に出たときは入社3年目でした。大根畑から全身白タイツで顔も真っ白に塗って中継したんです。そのまま大根になって(笑)。だから、いまだに「大根の人」って言われますよ。でも、あのおちゃらけた格好をしているのに、アナウンス力がしっかりした中継をやるというのが、ディレクターの考えた演出の肝で、淡々と大根を紹介しました。
田村:あれは『花よりガッツ』でコンビを組んでいるディレクターさんとの作品です。その方は東京でバラエティ番組の制作にずっと関わっていた凄腕で、実家の広島に戻ってきた頃に私もRCCに入社しました。その二人でタッグを組ませようということになって、『花よりガッツ』が誕生したんです。
――そのディレクターさんも田村さんという相方がいるからこそ、インパクトのある映像表現ができたと思います。
田村:ありがとうございます! ダレなんサー大賞の1年目は白大根、2年目はお好み焼きを紹介したんですけど、昭和のアナウンサーみたいに肩パッドを入れてレポートしました。これもディレクターのアイデアなんです。3年目は池からびしょ濡れで登場して何事もなかったかのようにマイクを持って、広島名物のお肉を紹介するというレポートをやりました。
――特に3年目のびしょ濡れ中継は田村さんの「ガッツ」が伝わってきます。
田村:11月で寒かったので、当初は池の中に台を置いて温水をかけてもらってびしょ濡れになるという感じでやる予定だったんです。しかし、温水をかけたのがCM前のタイミングで、CM明けまで3分くらい待つ間に乾いてきてしまって、「これじゃ、濡れているか画面を通じてわかりにくい」と思ったので自分の意志で池に飛び込みました。めっちゃ寒かったです(笑)。ダレなんサー大賞のために本気で頑張りましたね。
厳しく鍛えられ悔しくて涙を流す日々
するとディレクターさんから「お前はマスコットでいい。相手のよさを引き出すことは無理だろうから、俺が質問する。お前はリアクションだけしておけよ」と言われたんです。これは屈辱でしたね……。
――ディレクターさん、厳しいですね。
田村:でも、私には反骨精神があるので(笑)。言われたことが悔しかったので、ロケが上手な芸人さんの番組を見て、「こういう引き出しがあるんだ」と勉強しました。あと、食レポで使えそうな言葉を単語帳に書き出して、実際の食レポで使ってみたり、プライベートでも食レポの練習をしたりしましたね。
いまだに反省は尽きないのですが……ディレクターさんからは怒られなくなって、阿吽の呼吸でロケができるようになってきました。最初はロケがうまくできなくて怒られてきましたけど、「負けてたまるか!」という気持ちで立ち向かってきたからこそ、今の私があるのかなと思います。だから鍛えてくれて感謝しています。
目の当たりにした「天才・安住紳一郎さんの凄さ」
――田村さんは『THE TIME,』の広島地区の列島中継レポートを担当されていますが、列島中継で印象に残っているエピソードはありますか?田村:初期に呉市の実家近くのお店から中継をしたとき、サプライズで父親が登場して仰天したのを覚えています。スタッフさんたちも面白い中継にしようと、あの手この手で工夫を凝らすんですよね(笑)。
――月1回の出張中継の「出張!安住がいく」ですね!
田村:CBCの若狭敬一さんやMBSの福島暢啓さんがフィーチャーされていますけど、広島もよくしてもらっていて、「出張!安住がいく」も早い段階で安住さんに来ていただきました。安住さんは本当に凄い……天才なんですよ。
――どういった部分が天才なのでしょうか?
田村:中継に台本はあるんですけど、安住さんは台本通りにもやりません。私も台本を頭に入れて現場に行って、安住さんに身を委ねて中継をやったんですけど、全然違うことをやっているんです。でも、安住さんが考えた構成や流れのほうが台本よりも100倍、面白くなっている。安住さんの発想力、機転の利かせ方、アドリブ力に圧倒されて……。
――同業だからこそわかる凄さもありそうですね。
田村:実は今年の夏、「THE TIME,」のスタジオにもフル出演させていただきました。レギュラーの川田裕美さんがお休みで、まさかの代打でご指名いただいたんです。当日は早朝3時集合で打ち合わせに参加したのですが、やはり安住さんはすごかった……。用意された台本を細かいところまでチェックして、ニュースの項目を入れ替えたり、表現を変えたり、「けさの一曲」というコーナーで流す曲まで変更していました。
「与えられたものだけやっていてもよくはならない」と、常に考え続ける方なんです。放送終了後には、安住さんが秘密のノートを見せてくださったのですが、そこには他局も含めた番組研究がびっしり。88冊目らしいです。内容は絶対教えられませんが(笑)。安住さんには永遠に追いつけません。
田村:これはチームの皆さんに恵まれているんです。安住さんはご自身の力が凄いですけど、私はチームで挑んでいます。RCCチームはスタッフ全員が爪痕を残すために苦心してくれていて、私もその気持ちに応えようと全力で挑んでいます。RCCの中継はものすごく空気感がいいんですよ。ほぼ徹夜で体力的にはきつくても、現場が楽しいので、車の中でも寝ずにずっと喋っています(笑)。
――たしかにRCCの中継は工夫がこらされていますね。
田村:ありがとうございます。私、ディレクター、カメラマンも含めてチームのみんなが「爪痕を残す中継にしよう」という気概や意識がありますからね。私にはまだ自力がないと思っているので、『花よりガッツ』でも『THE TIME,』でもチーム力でいい作品を残したいんです。
今は目の前のことをすべて全力でやる
――今後、田村さんがやってみたいことはありますか?田村:これは難しいですね……。『花よりガッツ』も『THE TIME,』も楽しくて全部手放したくないものばかりで。今は夕方の番組『イマナマ!』で月曜・金曜MCをさせていただいていますが、いつか帯で番組を背負うメインMCになりたいです。RCCは男性がメインの番組が多いですが、女性がセンターになってもいい時代だと思うので、任せていただけるように力をつけます!
――素晴らしい目標ですね!
田村:ただ、これまでのアナウンサー人生を振り返ると、自分が思ってもいなかった仕事が舞い込んできたりしているので、「これをやらないといけない」と決めるんじゃなくて、思い描いているものよりも大きい仕事がくるように、今はとにかく目の前のことをすべて全力でやりますよ!その結果、私の運命はいい方向に転がっていくのではないかなって思っています。
<取材・文/ジャスト日本>
【ジャスト日本】
プロレスやエンタメを中心にさまざまなジャンルの記事を執筆。2019年からなんば紅鶴にて「プロレストーキング・ブルース」を開催するほか、ブログやnoteなどで情報発信を続ける。著書に『俺達が愛するプロレスラー劇場Vol.1』『俺達が愛するプロレスラー劇場Vol.2』『インディペンデント・ブルース』(Twitterアカウント:@jumpwith44)
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