1月スタートの冬ドラマの“問題作”と言われながら、盛り上がり続けている杉咲花さん主演の『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系/以下『冬のさ春のね』)。

 なぜ今作がこれほど賛否両論を巻き起こしているのでしょうか。


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“清純派の杉咲花”ではない本作に「思ったのと違う」

 今作では、視聴者が「二重に裏切られる」ような体験をするため、SNSを中心に様々な意見が飛び交う要因となっているように思います。

 まず、視聴者の中で勝手に、主演の杉咲さんに対し役柄にまでも分厚い信頼を寄せていた人も多いのではないでしょうか。杉咲さんは『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)でも連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)でも“気が強いけれどしっかりしたヒロイン”を演じていました。

 直近の連ドラ主演作『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)では、記憶障害がありながらも懸命に生きる主人公と、それを献身的に支えた若葉竜也さん演じる同僚の美しすぎる恋の成就は、観る者の涙を誘いました。

「思ったのと違う…」と賛否両論 “冬ドラマの問題作”に視聴者が裏切られたと感じる2つのワケ
ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(関西テレビ公式サイト)
 こうした杉咲さんの経歴から、彼女が演じる役について、前向きで、純心であるというイメージや期待を持っている視聴者からすると、『冬のさ春のね』の主人公・土田文菜は、「思ってたのと違う」と感じるでしょう。

リアルすぎるゆえ、文菜=杉咲花と同一視する視聴者

 失うことが怖く「好きにならない人を好きになる」ため、恋人に執着しない文菜は分かりやすい“ピュアでまっすぐな女性”ではありません。

 成田凌さん演じる彼氏・佐伯ゆきおの存在がありながら、内堀太郎さん演じる彼女持ちの先輩・山田線とこっそり会っているし、ホテルにも行く。自分に好意を抱いてる岡山天音さん演じる早瀬小太郎とも、付き合えないけどホテルには行く。倉悠貴さん演じる元カレの柴咲秀にも、まるで気が無いわけでもなさそう

 こんなに恋に、性に奔放な(ように見える)杉咲さんをこれまで観たことが無かった視聴者が、放送開始前のワクワクから「裏切られた」と感じても不思議ではありません。

杉咲花と成田凌、あの朝ドラから立場逆転?

 杉咲さんの演技がリアルすぎて、本当に地のままで会話しているように見えるため、あくまで画面に映っているのは文菜なのに、杉咲さんの言動として捉えてしまうこともその気持ちを加速させます。

 また、『おちょやん』ではヒロインを裏切り別れることになる元夫役だった成田さんが、『冬のさ春のね』では、文菜を大切にしているゆきおを演じており、杉咲さんと立場が逆になっています。

 ゆきおはとにかく「優しくまっすぐ」と魅力的で、運命的な出会いから文菜と交際に発展する。そんなゆきおに少しでも感情移入してしまうと、余計に文菜が許せなくなってきます。

 今作はドキュメンタリーかのように役者同士の自然な会話が繰り広げられる分、登場人物の日常を目撃した気分になります。ゆきおの知らないところで、ゆきおに満たされない文菜がサクサクと「浮気」ととれる行動をしていくので、ゆきお目線だと「え、何これ?」と感じてしまい心が持ちません。


 視聴者は、杉咲さんの純朴なイメージへの期待からも裏切られ、文菜のゆきおに対する裏切り行為も見せつけられ、二重に裏切られた気持ちになってしまうのでしょう。

演技力の高い俳優たちが繰り広げる会話劇

 それでも、今作には良い点もいっぱいあります。『アンメット』にも通じる映画のような、極めてナチュラルな会話劇が繰り広げられ、長回しシーンが多用されるなど、普通のドラマとは違う独特な空気感が漂っていて、つい見いってしまう。

 その中で、杉咲さんだけでなく出演者のみなさん演技力が高い。

クズ男→誠実男に“転生”した成田凌らにも注目

『おちょやん』でのクズ男から誠実彼氏に転生した成田さん、戦死した弟から誠実元カレに転生した倉さん、『アンメット』のエリート医師から気弱美容師に転生した岡山さん。

 そして風貌と物腰から東出昌大さんに似ていると話題になった内堀さんも含め、様々なタイプのイケメンを楽しむことも出来ます。

 また、文菜の親友には「他者に恋愛感情を抱き、性愛感情を抱かない」というロマンティック・アセクシュアルの女性がいます。

 一方で文菜は、恋愛感情も性愛感情も抱くけれど、どれも本気になれず苦しんでいる。そうした一筋縄ではいかない恋愛と性愛を巡る多様な在り方も、今作によって考えさせられます。

結局、こんな杉咲花も可愛い!

 何より、ちょっとワルい女な杉咲さんが可愛い。第3話までだと、線と会ったり話している時が一番乙女の顔をしています。

 表情一つ一つで、文菜の中での男性の序列がはっきり分かるのも、残酷だけれど巧いなあと唸ってしまう。これまでの役とのギャップも含め、杉咲さんの多面性が怖いほどです。

 今後、文菜が「まっすぐ“好き”」と言える日は来るのか、どんな春が待ち受けているのか、見届けたいと思います。


<文/こじらぶ>

【こじらぶ】
フリーライター・コラムニスト。言語学修士。男性&女性アイドル、地下、ローカルなど様々な現場を経験。ドラマ、スポーツ、エンタメ全般から時事ネタまで。俳優、アイドルなどのインタビューも。X: @kojirabu0419
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