お笑いやバラエティ、歌やグルメなどさまざまな特番が放送される年末年始。テレビを観なくなった人が増えていると言われていても、やっぱり家族や親せきが集まる年末年始にはテレビ番組も気合いが入ったものばかりです。
そうした中、今年の年末年始の特番は昭和や平成の頃に流行した人気番組が続々と復活。その理由を考察します。

『クイズ$ミリオネア』『ウンナンの気分は上々。』……

まずは12月24日現在で発表されている年末年始の特番の中で、昔の人気番組が復活している例はとても多いです。

年末年始に“平成番組”が復活する本当の理由。ダウンタウン不在...の画像はこちら >>
例えば1月1日放送の『クイズ$ミリオネア』(フジテレビ)をはじめ、1996年から2003年までレギュラー放送されていた『「ウンナンの気分は上々。」ご無沙汰しておりましたSP』(TBS)が1月3日に、2008年から2010年にレギュラー放送されていた『爆笑レッドカーペット2026新春SP』(フジテレビ)が1月2日、1995年から2000年に放送されて高視聴率を誇った『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー これができたら100万円!!』(テレビ朝日)が1月12日に放送されます。

さらに1月1日には、1981年から1996年まで放送された伝説的な番組が度重なる特番放送を経て、1月1日に6年ぶりの復活として『有吉弘行の超なるほど!ザ・ワールド』(フジテレビ)として放送されます。

有料配信サービスとの差別化がさらに進んだ2025年

こうしてみると、アラサーやアラフォー世代にとっては小中高生のときに夢中でテレビで見ていた頃の番組がずらりと並んでいることがわかります。各局ともに年末年始は話題性や視聴率を狙ってかなり力を入れる時期。この時期に新しい企画や番組を作るのではなく、テレビど真ん中世代に刺さる番組をリバイバルさせて“絶対に失敗しない”というリスクヘッジのための番組制作へ舵を切っていることは明白です。

年末年始に“平成番組”が復活する本当の理由。ダウンタウン不在、制作側が「ウンナン」を求める切実な事情とは
画像:『炎のチャレンジャー』番組HPより
『クイズ$ミリオネア』や『フレンドパーク』『炎のチャレンジャー』などはコンプライアンスに反するコンテンツが皆無ですから、こうした日本中が「面白い!」と思っていた番組のコンセプトや安心・安全なパッケージをそのまま使えるというのは制作側にとても助かるのでしょう。

もちろん年末年始で老若男女が集まるということで、広い世代が楽しめるコンテンツとして昔のヒット番組をリバイバルすることは容易に想像できます。一方で、テレビで刺激的で挑戦的な面白いコンテンツを作るにはリスクが大きすぎる時代になってきたことも、今回の年末年始特番のラインナップから読み取ることができます。

そうしたコンテンツは観たい人だけが観るYouTubeや配信サービスなどで楽しめば良いとされ、テレビはお茶の間に広く受け入れられる誰も傷つけない安心・安全な面白さを追求するという流れが2025年はより加速しました。
ダウンタウンの有料配信サービス「DOWNTOWN+」が2025年11月にスタートしたことも大きく影響しているのではないでしょうか。

ダウンタウン不在の年末年始にウッチャンナンチャンを求める制作側

また、年末年始の地上波お笑い特番といえば、これまではダウンタウンが揃って出演する番組が定番でした。しかし、今年の放送予定はゼロ。そこで白羽の矢が立つのは、彼らと同等の格と国民的人気を兼ね備えたコンビですが、その重責を担えるのは、もはやウッチャンナンチャンしかいないと言っても過言ではありません。

さらに、2025年4月に石橋貴明氏が食道がんと咽頭がんを公表し、現在は治療のため活動を休止中。とんねるずとしての稼働が困難な今、同時代を築き上げてきたウッチャンナンチャンに期待が寄せられるのは、業界の流れとして必然と言えるでしょう。

年末年始に“平成番組”が復活する本当の理由。ダウンタウン不在、制作側が「ウンナン」を求める切実な事情とは
画像:『ザ・イロモネア』番組HPより
今年の年末年始では、『「ウンナンの気分は上々。」ご無沙汰しておりましたSP』や『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー これができたら100万円!!』のリバイバルのほか、2025年2月に8年ぶりに復活を遂げた『ウンナン極限ネタバトル!ザ・イロモネア 笑わせたら100万円』(TBS)が12月29日に放送されます。

今年の年末特番では内村さんが17年ぶりにチャレンジャーとして出場することが発表され、ダウンタウン不在の年末年始においてウッチャンナンチャンの稼働を制作側が切に求めている様子がうかがえます。

年末年始特番に求められる旧ジャニーズ勢の安定したお茶の間人気

また、お茶の間人気に必要不可欠な年末年始特番における旧ジャニーズ勢の安定した人気とパワーも特筆すべき点です。『クイズ$ミリオネア』の司会は二宮和也さんが、『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー これができたら100万円!!』の司会は南原清隆さんとともに菊池風磨さんが務めます。

さらに、2014年のレギュラー放送終了後は年末に放送が恒例となった『堂本兄弟2025』(フジテレビ)が12月30日に放送。加えて、レギュラー放送されている『それSnow Manにやらせて下さい』内で復活していた人気企画『関口宏の東京フレンドパーク』が単独番組となった『それスノフレンドパーク』(TBS)が1月2日に放送されます。

年末年始に“平成番組”が復活する本当の理由。ダウンタウン不在、制作側が「ウンナン」を求める切実な事情とは
画像:TVerより
平成の人気番組をリバイバルするにあたって、人気も実力もある芸人ではなく、旧ジャニーズ勢の個人やグループに委ねる。
これは彼らのお茶の間人気はもちろんのこと、いかにバラエティ番組において立ち振る舞いやコンプライアンスを守りながら面白いコンテンツを作る上でスキルが高いかを示しているでしょう。

どんな芸能人とも上手に絡み、トークも上手で、バラエティを理解し、ビジュアルが良く常に笑顔を絶やさない点、放送前にスキャンダルが出て番組がお蔵入りするリスクが少ない点など、旧ジャニーズ勢の信頼感が高いことから年末年始特番での抜擢が増えているのも納得できます。

また、2025年はシール帳やたまごっちなど今まで以上に平成レトロブームが起き、平成のカルチャーや空気感を懐かしむ流行は今の若者世代にも広がっていきました。数年前であれば「平成の知らない番組をリバイバルする」となるとターゲット層が狭まったかもしれませんが、今年は例年以上に若者や中高生にも受け入れられると制作側も判断した感もあるのでしょう。

こうしたさまざまな要因から、2025年から2026年にかけての年末年始特番には特徴的な傾向が見られることがよくわかります。

<文/エタノール純子>

【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中
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