新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(45歳)。

 40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。

 第30回となる今回は、大木さんの2025年の振り返りと、2026年の目標について綴っています(以下、大木さんの寄稿)。

2025年を振り返って

ハワイ移住した元テレ朝アナが明かす“ご近所さん”事情「隣に住...の画像はこちら >>
 さあ、2026年が始まりました。みなさん、どんなお正月を過ごしたでしょうか?

 新しい年を迎えると、「今年はどんな一年にしよう?」と考えたり、「去年の私はどうだったかな」と振り返ったりして、なんとなく気持ちが前のめりになりますよね。

 私も例に漏れず、2025年のちょうど1年前の投稿をさかのぼってみました。そこには、「余白のある生き方をする」と、誓っていました。

 でも実際のところ、2025年は余白どころか、常にキャパオーバー気味。ハワイ移住という人生の大きな決断もあり、振り返ればとても濃く、間違いなく転機となる一年でした。

 ただ、「余白のある一年だった」とは言えません。そんな一年を少し振り返ってみたいと思います。

私が余白のある生活を必要としたわけ

 そもそも、なぜ1年前の私は「余白のある生き方をする」と誓ったか。

 スタートアップ企業での仕事は、スピード感があり、やりがいも大きい一方で、一人ひとりの持ち場が大きく、得意なことだけやっていればいいわけではありません。
そんな環境。実際、メンバーみんなが少しずつ無理をしながら走り続けている、そんな空気があります。

 だからこそ、自分に余白がない状態では、困っている仲間を助けることもできないし、冷静に判断すべき場面で正しい決断ができない。目の前のタスクに追われるあまり、チャンスを取りこぼしてしまっているかもしれない。そんな感覚が、仕事の中でずっとありました。

 もうひとつ、大きかったのが子どもたちとの関係です。

 子どもたちが10代になり、心もどんどん複雑になってきました。個性が豊かになり、面白い時期でもあるんですが、「今、何を感じているんだろう」と丁寧に耳を傾けたい。

 でも現実には、余裕のなさから、その声をきちんと受け止められていないような気がする自分がいました。

 その結果、見過ごしていた小さな違和感が、あとから問題として大きく膨らんでしまうこともありました。

 仕事でも、家庭でも、「余白がないこと」が課題になっていた。だからこそ私は、2025年の目標として、「余白のある生き方」を掲げたのです。


ハワイのお隣さんが体現する、理想的な余白のある生活

ハワイ移住した元テレ朝アナが明かす“ご近所さん”事情「隣に住む70代のアメリカ人ご夫婦は…」
大木優紀さん
 そんななか、2025年10月にハワイへ引っ越してきました。ハワイは、日本からだけでなくアメリカ本土からの移住者も多く、「いつかは住んでみたい」と語られることの多い、ある種の“憧れブランド”のような土地です。

 正直に言えば、最初は戸惑いもありました。物価は高いし、四季のない環境も「本当にここで暮らせるのかな?」と疑問を感じていました。

 でも、この気候と、甘い香りさえ漂ってくるような空気のなかで過ごすうちに、「生きる環境」としては、これ以上ないほど心地いい場所だと実感するようになりました。

 そして、何よりも嬉しいのが、ご近所との関係のよさです。

 私たちは、タウンハウスという日本でいう長屋のような住まいに暮らしています。両隣ともとても良い方々なのですが、特に右隣に住む70代のアメリカ人ご夫婦は、まさに私が思い描いていた「余白のある生き方」を体現している存在でした。

 日中、奥さまは水辺に座ってスケッチをしたり、クリスマスシーズンには家のデコレーションを楽しんだり。

 私たちが引っ越してきた日には、小さな鉢に花をいけて「ウェルカムフラワーだから」と手渡してくれました。週末やサンクスギビングには、お孫さんも集まって、家族みんなで賑やかに食卓を囲んでいます。

 おふたりは、本当によく水辺に腰を下ろし、ゆっくりお茶を飲んでいます。その姿を見て、「私も、こんなふうに、余白のある生き方をしたいな」ととても羨ましく思いました。


 ですが同時に、今の私がそれをしようと思っても、やっぱりできないなと。それで、今の私が必要としている余白のある生き方とはなんだろうと考えてみました。

「幸せ」の答えが、ひとつじゃなくなった40代

 70代の夫婦の余白のある生き方は、ある意味完成された人生の一枚絵のように見えます。もちろん、外から眺めているだけなので、その内側にどんな思いや葛藤があるのかまではわかりません。

