2025年も多くのドラマが放送されました。年間100本以上のドラマをチェックするアラフォー女性の筆者。
今回“地上波”で放送された作品のなかから勝手に選んだ「今年よかったドラマ10選」から、10~6位をご紹介します。

10位:ひらやすみ

2025年「本当に良かったドラマ」ベスト10。人気アイドルが...の画像はこちら >>
NHKで放送される夜ドラで『バニラな毎日』や『いつか、無重力の宙で』など、多くの良作が生まれた2025年。なかでも『ひらやすみ』は、いつまでも観ていたくなるような、押しつけがましくない優しさが沁みる作品でした。

定職も恋人もなく、将来の不安すら抱かない自由人・ヒロト(岡山天音)が、近所のおばあちゃんから阿佐ヶ谷の平屋を譲り受け、山形から上京してきた18歳のいとこ・なつみ(森七菜)と暮らし始める物語です。

唯一無二の空気感を醸す岡山天音

ヒロトの周囲には、それぞれに生きづらさを抱えた人たちが集まり、親友ヒデキ(吉村界人)や、偶然出会う不動産会社勤務のよもぎ(吉岡里帆)との会話が、疲れた心を包み込んでくれます。飄々として見えて、物語が進むほどに深みが増すヒロトを岡山天音が唯一無二の空気感で演じ、作品の核となっていました。

一方、森七菜のなっちゃんもお見事!青年期ならではの不機嫌さや焦り、そして自意識の持て余し方を解像度高く表現しました。ふたりの対比がまた良き!強く続編を期待したい作品です。

9位:東京サラダボウル—国際捜査事件簿—

2025年「本当に良かったドラマ」ベスト10。人気アイドルが見せた“禁断の涙”に、実力派俳優の“あまりに無様な姿”が胸を打つ<前編>
画像:『東京サラダボウル』HPより
同じくNHK放送でよかったのが、ミドリ髪の警察官・鴻田麻里(奈緒)と中国語通訳人・有木野了(松田龍平)が、在日外国人居住者の事件に向き合う社会派エンタメ『東京サラダボウル—国際捜査事件簿—』(NHK総合ほか)。

ぐいぐい人に関わっていく鴻田の“光”と、距離を取ろうとする有木野の“影”が少しずつ混ざっていく。その過程とチャーミングなふたりのキャラクターに毎週引き込まれました。

過去と現在がつながるたび胸が締め付けられる

後半の鍵を握った阿川博也(三上博史)の投入も圧巻!第6話ラストで姿を現し、第7話から鴻田の相棒として本格登場したのですが、飄々として掴めない佇まいの奥に、過去の“誤訳”が生んだ傷と葛藤がじわじわ滲んでいきます。

最終盤で弱さごと曝け出す瞬間は、年齢を重ねた三上博史だからこその説得力。さらに、有木野の最愛の人・織田覚(中村蒼)や、暗部とつながる“ボランティア”の存在が物語を締め上げ、過去と現在がつながるたび胸が締め付けられる作品でした。

8位:愛の、がっこう。

2025年「本当に良かったドラマ」ベスト10。人気アイドルが見せた“禁断の涙”に、実力派俳優の“あまりに無様な姿”が胸を打つ<前編>
画像:TVerより
『愛の、がっこう。
』(フジテレビ系)は、ひと夏の恋を“甘さ”だけで終わらせず、胸の奥に残る切なさまで丁寧にすくい上げたラブストーリーでした。

お堅い女子高の教師・小川愛実(木村文乃)が、読み書きが苦手なホスト・カヲル(ラウール)に字を教えることから始まる関係は、ただの「教える/教わる」を超えて、ふたりの孤独や生きづらさを照らしていくのです。

怒涛の展開と純度の高い恋物語

育ってきた環境も生きる世界も違いすぎるのに、ふと相手の孤独に触れた瞬間、ふたりの距離がすっと縮まる。その惹かれ合い方が尊く、想い合うほどすれ違っていく展開に、毎週ドキドキさせられました。特に第6話のデートシーンは、最終回の余韻にも直結する名場面で、切なさが限界まで積み上がって涙腺を直撃。

ラウールがホストとしてしか生きてこられなかった葛藤や苦悩を、外見の華やかさだけでなく、切ないほど繊細に、美しく体現していたことも印象的です。怒涛の展開と純度の高い恋物語に唸らされました。

7位:じゃあ、あんたが作ってみろよ

2025年「本当に良かったドラマ」ベスト10。人気アイドルが見せた“禁断の涙”に、実力派俳優の“あまりに無様な姿”が胸を打つ<前編>
画像:TVerより
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)はバズり方だけでなく、観終わった後も心に残る1本でした。

自分らしさを見失いかけた鮎美(夏帆)と、完璧主義で超亭主関白思考の勝男(竹内涼真)。ふたりの別れを起点に、勝男は料理を通して自分の在り方を振り返り、鮎美も新たな出会いのなかで「私はどう生きたいのか」を探していきます。

ふたりの“愛らしさ”が作品を支える

価値観を“アップデートしてめでたし”ではなく、変わろうとしてもぶつかるし、すれ違うし、全部がうまくいくわけじゃない。それでも相手を理解しようとして、前に進もうとする。そんなふたりの姿が応援したくなるほどチャーミングに描かれており、コミカルな展開ながら心に響きました。

何より完璧さを体現しつつ、傲慢さや無知、不甲斐なさまでさらけ出してなお「憎めない人間」にしなければならない勝男という難役を成立させた竹内涼真があっぱれ!夏帆の繊細な演技と並んで、ふたりの“愛らしさ”が最後まで作品を支えていました。


6位:波うららかに、めおと日和

2025年「本当に良かったドラマ」ベスト10。人気アイドルが見せた“禁断の涙”に、実力派俳優の“あまりに無様な姿”が胸を打つ<前編>
画像:『波うららかにめおと日和』HPより
『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)も、“愛らしい”ふたりが印象に残っています。

昭和初期、交際0日婚から始まる新婚夫婦の甘酸っぱい心の交流を、焦らず丁寧に描いていく。おっとり可愛らしいなつ美(芳根京子)と、帝国海軍中尉で真面目だけど不器用な瀧昌(本田響矢)の夫婦がとにかく尊い!ずっと見ていたくなるふたりでした。

この作品の良さは「心が近づく瞬間」を何度も積み重ねて描いているところ。うまく伝えられない不安や、相手を大切に思う気持ちを、言葉にしたり飲み込んだりしながら、それでも少しずつ夫婦になっていく。その過程が優しくて、見ているこちらまで幸せになりました。

静かに胸が満たされるラブストーリー

正反対の深見(小関裕太)と芙美子(山本舞香)のカップルもいいスパイス!牽制し合うところから恋に落ちていく王道のときめきがあり、二組を見比べながら“恋と夫婦”の形を味わえるのも楽しい。

コスパやタイパが優先されがちな時代だからこそ、誰かと向き合って、言葉を重ねて、絆を紡ぐことの尊さが沁みる――そんな、静かに胸が満たされるラブストーリーでした。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
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