「毒舌が下手でただの悪口」――相次ぐ炎上の背景
1月10日放送の『逃走中~トリプルミッションインポッシブル~』(フジテレビ系)で、アイドルグループ「KEY TO LIT(キテレツ)」の猪狩蒼弥について、「猪狩くんは全部の仕事で爪痕を残そうとしてるところが、ちょっと、あのー、キツイかな」とイジったところ、「猪狩を一方的に傷つけてる」や、「やす子が失礼なだけ」などのコメントが殺到したのです。以前から、やす子と猪狩には共演経験があるという関係があっての発言でしたが、批判の声は高まる一方。
この騒動が収束しないまま、1月12日放送の『欽ちゃん&香取慎吾の第101回全日本仮装大賞』(日本テレビ系)で、再び発言がクローズアップされてしまいました。出場者の一人の仮装について、「今日は楽しみで来たんですけど、今日、とんでもなくつまらなかったです、はいー」と評したところ、これまたネットで大炎上。
「正直に言うことが芸風なんだっけ? モヤッた」とか、「毒舌が下手でただの悪口言う人になってる」と、やす子の“いい人”からのキャラ変ぶりに疑問を抱く視聴者が続出したのです。
織り込み済みの「悪意」? 舵を切った毒舌芸への試行
しかしながら、視聴者はやす子の思うようには受け取りませんでした。彼らはやす子の言葉と人格を一致させて、テレビ的なパフォーマンスではなく、自然な悪意だと考えたから批判しているのです。
では、なぜやす子の思惑と視聴者の感性は、ここまでズレてしまったのでしょうか?
“国民的善人”という檻。過去の事件が残した副作用
それを解く鍵は、例のフワちゃん事件にあります。あの一件を経て、フワちゃんが活動を休止する一方で、やす子は期せずして“いい人”という立ち位置に固定化されることになりました。一人の人間として考えた場合には、やす子の“勝利”でした。しかし、芸人として考えたらどうでしょうか。“いい人”のまま、テレビの求める笑いを生み続けることは、相当に苦しい。この一連の経緯から、猪狩イジりと仮装大賞でのぶっちゃけを振り返ると、それが“善人キャラの否定”であることが読み取れます。
いい人のまま芸人としてやっていくことは不可能なのだから、無理にでもシフトチェンジをしなければならない。その手っ取り早い方法の一つが、わかりやすい毒舌だったのではないでしょうか。
芸人としての「脱皮」と、世間のイメージに生じた温度差
だから、今回の炎上はやす子も視聴者も悪くありません。タレントと視聴者の間で、不幸なミスマッチが起きてしまっただけなのです。
では、今後やす子の毒舌芸は受け入れられるのでしょうか。ここまで反感を買ってしまった新展開に勝算はあるのでしょうか。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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