2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。

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 TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。
アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
 第65回となる今回は、2025年末、アンヌさんの元に届いた「嬉しい報せ」についてつづります(以下、アンヌさんの寄稿です)。

北海道のある本屋さんの取り組み「一万円選書」

 あけましておめでとうございます。

 今年はどんな年になるでしょうね、まだまだお正月休みモードですが、今年こそは特別な年にしたい! と毎年この時期思うもの。

 実は私、今年に関してはちょっとスペシャルな気持ちでこのお休みをすごしています。というのも年末に「一万円選書」の対象者に今回選ばれたというご連絡が来て、とにかくびっくり、そしてワクワクしているから。

 ご存じの方もいらっしゃるでしょうか。

 NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』ほか、さまざまなメディアで話題となった、北海道のある町の小さな本屋さんによる選書サービス「一万円選書」。ご迷惑になりかねないのであえてここでは書店の名前は出しませんが、1年でわずか3日だけの募集で、常時3000人待ちともいわれている「一万円選書」なるものを書店のオーナー男性が自らやってくださるというサービスなのです。

「特製カルテ」なるものを記すと、それをもとに店主の方が「あなたのための特別な本」を一万円分選んで送って下さるのです。

 あまりにも人気で申し込むのにも条件があったり、申し込んでからも何か月、場合によっては何年も待つのが当たり前というこの一万円選書。

 書店の経営がなかなか厳しいと言われている現代日本において、独特の存在感をはなち、あらためて「紙の本」の魅力を世の中に発信している、とても意欲的で魅力的なまちの本屋さんの取り組みです。

クリスマスイブの朝に届いたメールに感動

40歳・元TBSアナが北海道の小さな書店からのメールに感動したワケ「添付ファイルを開いてみると…」
アンヌ遙香さん
 私は北海道新聞で特集を目にしてからずっと気になっており、Instagramをフォローしたうえで、申し込みのチャンスがあれば是非にと考えておりました。

 ちょうど昨年の今頃でしょうか、特別に申し込み枠をあけます、とのお知らせを目にし、瞬間的に滑り込むように申し込みをしていた私。


 そして私はすっかり申し込ませていただいてことも忘れかけていたのですが、昨年のクリスマスイブの朝、そちらの書店さんから「申し込みありがとうございます」とのメールとともに、選書にさいしての「カルテ」が送られてきたのでした。

 まさかのクリスマスプレゼントがいきなり手元にとどいたような気持ち。いずれ奇跡的に選書していただける日がきたらくらいに考えていましたが、一年待って実際にこのようなご連絡があったことに純粋に感動。

 ちょっと震える指先で、添付されていた「カルテ」をひらいてみると、驚きの内容が。一部のみご紹介しますと、

・これまで読まれた本で印象に残っている20冊を教えてください、ただ書くだけではなく、それが面白かったのか、普通だったのかどうかも教えてください。
・お仕事はなんですか
・何歳のときの自分が好きですか?
・これだけはしない、と決めていることはありますか?
・あなたにとって幸福とは何ですか? などなど。

 仕事柄人からインタビューされることも馴れているほうですし、どんな質問にも即答できる能力がある程度自分にはあると思って日々生きてきましたが、「20冊の本」をはじめ、答えるには少々時間を要したくなるような絶妙な質問が並んでいるのです。

 しかも、あなたがどう生きてきたのか、そしてこれからどんな未来がそこにあるのか、ぜひ細かく聞かせてほしいと書いてあるのです。

 締め切りは1月上旬となっており、あまり先延ばしもできない絶妙な状況。今の私はこのカルテを埋めるのに頭を悩ませていますが、しかしそれはとても幸せな悩み。

20冊を選ぶ作業は「自分のたどってきた道のり」を思い出すことだった

40歳・元TBSアナが北海道の小さな書店からのメールに感動したワケ「添付ファイルを開いてみると…」
アンヌ遙香さん
 これまで自分がどんな本を読んできたか、ということを振り返ったときに、中学・高校の図書館で借りたあの本も入れたほうがいいのかな、いや、小学生のときまでさかのぼったほうがいいのかな、と嬉しい悲鳴をあげたくなるような贅沢な悩みを最近抱えています。

 遠藤周作の『沈黙』は高校生のときに読んで多大な影響を受け、大学生になってから一人で長崎の遠藤周作の記念館に足を運んだほど。
小学校高学年のころには『赤毛のアン』シリーズを読破しましたが、あの世界観や家族観、恋愛観は今の私の人間性の根幹を形作っているなあ、と。

 大学生になってからは明治大正の文学にはまり、尾崎紅葉の『金色夜叉』が大好きすぎて一人で熱海まで行ったこともあったっけ。今ここに書いたエピソードは自分の中でほとんど忘れていたことばかり。本を思い出す事は自分のたどってきた道のりを思い出すこと。

 この一万円選書のおかげで今年のお正月は過去の自分と向き合い、そして未来の自分にも意識を向けるというとても貴重な時間をすごさせていただいています。

 ほんと、とんでもなくずっしりと重みのある、素敵すぎるクリスマスプレゼントを神様からいただいた気分。

 よろしかったらみなさんもこのお正月休み、「印象的な20冊」考えてみてください。結構20冊って難しいですよ。

 さあ、私はカルテの返送の締め切りが迫っていますので、急いで考えないと。みなさま今年もよろしくお願いいたします。

<文/アンヌ遙香>

【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。
北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne
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