大学時代より舞台で活躍し、2000年ごろより映像作品にも進出。2013年放送のNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で、一気に実力派の人気俳優として認知が広まったキムラ緑子さん(64歳)。
2026年は日曜劇場『VIVANT』の続編放送も控えていますが、新年の幕開けは主演を務める舞台作品『わが歌ブギウギ-笠置シヅ子物語-』です。

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「うさうさしている人たちに」作品を届けたいと言うキムラさんに、いまキムラさん自身が直面している介護の、制度への憤りを少しだけ吐き出してもらいました。

黒柳徹子さん&加藤登紀子さんからご本人に「そっくり!」と太鼓判

――2026年は舞台でスタートですね。笠置シヅ子さんというと、現役を知らない人が多いですが、朝ドラ『ブギウギ』の放送でその存在が新たに広まりました。

キムラ緑子さん(以下、キムラ):そうなんです。私の中でも、最初は台本を読んでいると趣里さんが浮かんでしまったりして、まずはそこを取り払うのが大変でした(笑)。

――朝ドラ放送をきっかけに、笠置さんご本人の映像を番組やYouTubeなどで初めて見た人も多いです。ものすごくパワフルですね。

キムラ:すごいステージングで楽しくなるでしょ。ただパフォーマンスしただけではダメで、全身を使ってね。顔も。

――YouTubeと言えば、加藤登紀子さんのチャンネル『登紀子の「土の日」ライブ』のキムラさん出演の回を拝見しました。笠置さんにお会いしたことのある加藤さんから、キムラさんはご本人に「そっくりだ!」と太鼓判を押されていました。


キムラ:大好きな番組で、本当に緊張しました。加藤さんにお会いしたあとに、黒柳徹子さんにもお会いしたんです(12月10日放送の『徹子の部屋』に出演)。徹子さんも笠置さんにお会いしてるんです。徹子さんはまだ売れてないころで、笠置さんが歌ってらっしゃるところを通るだけの役だったんだけれど、ミスをいっぱいしてしまったそうで。目立っちゃって、やり直しさせられていたら、笠置さんが近づいてきたそうなんです。怒られるのかなと思ったらおおらかに「大変でんな」と言ってくれたと。

徹子さんも、私はとにかく見た目が似てるとおっしゃってくれましたけど、別の人間ですしね。絶対に別物にはなってしまいますが、頑張って、客席のみなさんが見ているうちに「まあ、いいか」となってくれれば、それで十分だと思っています。

淡路島にいる母の介護に直面して思うこと

キムラ緑子「介護制度は優しくない」 認知症の母、片道6時間の遠距離介護。高額な費用と自費リハビリの限界を告白
0106_キムラ緑子さん②
――『徹子の部屋』でもお話されていましたし、キムラさんご自身のInstagramでも書かれていますが、現在、介護に直面されているとのこと。読者にも、両親を介護していたり、これからすることになると考えていて、介護に関心のある人が多いです。

キムラ:私の母は去年、施設に入ったんですが、義理の親や妹も含めて、みんな大変なんです。なにが大変って、世の中のシステムがうまくいってないから。優しくないなと感じます。
現場の人たちは本当によくお仕事してくださってるんだけれど、とにかく制度がね。

――実際に直面している家族として、どんなことを感じていますか。

キムラ:母は認知症を患っているのですが、リハビリすると少しよくなるんです。全然歩けないんだけど、少し力が入ったり、やる気になる。でもそのリハビリも、私が帰ったときにしかできないんです。

――というと。

キムラ:今いるところが、介護を呼べない施設で。そういうところは多いんですよ。だから私が自分で雇わなきゃいけないんだけど、施設ではできないから、淡路の実家に自費で来てもらうことになる。週1回でも2回でもやりたいんだけど、実家にひとりでいる父ももうヨタヨタですから、私が帰ったときしかできない。でも行くだけで片道6時間かかりますからね。どうしても月に1回とか2回になってしまう。


――どうしてもそうなりますね。

キムラ:さらに送迎の人はまた別に見つけて雇わなきゃいけません。お金はかかるけれど、かかってもいいからと見つけているんだけど、そこもいろいろ条件があるんです。それに人によっては、そこまでお金もかけられないでしょ。一番使いたい人が使えない制度って、どうなんだろうと思わざるをえません。

人はあるとき転がるように歳を取っていく

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0106_キムラ緑子さん③
――現実的に、親と離れて暮らしている人が多いです。私もそうです。実家に見守りカメラを付けたいのですが、Wi-Fi環境がなくて。

キムラ:義理の母親には付けました。周囲に聞いてみると「兄弟がみてくれている」という人が多いですけれど、最終的には施設に入れることになっていきますからね。人ってあるとき転がるように歳を取っていきますから。私も気づくのが遅かった。
うちも老老介護で父がみてくれていて、「最後まで自分で面倒をみる」と言っていたんです。だけど夫婦って、なかなかお互いの変化に気づかないんですよ。私が気づいたときには、状態が悪くなっていて。施設にと決断しました。

――老老介護も問題ですし、子どもが家でみようとしても、仕事を辞めなければいけなくなってきます。

キムラ:そうです。家にいてほしいと思うならね。でも本当に大変になっていきますから。お互いに自滅しないためにも施設は考えていくことになります。ただ、施設もなかなか入れないし、とにかく高いです。たとえばうちの父の介護1くらいじゃ本当に高い。介護施設に払って、おむつ代にはじまって、介護製品にしても、とにかくなんでもかかる。
そして現場には介護の人たちが足りていない。

――やはりそこを手厚くしていかないと回らないですね。

キムラ:そうですよ!

キムラ緑子「介護制度は優しくない」 認知症の母、片道6時間の遠距離介護。高額な費用と自費リハビリの限界を告白
取材会。左より、齋藤雅文(補綴・演出)、松村雄基、キムラ緑子、林翔太
――大変な世の中ですが、そんな日々でも新年から笠置シヅ子さんのパワーを浴びることで、少しでも元気になってもらえればというお気持ちでしょうか。

キムラ:本当にね。歌って踊っての舞台ですけど、明るいだけじゃないお話なんです。私の感覚では、今の時代にちょっとかぶる気もしています。うさうさしている人がいっぱいいるというか。そこを元気になりたいと思う人に来てもらえたら、すごく嬉しいんですけど、本当に大変な人は、舞台を観に行くこともできないんですよね。だからなおのこと、足を運んでくださる方にだけでも、「あー、すっきりした!」と思ってもらえる芝居にしたいと思っています。

ご実家へもね、みなさん行ってあげてくださいね。いま元気であっても、ご両親が元気にしゃべれるときは、そのときしかないですよ。

<取材・文・撮影/望月ふみ>

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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