毎号「天皇陵探訪」「斎田探訪」「明治天皇のご落胤」「天皇のトイレ神社」「天皇が変えた地名」といったディープなインペリアル情報が満載。
編集・執筆しているミサンザイさんは、長年の天皇研究の影響か、どこかやんごとなき雰囲気を漂わせる文化系男子です。同人誌愛読者の1人としてお話を伺わせていただきました。
天皇皇后両陛下(当時)との鮮烈な出会い
まず、ミサンザイさんが天皇家をテーマに研究するきっかけは何だったのでしょう。「たしか平成21年の、天皇陛下御即位二十年奉祝のイベント(天皇皇后両陛下御成婚50年及び天皇陛下御即位20年奉祝行事)のときでした。お祝いのため、仕事を休んで皇居に記帳に行ったんです。皇宮警察の音楽隊の青空コンサートも開かれていて、見ていたら『天皇皇后両陛下がお出ましになられます』というアナウンスが。しばらくすると乾通りから黒塗りの車がやってきて、天皇陛下(今の上皇陛下)が降り立たれたんです。
手を伸ばしたら触れそうな距離だったんですが、そのときに、めちゃくちゃきれいだと感じました。きれいというのは、チリ一つないピカピカという意味です。続いて美智子様も車から降りてこられたんですが、後光とはこのことかと思うくらいオーラを放たれていました。光り輝いていたというより、ハロゲンヒーターのようにほわほわーっとまわりの空気がゆらめいてたような感じでした。
世の中にこんな方々がいらっしゃるんだ、という鮮烈な印象でした。
天皇スポットをめぐる旅を始める
まさに天孫降臨の瞬間を目撃し、人生の啓示を受けたんですね。天皇皇后両陛下は、こちらの魂が準備できていないと偶然出会えないのかもしれません。それから、ミサンザイさんはフットワークの軽さを生かして全国各地の天スポを旅するようになったそうです。「天皇をフックにするとありとあらゆるものひっかかってきます。最初に旅したのが天皇陵でした。折り畳み自転車を持って京都、奈良、大阪の古墳や天皇陵を走って回ったのが十数年前。途中で熱中症気味になったところ、そうめん工場の無料流しそうめんを発見して救われたこともありました。パワースポットと違って基本的にほとんど人と会わない旅ですね」
自販機もないような場所で、そうめんに助けられるとは、霊験あらたかな天皇家のご利益のようです。他にも天皇スポットのご利益や運気が上がった実感はあるのでしょうか。
「行ったら楽しくなるので、それがご利益ですね。どこもきれいに整備されていますし、天皇家のゆかりの場所は高台だったり、その土地の一番いい場所だったりします。群馬県渋川市の『行幸田(みゆきだ)』は明治天皇が訪れた場所なんですが、本当に見晴らしが良くて、人もいなくて、良い体験ができました」
皇室御用達の食べ物やホテルも体験
天皇家ゆかりの場所だけでなく、皇室御用達の食べ物やレストランも体験されるのでしょうか。「お召し上がりになったお店に行ったり献上菓子を買ったりもしますね。
「御用邸」がつくとブランド価値が一気に上がるので最強のフレーズです。「御用達ホテル」も全国にあり、先日は「週刊現代」でも記事が出ていましたが、ホテルオークラ系列やホテルニューオータニ系列、プリンスホテルなど全国各地にあるようです。
「他にも手頃に泊まれる天皇家ゆかりの旅館やホテルがありますよ。おすすめは、宮家の別邸跡にある葉山のプレーゴや、銚子市のホテル月美です。ごくたまに泊まります」
雑誌にも出てこない情報をご存知でさすがです。2、3ヶ月に一回、スポット決めて、まとめてたくさんのスポットを巡るそうで、お金も時間もかかりそうですが、日本人として徳を積めそうです。
「天皇と地域とのつながりが発見できるのがおもしろいですね。地域ごとに伝説の核になる天皇がいて、ゆかりの神社がある。
普通に車に乗っていても、天皇関係のものは不思議とバッと視界に入ってくるんですね。友人と車に乗っていて、助手席から一瞬見えた石碑に『天皇』って書いてあったので停めてもらったら、なんで小さい石碑の文字が見えるのか気持ち悪がられました。何かのアラートが発動するようです」
いまだ場所がわからない「天皇のトイレ神社」とは
「展示を観ていたら、警備がものものしくなってきて、この気配はあるな、と思ったらやはりお出ましになりました。明らかに空気が変わるんです。この気配は知っているぞ、と思ったら向こうから黒塗りの車が……。これは東京に住んでいる特権ですね」
『天皇を旅する』最新号の天皇スポット取材の記事で衝撃だったのは、「天皇のトイレ神社」です。愛知県津島市に、明治天皇が用を足された場所を神社にしてしまった人がいたとか……。
「よくあんなことを思いつくな、と。皆、天皇陛下が自分のところに来てくださったら嬉しいので、何か記念に残そうとするんですね。
振り切った国学者の人などは、鹿児島県に明治天皇が行幸されたとき、なんと厠に入って明治天皇の大便を持って帰ってしまったそうです。それを自宅の神棚に祀っていたのですが、やがて屋内には置いておけない状況になったので庭に埋めて、祠を建てて祀ったそうです。奇行ぶりは近所でも笑われたそうですが……。このスポットも行ってみたいのですが場所がわからないんです」
以前、埼玉県日高市の高麗神社に行ったとき、前日に天皇皇后両陛下(当時)がいらっしゃったそうで、街の人たちが声高に感動を語っている場面に遭遇しました。
「美智子様は飯能の庁舎のトイレをご利用されたそうですよ!」なんて大きな声で噂を語るおばさまもいて……。トイレ事情まで街のニュースになるくらいなので、そこが名所になってもおかしくない気がします。
一生かかっても回りきれない「天皇スポット」
知られざる名所といえば、前にミサンザイさんがおっしゃっていた天皇家の胞衣塚(えなづか)というのも気になります。「天皇の胞衣(胎盤・へその緒)が埋められたと伝えられる場所は各地にあって、胞衣塚を巡ったこともあります。神社の境内の松の木の下に石碑が立っていて、『御胞衣埋納所』と書かれていることがあります。大正天皇と昭和天皇くらいまで記録は残っていますが、八王子の某所に、今の皇族方の胞衣塚を見つけた人もいます」
天皇家の胞衣を吸収した樹木とその一帯もパワースポット化しそうです。
「天皇関係で調べると無限にテーマが出てきます。
と、天皇家の安寧を心から願うミサンザイさん。お話を聞いて、もし日本に天皇陛下がいなかったら、これらの伝承や名所も存在せず、日本という国の歴史や文化がずいぶん寂しいものになっていたかもしれない、と思いました。
ミサンザイさんのディープな研究が天皇家にも認められ、いつか園遊会にご招待されるまで応援して参ります。
「そんなことになったらその場で血の気が引くと思います。庶民は遠くから見ているのが一番です」と、奥ゆかしいミサンザイさん。天皇について研究すると、庶民との違いを痛感し、人はますます謙虚になるのかもしれません。
<文・イラスト/辛酸なめ子>
【辛酸なめ子】
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著書は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。
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