もし、あなたの目の前で「酔っていたから」という理由で子どもが傷つけられたとしたら……許すことができますか?

 今回は、そんな経験をしてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

普段は温厚だけど、飲むと乱暴になる義父

「楽しい節分」が一気に地獄へ…3歳児を傷つけた“鬼役のじいじ...の画像はこちら >>
 加藤優香さん(仮名・35歳)は、近所に住む義父の酒癖の悪さに、以前から拭えない不安を抱えていました。

「義父は普段は温厚な人なんですが、お酒を飲むといきなり変なスイッチが入って別人のような乱暴な性格になるんです
もしやこれが本性なの? と思うと恐ろしくて」

 その不安が、単なる思い過ごしではなかったと痛感させられたのが、昨年の節分の出来事でした。

「近所に住む義父がたまたま私たちの家に来ていたので、せっかくだから一緒に節分パーティーをしようということになり、夕飯を食べながらビールを飲み出したんですよ」

 最初は穏やかな空気でした。ほろ酔いになった義父は上機嫌で、豆まきの時間になると自ら鬼役を買って出たそう。優香さんと夫、そして当時3歳だった息子の瑛人くん(仮名)で、笑いながら豆を投げ合う……そんなどこにでもある、微笑ましい家庭行事のはずでした。

3歳の孫にぬいぐるみを投げつけられて激怒

「すると非日常の空間にテンションが上がった瑛人が調子に乗ってしまって。義父の背後から、中に芯の通った硬めのぬいぐるみを、思いっきり投げつけてしまったんですよね

 瑛人くんにとっては、“今日はじいじに何を投げてもいい日”くらいの、他愛のない勘違いだったのでしょう。大人が叱って諭せば、それで終わるような、幼い子どもによくある行動でした。

「ですがそれが酔った義父の逆鱗に触れてしまいました。完全にスイッチの入ってしまった義父は、鬼の形相で私から豆をぶん取ると、瑛人に向かって大人気ない全力でぶつけはじめて……」

 相手は3歳の子ども。しかも自分の孫です。酔いに任せ、感情のブレーキを完全に失った義父の姿は、行事の“鬼”ではなく、暴力を振るう大人そのものでした。

「そして、夫が羽交締めにして義父を止め、瑛人は泣き叫び、テーブルが倒れて料理やお酒が散乱する、地獄のような節分になりました

謝罪に来た義父の“信じられない態度”

 その夜以降、優香さん一家は義父と距離を置くことを決めたそう。

 数日後、義父はシラフの状態で謝罪にやってきました。しかしその言葉は、終始「酒」を言い訳にしたものだったといいます。


『あの時のことは酔っていて覚えていないんだ』『酒が回りすぎた』『まさか本気で投げたつもりはなかった』と何度も繰り返されて。表面上は謝っているようでも、実際は全部お酒のせいにして、自分は悪くないと言い訳しているように感じました」

「楽しい節分」が一気に地獄へ…3歳児を傷つけた“鬼役のじいじ”に家族が凍りついた日
ビールで晩酌
 瑛人くんに向けた直接的な謝罪よりも、「酒に呑まれた自分」の弁明ばかりで……あの瞬間に何が起きたのか、幼い瑛人くんにどれほど恐怖を与え、それが今後どのような影響をもたらすかについて、義父自身が真正面から向き合おうとする姿勢は見えなかったそう。

「酒のせい」で片づけてはいけない

「『もう酒は控えるから、安心して』『あんなことは今後二度と起きないから』とも言われました。でも同時に『酒が入ると誰だって記憶が飛ぶことがあるでしょ?』とも言われて……。それって、また同じことが起きる可能性があるってことですよね? とても信じられないと思いました」

 優香さんの中で、どうしても消えなかったのは、鬼の形相で3歳の息子に全力で豆を投げつけた、あの光景でした。それが「酒のせい」で片づけていい出来事だとは、どうしても思えなかったのです。

「謝罪されても、もう同じ空間に息子を置くことはできないと思ったので、夫と相談してもう二度と家には来ないでほしいと義父に伝えました」

幼い瑛人くんに残った心の傷

 そしてそれ以来、瑛人くんは鬼を異常に怖がるようになってしまったそう。

「表紙に鬼の絵が描いてある絵本をクローゼットの奥に隠したり、テレビにナマハゲが映った瞬間に頭を覆ってうずくまっているのを見たときには、可哀想で泣きそうになってしまいました。これからは、節分の楽しい思い出をいっぱい作ってあげたいと強く思います」と語る優香さん。身内によってつけられてしまった瑛人くんの心の傷が、少しずつでも癒え、また安心して節分を楽しめる日が来ることを願います。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。
著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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