昨今はYouTuberが“なりたい職業”として人気を博していますが、大昔から変わらぬ人気を誇っているのが電車の運転士。車掌や駅員を含めた、いわゆる“鉄道マン”も一定の人気を保っています。


 一方、「鉄道業界の仕事はハード」という噂を聞くのも事実。実際はどうなのでしょうか?

 現役の鉄道乗務員(以前は運転士)として鉄道会社に勤務し、Xで仕事に関する心境や情報を発信しているやまとじさん(@yamatozi201)から詳しい話を聞いてみました!

電車の運転士は“視力”が大事

――たくさんの乗客を乗せて走る電車運転士は、本当に繊細な仕事だと思います。体調管理も大変なのでは?

やまとじ:そうですね。まず、視力や聴力が一定以上ないと運転できません。特に、視力は厳しいですね。

――今はパソコンやスマホの普及で、視力が落ちやすい時代です。その辺は気をつけて生活しているのですか?

やまとじ:いや、そこまで気をつけて生活はしてないのですが、視力が足りなさそうだったらすぐにメガネを新調しに行きます。

線路内で草刈り、飛び降り…怖い目にあうことも

――運転士で大変なことといえば、2024年4月にやまとじさんが投稿されたポストも興味深かったです。そのポストでは、「運転士してた頃は何度も怖い目にあった。ブレーキ間に合って手前で止まれたり、相手が直前で避けたりして幸い一度も当たることはなかったけど」という文章とともに、やまとじさんが描いたイラストがアップされていました。

「ホームから飛び降り」「線路内で草刈り」…現役乗務員が明かす...の画像はこちら >>
「線路飛び降り」「線路内で草刈り」「踏切直前横断」「踏切待ち(踏切内)」「線路横断(勝手踏切)」などのイラストが描かれていましたが、こういった場面に出くわすことはめずらしくないのですか?

やまとじ:結構ありますね。

――えーっ、あるんですか!

やまとじ:僕が運転していた路線は地方にあったので、線路周りに柵などがなく、周辺のおじいちゃんおばあちゃんが畑から畑へ行くために堂々と線路を渡ることがよくありましたね。昔から住んでいる人たちなので、それが普通になっているのだと思います。

――こうした場面に注意しながら運転しなければならないので、やはり体調管理に気をつける必要がありますね。


やまとじ:体調管理と、あとは睡魔ですよね。眠気がきたら本当に危なくなるので。

――運転士はシフトがハードという噂を聞いたことがあります。睡眠時間はちゃんと取れているのでしょうか?

やまとじ:朝が早かったり夜が遅かったりはありますが、自分の仕事だけしていたらそこそこはちゃんと寝られると思います。

ただ、誰かが有給で休むとほかの誰かが代わりに運転しなければならず、睡眠が十分ではない状態で出番がくる場合もあります。また、最近は少子化などの影響で人手が不足していますからね……。

――人間関係についてはいかがですか?

やまとじ:鉄道会社に勤めていると、周りの同僚と集団生活みたいな感じになるのでいろいろあります。同じ時間帯、それこそ仕事中以外もずっと一緒の空間にいて、休憩所を散らかす人やイライラして物に当たったりする人など、いろんなタイプの人がいます。

――ずっと一緒なのに、そんな人が同じ空間にいたら嫌ですね……。

やまとじ:あと、運転士と車掌は基本的に1日一緒に行動するんですね。ペアを組む相手との相性が良くなかったら、ちょっと厳しいですね。

――それは、自分では調整できないんですか?

やまとじ:はい。
どうしようもないときはありますね。

女性の車掌の動画を撮ってネットにあげる撮り鉄も

――ほかに大変なことはありますか?

やまとじ:いろいろなお客様がいるので、当たりの強い方であったり、酔っぱらっているお客様だったり、そういった方々が車内でなにかトラブルを起こしたら全部処理しないといけないのも大変です。

――わかります。困った人がいると、我々が頼るのは乗務員さんや駅員さんです。要するに、丸投げで対処をお願いしている。以前、女性の駅員さんが泣きながらトラブルに対応していたのを見たことがあります。

やまとじ:そういうケースもありますね。以前、私の同僚に女性の車掌がいたのですが、その人は男性の撮り鉄さんにまとわりつかれ、動画をこっそり撮られてYouTubeに上げられていました。悩んだ末に、1年後に退職してしまったのですが……。

――それは、神経が参ってしまいますね……。撮り鉄にはマナーを守る人もいれば、トラブルを起こす人もいます。やまとじさんは撮り鉄さんにネガティブな気持ちを抱いていますか?

やまとじ:僕はネガティブな気持ちはないのですが、運転台のうしろに張り付いて、僕の顔がはっきり写るレベルの画像をネットにあげる撮り鉄さんも中にはいました。

――それは困ってしまいますね……。


やまとじ:そうですね。でも、ちょっとイライラしていたらもろにバレてしまいますし、「万が一、なにかミスを犯したらすぐに広まってしまう」といらぬ緊張をしてしまうこともあります。

どんな人が鉄道乗務員に向いているのか

「ホームから飛び降り」「線路内で草刈り」…現役乗務員が明かす“怖い体験”。撮り鉄トラブルも
※イメージです
――「こういう人は鉄道乗務員に向いている」「こんな人は長続きする」というタイプは?

やまとじ:真面目なのはいいのですが、真面目すぎる人ほどストレスを抱え込んだり、トラブルに落ち込んでしまいがちです。なので、いい意味で流せるタイプの人が長続きしやすいと思います。事実、自分はうつ病になってしまった人を何人か見てきました。運転士や乗務員、駅員はストレスのかかる大変な仕事ではあります。

ただ、めちゃめちゃしんどくはあるのですが、やりがいはあります。一日に何百、何千人のお客さんを安全に運び、たまに「ありがとう」と言ってもらえる。「誰かの役に立っているのだな」という気持ちになりますね。

――慣れれば、楽しくやりがいのある仕事ということですね。

やまとじ:はい。特に、僕は小さい頃の夢が電車の運転士でしたし、電車が好きでした。
そんな子ども頃の夢を叶えているという充実感はあります。

――やまとじさんのような「好き」の気持ちを持つ人には、ぜひチャレンジしてほしい?

やまとじ:はい。試験などが難しかったりハードルは高いですが、ぜひ目指してほしいです。

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 鉄道の写真を撮る撮り鉄だけでなく、運転士や車掌の写真をネットにアップする撮り鉄がいるとは知りませんでした。鉄道マンも一人の人間なので、さぞかし怖かったでしょうね……。

 さらには、体調管理や人間関係についても鉄道会社ならではの気苦労もあるようです。「ハードな仕事だ」という噂は、決して間違ってはいなかったということ。

 その一方で、やりがいや喜びが感じられる仕事であるのもまた事実。良い面と大変な面の両方を知ったうえで、「やっぱり鉄道会社に勤めたい」と思う人はチャレンジしてみてもいいかもしれません。

<取材・文/寺西ジャジューカ>
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