先日、HKT48の元メンバーでタレント活動を行っている田中菜津美さんのTikTokがSNSで話題となりました。それは田中さんがファンと行くバスツアーの様子を映した動画で、そこにはシニア層の男性ばかりが集まっており、SNSでは「もはや介護」といったコメントが相次いでいたのです。


「もはや介護」SNS騒然のバスツアー

12月、田中さんが自身の開催したバスツアーをTikTokにアップしたところ、それが切り抜き動画としてX上で大拡散。動画には人生の深みを感じさせる銀髪の方々や、柔和な体格が目を引くベテラン世代の男性たちが楽しそうにバスツアーに参加している様子が映っており、田中さんのコメントがナレーションとして添えられていました。

動画内では田中さんがバスツアーに参加している男性たちを「おじ」と呼び、参加者たちが喫煙所に集まっていると「すぐヤニ摂取するおじ」と表現したり、CPAP(睡眠時無呼吸症候群の治療に使用する機器)を装着して眠る参加者に「CPAP持参しててしぬ」「これで明日も会えるね」と語るなどの様子が収められています。

さらには「おじとシール交換したよ」「よくわかってなくてしぬ」と若者や子どもの間でブームになっているシール交換を参加者と楽しんだことも報告。このほかにも、たくさん食事をする参加者やスキップを楽しむ参加者たちを田中さんが微笑ましく見守っていることが分かる動画内容でした。

動画をチェックすると、このバスツアーに参加している男性の多くが50代~70代くらいの年齢層に見えたため、SNSでは「もはや介護アイドル」「こんなに近い距離で楽しそうなバスツアーは初めて見た」といった肯定的なコメントが多数寄せられていました。

常識を覆す「超至近距離」の満足度

今回、田中さんのバスツアーがバズった理由としては、一般的にアイドルのバスツアーのイメージがあまり良くないことがあるかもしれません。ライブやイベントと異なり、限られた参加者だけが参加できる環境で好きなアイドルを目の前にするメリットがありますが、実際に参加するとアイドルと接する時間が期待より短かったり、開催内容や食事の質が低かったりして参加費に見合わないという声も聞かれます。

しかし田中さんのバスツアーは、動画を見る限りではバスや食事の際に田中さんが隣の席に座ったり、手作りのアルバムが配布されたり、夜ご飯の後に田中さんが部屋を訪問するなど、距離感が非常に近い様子でした。また飲み会では参加者たちが記憶をなくすほどお酒を飲んでいたことも明かされています。

参加者たちの笑顔や満足度の高さが滲み出ており、アイドルのバスツアーのイメージを大きく変えていることも今回のバズに繋がったのでしょう。

高齢男性を救う「社会貢献」の側面

さらに、参加しているおじファン同士で仲良くなり、ツアーを楽しむ様子も印象的でした。田中さんはバスツアーに限らず屋形船などさまざまなおじファン向けのオフラインイベントを多数開催しています。

「こういう形で孤独になりがちな高齢男性の楽しみや居場所を提供しているのは真面目に社会貢献になっていると思う」「アイドルファンの男性だと格好つけて横の繋がりを避ける人も多いけど、参加者たちが仲間意識を持って楽しんでるムードはすごい」といった好意的なコメントもありました。

HKT48の1期生としてデビューした田中さんは、HKT48在籍時には“MC番長”とも呼ばれ、トーク力やユニークなキャラクターで人気を馳せていました。
2020年にHKT48を卒業後は福岡県を拠点にローカルタレントとして活動を続けています。ファンとの近い距離感はHKT48の時代も現在も田中さんの特徴であり、今も多くのファンに愛され続ける理由と言えるでしょう。

安否確認まで。25歳の「生存戦略」

「もはや介護」元アイドルの“おじ特化”バスツアーが衝撃。月1...の画像はこちら >>
また田中さんはシニア層をターゲットに活動している点でも他のアイドル・タレントとの差別化が図れています。ファンクラブには「シニアプラン」なるものがあり、本人との雑談チャットや直筆の年賀状、月1回の生存確認電話、月2回の安否確認LINEなど充実した内容が含まれています。

恋愛対象ではなく孫のようなスタンスでシニア層のファンを見守る田中さんの活動は、高齢化社会における生存戦略として非常に賢明に見えます。

アイドルが引退後も現役時代から応援しているファン向けにライブやイベントを開催するケースは多々ありますが、田中さんのセカンドキャリアは推し変が早そうな若い男性ファンをターゲットにするのではなく、孫と祖父のような濃い絆を築きつつおじファンを大切にするという特殊なスタイルです。

田中さんはまだ25歳ですから、このシニア層に向けたアイドル引退後のセカンドキャリアは芸能活動を細く長く続けていく上で参考にする他のアイドルも多いのではないでしょうか。

アイドル戦国時代を経て、今は日本に多数のアイドルが存在しています。性アイドルの場合は年齢的にも現役アイドルとして歌って踊る期間は短いですから、引退後に女優やタレントなど路線変更するなど試行錯誤する人も珍しくありません。その中で田中さんのような福祉系アイドル路線が需要を高める可能性は十分にありそうです。

<文/エタノール純子>

【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。
エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中
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