2018年の三代同時襲名が話題になった、名門・高麗屋の八代目市川染五郎など、歌舞伎界の若きプリンスたちが注目を集めている。

 現在13歳の尾上眞秀(おのえ まほろ)もまたその一人。
2007年にフランス人のアートディレクターと結婚した寺島しのぶの長男で、祖父は七代目尾上菊五郎である。

 柔らかな雰囲気が見る者の心をくすぐる、この超新星の魅力について、イケメン研究家・加賀谷健が解説する。

歌舞伎界の超新星・尾上眞秀

 言わずもがな、2025年は吉沢亮主演映画『国宝』が咲き乱れた年だった。(このコラム執筆時点で)観客動員数1200万人以上、興行収入180億円を突破し、歴代興行収入ランキング邦画実写1位に躍り出る歴史的快挙を今さら確認するまでもない。

 令和の時代に歌舞伎を題材にした文芸映画が(世界ではなく)日本の観客に受けたことは、日本映画史のエポックメイキングだろう。人々の関心は自ずと歌舞伎そのものにも向けられる中、『国宝』で梨園の妻を堂々たる主体性で演じた寺島しのぶの長男・尾上眞秀が脚光を浴び始めている。

 控え目に言って、尾上眞秀は歌舞伎界の超新星である。寺島のSNSになかなかの頻度で眞秀が登場するのだが、これはれっきとした顔見世興行ではないか。現在13歳の愛息の柔らかな雰囲気を捉えた数々の写真や動画が閲覧者の心をくすぐる。

「ばあば」は“任侠映画の花”だった?

 2026年1月6日に寺島のInstagram上に投稿された動画はネットニュースになった。キャプションには「3人今年もそれぞれにたまには団結しながら我が道を生きましょう!」と綴られ、寺島と2007年に結婚したフランス人のアートディレクターであるローラン・グナシアと、すくすく育つ眞秀の幼少時代を写真で振り返る作りが話題になった。

 ここで華麗な家族関係を確認しておいた方がよさそうだ。眞秀の祖父は七代目尾上菊五郎。祖母は昭和の大スター藤純子(富司純子)。
さらに高祖父は1960年代の東映任侠映画を牽引した大プロデューサー俊藤浩滋。俊藤の自伝にして名著(筆者バイブルの一冊!)『任侠映画伝』には、1971年、尾上菊五郎と娘・藤純子の婚約発表と彼女の女優引退について記されている。

 当時の東映社長・岡田茂からの要請で俊藤がプロデュースした藤引退作『関東緋桜一家』(1972年)は、鶴田浩二や高倉健、若山富三郎などオールスターが集結した屈指の名作だが、鶴田、高倉、撮影所で将軍の異名があった巨匠・山下耕作監督がスピーチしたという披露宴の苛烈な様子を想像しただけでめまいがする。

 同書の共著者であり、詳細な注釈を付けた映画評論家・山根貞男が“任侠映画の花”と評した藤純子(ちなみに俊藤浩滋は“任侠映画のドン”)を孫の眞秀は「ばあば」と呼ぶ。

 初出演映画『港のひかり』(2025年)のジャパンプレミア(10月18日)に登壇した眞秀は、緊張の声色ながら、祖母(ばあば)に言及して客席から朗らかな笑いを誘っていた。

MC沢村一樹の「余計なお世話」が本質的?

 そんな眞秀はどんな人間像なのか。フジテレビで放送されている人気番組『突然ですが占ってもいいですか?』放送回(2025年11月23日放送)から垣間見えたものがある。

 寺島とともに出演した眞秀は、凄腕占い師・星ひとみに金運、恋愛運についてざっくばらんなアドバイスを受ける。特に2025年はこの先の自分が強くなれるかなれないかの分岐点になるのだと。

 基本的にふわりと柔らかな雰囲気をまとう眞秀がこの先どんな役者になるのか。

 偉大な祖父たちの名演に小さい頃から接してきたからこそ、本人は「トップの歌舞伎役者になりたいという思いはあんまりなくて、それよりは楽しませたいっていうか」とおぼろげながらも清々しい意志表明をした。

 彼が言う「楽しませたい」が人間としての強さにどう裏打ちされるのか。
それが今後の指針になるのかもしれない。

 するとモニターで見ていたMCの一人、沢村一樹が番組の締めくくりでこんなコメントをした。沢村がフランス人の父と同じような高身長になるのではないかと推測しながら「大きい女形もキレイかもしれないけど」と言い、すかさず水野美紀が「余計なお世話」とツッコミを入れていたのだが、でも案外本質的かもしれない。というのも、人間国宝・坂東玉三郎がまさに女形と身長との関係性から自らの芸を磨いた部分があるからだ。

 それこそ『国宝』に大きな影響を与えたスイスの巨匠監督ダニエル・シュミットが東京の街に尽きせぬ興味を示した映画『書かれた顔』(1995年)に出演した坂東は、自分は女形としては長身でそれが弱点だったが、その弱点を強みに変えたこと(本人は「自分の大きいということを客観的に見て自分で分解して料理して」と表現)を解説している。

これまた余計なお世話だが、尾上眞秀が長身になったなら是非とも力強い女形を目指してほしいと勝手に思ったりする。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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