子どもの「喜んでほしい」という気持ちは、とても繊細です。だからこそ大人のたったひと言が深い傷になることもあります。


 今回は、バレンタインデーに起きた“忘れられないひと言”のエピソードをご紹介しましょう。

娘からのバレンタインデープレゼント

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 稲田佳代子さん(仮名・35歳)は、小学2年生の娘・凛ちゃん(仮名)のリクエストで、バレンタインデーの前日に手作りチョコにチャレンジしました。

「凛がパパに手作りチョコをプレゼントして驚かせたいと言うので、あくまで私はアシスタントとして凛のサポートをしたんです」

 作ったのは、市販のチョコを湯せんで溶かし、型に流してトッピングをするというシンプルなもの。工程も少なく、思っていた以上に可愛らしく仕上がり、凛ちゃんは終始ご機嫌だったそう。

「多めに作ったので、せっかくだから近所に住むじいじにもあげると凛が言って、『いいね! きっとじいじ喜ぶよ』と、買い物のついでに義実家に寄ったんですよ」

 義実家で、凛ちゃんは「凛が作ったんだよ」と、少し誇らしげにチョコを差し出しました。

「食べられたもんじゃない」義父の対応に絶句

「ところが、義父はひと口かじるなり顔をしかめ『硬いな! こんなの歯が折れちまうし、食べられたもんじゃないな』と言って、その食べかけのチョコを箱に戻したんです。凛はあまりのことにショックで、その場で泣いてしまって」

 凛ちゃんが欲しかったのは、味の講評でも正論でもありませんでした。「これ手作りなの? すごいね! ありがとう」といった、祖父が喜ぶ反応だったのです。

「凛の気持ちも考えず、そんな言葉を口にする義父に対して猛烈に腹が立ちました。たとえチョコが少し硬かったとしても、別に『美味しいよ』や『ありがとう』でいいじゃないですか? 孫が一生懸命作ったものをあんなに露骨に突き返せる神経が理解できず、呆れてしまいましたね」

義父に抗議したら「とんでもない言葉」が返ってきた

 その出来事がよほど堪えたのか、凛ちゃんは帰宅後もしばらく元気がなく「このチョコ、パパにあげられない。凛が食べる」と塞ぎ込んでしまったそう。

孫の手作りチョコに「食べられたもんじゃない」と吐き捨てた祖父。抗議したら返ってきた“とんでもない言葉”とは?
画像はイメージです(以下同)
 そして後日、佳代子さんが義父に抗議すると、返ってきたのは思いもよらない言葉でした。

「『あんなものは手作りじゃないし、美味しくないとはっきり伝えるのが本人のためなんだ』と言い出して……。子どもの気持ちより“自分の思う正しさ”を優先するその柔軟性のなさに、今後また凛を傷つけることがあるんじゃないかと、正直警戒するようになりました」

娘の発言に涙が出そうになった

 普通なら「もう手作りなんてしたくない」と思ってもおかしくない出来事。しかし凛ちゃんは、佳代子さんにこう言ったそう。

「ちゃんと美味しいチョコが作れるように練習したい」

「凛は『自分の実力が足りなかったから悪い』と自分を責めてしまったみたいで、更に頑張ろうとしていて……。
もう十分過ぎるほど頑張っているのに、あまりに健気で涙が出そうになりましたね」

 その後、改めて2人でチョコ作りに挑戦し、凛ちゃん自身が「これなら大丈夫」と納得できるものが完成し、無事にパパへプレゼントすることができました。

孫の手作りチョコに「食べられたもんじゃない」と吐き捨てた祖父。抗議したら返ってきた“とんでもない言葉”とは?
プレゼント バレンタイン
 しかし、この一件をきっかけに、佳代子さん夫婦の中で義父への不信感は決定的なものになりました。

娘を守るために……夫婦の決断は?

「孫の気持ちを平然と踏みにじり、『本人のため』いう言葉を盾に自分の考えを押し付けてくる義父の姿勢に、『また同じことが起きるに違いない』と、私たち夫婦は確信したんです。その後は徐々に義実家を訪れる回数を減らし、誕生日や季節の行事も何かと理由をつけて断り、距離を置くようにしました

 凛ちゃんを義父と2人きりにすることは避け、自然と疎遠になっていったそう。

「もちろん義父は面白くなかったようです。『はいはい、俺が悪者でいいよ。でもな、世の中はもっと厳しいってことだけは覚えとけ』と負け惜しみの捨て台詞みたいなことも言われてギクシャクしてしまいましたが……凛を守れるのは私たち親だけだと思いました。もう二度と、あんな思いはさせたくありません」と語る佳代子さんでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
Twitter:@skippop
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