 一方で40代の私は、子育ても仕事も同時進行の、まさに編集中の毎日。完成された絵画というよりは、今作っている最中の動画のような日々を送っています。だからこそ「なぜ隣のご夫婦のように静かに微笑んでいられないのか」とふと、疑問をもちました。

 11月に日本に一時帰国した際、ハワイに引っ越して1か月ほどだったこともあり、会う人会う人に「ハワイはどう?」と聞かれました。でも、その質問に対して、私はうまく答えられず、言葉を詰まらせてしまったんです。

 仕事は充実しているし、気候もいいし、日々は楽しい。もし私ひとりだけだったら、そう答えていたと思います。

 でも、子どもたちの学校生活はどうなのか? 夫の今後のキャリアを含めた幸せは? 家計はどうなのか? 日本に残した親の気持ちは? そんなことを総合的に考えたとき、即答はできなかったのです。

 そのとき、ふと思いました。


 自分自身の幸せの尺度が、単純な合否判定ではなく、いくつかの指標が絡み合い複合的になっているのだと。

「順調です」と答えられても、「幸せ?」や「どう?」という抽象的な質問に答えるのがとても難しくなっている。もちろん、幸せなんです。深く悩んでいるわけでもないんですが、幸せを測るものさしが、ひとつではなくなっている。

 だからこそ、隣の70代の夫婦の幸せというものが、最終的に「個人の充足」へと回帰しているように私の目にはうつっていて、とてもシンプルで純度が高いような気がしたんです。

「余白=隙間時間」ではなく、脳内のスペース

ハワイ移住した元テレ朝アナが明かす“ご近所さん”事情「隣に住む70代のアメリカ人ご夫婦は…」
大木優紀さん
 というように、40代の幸せって変数が多くて、複雑。

 仕事、家族、健康、将来への不安……。いくつものプロジェクトが同時進行しているなかで生きている私が、70代の方の持つ静かな余白や何もしない時間を真似しても、うまくいかない。

 今進行しているプロジェクトは止められないし、休まらない。むしろ静かにしていると、私は不安になってしまうかもしれないという気さえします。

 もちろん、私はまだ70代の世界を見ていないから、そこの精神世界を想像することしかできません。でもこの一年を通してはっきりしたのは、「人生のフェーズが違う」ということ。

 そして、「余白を楽しむ」というのが「時間的な余白がほしい」のではない、とわかりました。


 私が本当は欲しかったのは、何もない空白の時間ではなく、頭の中に散らばっていたたくさんの変数を、一度きちんと整理整頓すること。そのプロセスこそを、私は「余白」と呼びたかったのではないかと思うのです。

 2025年を通して得た気づきは、「余白=隙間時間ではない」ということでした。

 そういう意味で、2025年後半にはじめたポッドキャストで話すことやコラムを書くことはとてもいい役割を果たしてくれました。思考を言語化し、アウトプットすることで、頭のなかが少しずつ整理されていったのです。

 時間的な余白はありません。でも、脳内にスペースが生まれていると感じます。

 余白とは、もしかしたら「脳のメモリーを解放すること」なのかもしれません。広がってしまったメモリーを整理して、外に出していくこと。それこそが40代が求めていた「戦略的な余白」だったのだと思います。

2026年の目標は「人生をコントロール化におくこと」

 40代の幸せは、とても複雑で、正直ちょっと重たい。でも私は、この混沌とした40代の幸せを、「人生というプロジェクト」として、ちゃんと経営していきたいと思っています。


 もし今、「余裕がないな」と感じているなら、意外かもしれませんが、アウトプットの時間をあえてつくってみるのもひとつの手です。書くこと、話すこと。頭の中にあるものを外に出すだけで、思考は少しずつ整っていきます。

 2026年は、2025年の経験を土台に、感情や流れに任せるのではなく、戦略的な思考のもとで、自分の人生をコントロール下に置いていきたい。

 思考が散らかっていると、自分で人生をコントロールできなくなっているような気がするんですよね。

 2026年のテーマは、「自分の人生をコントロール下に置くこと」。ちゃんと状況を把握して、手綱を握っている感覚を大切にしたいと思っています。

<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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