木村さんは菜帆(松本)が勤める会社のカリスマ経営者役で、ライバル会社の社員である晴流(伊野尾)と菜帆との恋に立ちはだかる、強烈なキャラクターを熱演しています。
趣味はキックボクシングで、日々戦闘能力を強化している杏野志麻(あんのしま)役について、「わたしと似ているところがまったくなかったです(笑)」と語る木村さん。しかし、戦う女性という意味では、共感とある種の学びもあったと言います。作品の話や近況について聞きました。
“弱さを持ちつつ、強く生きている女性”をどう表現するか
木村多江(以下、木村):若いふたりの王道でかわいらしい“ズレきゅん”ラブストーリーがまずあって、そこへわたしたち大人がスパイスを入れ、少しリズムを付けていくドラマという印象を受けました。
ただ、大人が楽しめる部分もあったほうがいいのかなとも思いまして。わたしが演じる志麻は、当初は普通の社長というキャラクターだったのですが、物語にスパイスを入れる存在であったほうがいいと思ったので、たとえば「社長室で運動をしていたりするのはどうだろう?」とご提案してみたところ、ゴルフやボクシング、バッティングを普段からしているという、とてもアクティブな女性になりました(笑)。
――志麻との離婚原因を作った元夫・恭平(高橋光臣)は、ライバル会社の社長でもあるので志麻と激しく対立しますが、彼女の人物像についてはどのように理解しましたか?
木村:彼女は社長として成功していますし、自分の生きる道が明確にあり、それに従ってほしいという強い意志で会社を経営しているんです。時にワンマンな社長でもあるわけですが、その強さが前面に出ている役である一方で、よくよく見ていくと裏側にある弱さも見えてくる。弱さを持ちつつ、強く生きている女性をどう表現するか考えて演じていました。
お芝居の仕事は「自分との戦い」
木村:わたしと似ているところがまったくなかったのですが、戦う女性という意味では、わたしも戦って仕事をしている部分があるから一緒なので、見え方について考えました。
彼女のように強さをそのまま強さとして出してしまうと、まわりがそれに従わざるを得なくなる流れになってしまうので、強さは心の中で持っていて前面に出すものではないなということを、彼女を見て反対に学んだことではあります。強いからこそ優しくしなければならないですよね。そういうことって人って大事だなと思って。
――お芝居のお仕事は、戦いという受け止めなんですね。
木村:そうですね(笑)。でも誰かと戦っているのではなくて、自分と戦っている感じですかね。それをとても感じます。どのお仕事も同じかどうかはわからないですが、お芝居に関しては自分の弱さに負けてしまったりすると、なんでちゃんと自分自身に勝てなかったのだろうと思ったりすることがあるんです。
――それは妥協してしまうような感覚でしょうか。
木村:もうちょっとこうすればよかった……と気づいた後に、監督がOKと言われているのでよしとしてしまうようなこと。もちろん、時間の制約などがあり、繰り返すとなるとほかの人にも迷惑をかけるとは思いますし、そういうことが見えるようになっているから気遣いをしてしまうわけですが、追求すべきところはもう一度トライしたいと、言えないといけないなと思うんです。妥協しすぎてもあまりよくないことだなと。
新しい年を迎え「もう一度初心に立ち返る」
木村:最近は自分の仕事がとても忙しくて時間に追われてしまうので、体力を100パーセント使いたいけれど、少しコントロールしたりすることがあり、戦えていない自分がいることに落ち込んでしまうんですよね。
今年は新しい年を迎えたので、もう一度初心に立ち返り、自分との戦いもそうだし、誰かのお役に立つためにも、わたしが本当に身を削って頑張るのだという、もう一度アスリートな気持ちに戻りたいと思っています。それにプラスして、誰かを幸せにすることで、結果的に自分も幸せになれるというか、そういうことも含めて自分自身を幸せにしてあげることも、とても大事だなと最近強く思います。
――精神的・肉体的にどのようなケアをされていますか?
木村:お芝居は自分を追い詰めることになるので、自分を労わることをします。表面的にはメンテナンス、内面的には潤いを与えるようなことですかね。
たとえば自然の中に行くとか、映画や舞台を見てインプットする時間を作るとか、アウトプットばかりしていると疲弊していってしまうので、インプットや癒す時間もとても必要だなと思うんです。それと撮影現場でも、みんなを楽しませようとするだけでなく、自分自身が楽しむこともとても重要だなと思っています。
年を重ねて大切なのは「元に戻すこと」
木村:もちろんサプリなどいろいろなものを試してはいますが、先ほど言ったように自分をリセットする時間がとても大事だなと思っています。体や心。歳を重ねていくと疲れも大きくなりますし、元に戻すにも時間がかかるもの。ちょっと肩が痛くてもそのまま放置して進んでしまう人が多いと思いますが、まず元の体に戻すようにする。痛くない状態に戻る。いったん元に戻すことにフォーカスして過ごすようになりました。
歳を重ねていけば老化ももちろんあるだろうけど、それを少しでも元に戻すという。体の痛みや、健康状態、筋肉量など、すべてにおいて、ですね。運動や体のメンテナンスです。わたしには鍼治療が合っているのですが、マッサージ、酵素風呂、汗をかくことも重要だなと思っています。
――いろいろ努力されているんですね。
木村:そうですね(笑)。ただ、歳を重ねていくことに抗っているわけではなく、元に戻していくということなんです。そのことを意識していたほうが、体はラクになるなと思います。
――同世代のみなさんにメッセージをお願いしてもよいでしょうか。
木村:みんな頑張っちゃいますからね。ただ、「50代はこうだよね」と、まわりの価値観に流されずにいたいとわたしは思うんです。自分のやりたいこと、自分を幸せにしてあげられることを大切に、自分を潤すことをしていってほしいなと思いますし、わたしもしていきたい。これはもう何歳でも同じだと思います。
あとは歳を重ねることが怖くなる年代だと思いますが、それは日本の価値観の問題かもしれないですよね。ヨーロッパでは歳を重ねることは、知性と経験が増えることだから、それはいいことだとされているそうです。だから素敵なことなんだと思って、一緒に歳を重ねていきましょう。
<取材・文/トキタタカシ>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
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