2004年に創刊し、東京に生きる市井の人たちのリアルを切り取ってきた雑誌『東京グラフィティ』が休刊を発表したのは、2025年3月(2025年4月号)でした。

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 休刊ということは廃刊。
事実、3月号の表紙にはデカデカと「FINAL」と記されているし……と思い込んでいた我々のもとに復活の報が飛び込んできたのは同年11月でした。

過去には有名人の「タイムスリップ写真」も…!昨年“奇跡の復活”果たした人気雑誌。新編集長のアツい思いとは
グラフィティ読者でさえ予想していなかった復活宣言
 なにがどうなって復活の運びとなったのか? そこを探るべく新編集長・仲野真人さん(29歳)に話を聞いた今回。前編ではコロナ禍で取材がままならなくなり休刊に追い込まれたものの、『東京グラフィティ』を愛する1人の読者の尽力で復活を果たすまでの経緯などを聞きました。

 そして、この後編では仲野新編集長の特に思い入れ深い企画や今後の展開、ストリートスナップ撮影時の独自ルールなどについて掘り下げていきます。

“グラフィティど世代”にとっては必読の内容になっているはず。『東京グラフィティ』(@tokyo_graffiti)の今後に期待しながら、ぜひお読みください!

読者から撮影をリクエストされる「タイムスリップ写真館」

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『東京グラフィティ』復活を先導した新編集長の仲野真人さん
――これまでの『東京グラフィティ』で特に好きだった企画はなんですか?

仲野:「タイムスリップ写真館」という企画です。数年前に撮った昔の写真と同じポーズを取ってもらい、今のモデルさんの状態で改めて撮り直すという趣旨のページですね。

 この企画に載る昔の写真は、僕らが撮ったものではありません。モデルさんのお家に保管してあった当時の写真をお借りします。その後、昔の写真で着ていた服と同じようなものを編集部が取り寄せ、同じような場所を探し、同じポーズを取ってもらいながら改めて撮り直すという内容です。

 まるまるこの企画の特集号をつくったこともあります。そのときはダチョウ倶楽部さんに昔の写真お借りして、表紙になってもらいました。

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「タイムスリップ写真館」ダチョウ倶楽部編
 それ以前にも、同じ企画で亀田兄弟の興毅さん、大毅さんに出てもらったことがあります。


――昔の写真に写る少年時代の興毅さんが泣いています。ボクシングを始める前の彼はいじめられっ子だったそうですね。

仲野:そう、まさしくその写真が出てきて(笑)。

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「タイムスリップ写真館」亀田兄弟編
「タイムカプセプル写真館」を撮るときは、モデルさんのいい思い出になるように心がけています。ストリートスナップで撮られると、おしゃれな人はうれしいじゃないですか? 一方、この企画では昔の仲間との再会や思い出にフォーカスする部分が大きいです。

 たとえば、これは29年前のツーリングバイク仲間と撮り直した1枚。このときは「久々に仲間と会って同窓会をするから撮ってほしい」と、本人たちから編集部に連絡が来ました。

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「仲間と再会するから撮ってほしい」と編集部にリクエストがあった
――読者のほうから「撮ってほしい」という連絡が来たんですか?

仲野:そうです。当日は本人たちが29年前に着ていた服と同じものを持参して、撮影に臨んでくれました。

 このとき以外にも「親戚一堂で会うから」というタイミングだったり、そういうのはたまにあります。でも、昔の写真が良くないとグラフィティには掲載できないので実際に写真を確認し、それがすごくよかったら「撮りましょう」という流れになります。

 時間の経過っておもしろくて、昔の写真では太っちょだった子が今は痩せていたり、女性だった人が男性になっていたり、親子写真で子どもを見守っていた母娘の目線の高さが同じになっていたり、ひと目見てわかるそういう変化がグッと来ますよね。


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約20年後、家族全員の目線が同じ高さになった

ストリートスナップで声をかけるモデルの基準

――『東京グラフィティ』はストリートスナップが数多いですが、街行く人に闇雲に声をかけているわけではないと思います。モデルになってもらう人の基準はあるのでしょうか?

仲野:秋葉原のスナップでいうとアニメTシャツを着ている人だったり、サンリオピューロランド前での撮影では大きなぬいぐるみ背負っている人だったり、写真だけでわかるワンポイントのある方に声をかけています。

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秋葉原でのスナップ。アニメTシャツを着ていたり特徴的なポイントを重視
 サンリオ前での撮影のときは、「サンリオ男子」というテーマを設定しました。このように、スナップ撮影時は毎回なにかしらのテーマを決めて臨みます。でも、これが結構難しくて。たとえば、嵐のライブ会場を訪れても「この人は嵐のファンでしょ!」とわかりやすい服を着た人って少ないじゃないですか?

――嵐ファンがどんなファッションをするのか、まったくイメージが湧きませんね……。

仲野:だから、普通の服を着ていない人が一定数はいる企画にしないといけないんです。『東京グラフィティ』が矢沢永吉さんやX JAPANのコンサート会場でスナップを撮ったことはあっても、嵐のコンサートに1回も行っていないのは写真だけだと「この人は嵐ファン!」と判別しにくいからです。だから、普通の服を着ていない人が一定数いるであろう企画にしないといけないんです。

 横須賀での撮影もそうでした。スカジャンを着ている人がいたら声をかけてスカジャンを撮りまくる“スカジャン縛り”のスナップ撮影を行ったのですが、特徴のない服を着た人ばかりのテーマだと企画は成立しません。

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“スカジャン縛り”がテーマのストリートスナップ
――なるほど、横須賀でというのがミソですね。

仲野:そう、これは横須賀がミソです。
ほかには、新宿二丁目でゲイの方々を撮らせてもらったり。

――着ている服を見ると、その街の匂いが伝わってきますね。

仲野:あと、浅草ではおじいちゃんおばあちゃんを撮ることが多いです。浅草特有のおしゃれのバランス感というか「こういうおばちゃんっているよね」「こういうおじちゃんもいるよね」という人を撮影することで、その写真から街の匂いが見えてくるようにする。それがねらいです。秋葉原での撮影も同じで、アキバの街にぴったりなスタイルをされている方に声をかけます。

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スナップを見るだけで浅草の匂いが伝わってくる
――でも、そういう人にはそうそう遭遇しないですよね。

仲野:おっしゃるとおり。だから、1日に7人ぐらい撮れればいいかなという感じです。

 僕が声をかけるペースは1時間に2~3人くらいで、2時間誰にも声をかけなかったこともあります。無駄に声はかけないんですね。で、断られたらすぐに「わかりました、すいません」と引き下がります。
そんな感じで昼11時ぐらいから暗くなるまで街に立ち、平均して1日7人を撮ります。

ストリートスナップのモデルの姿勢が直立不動の理由

仲野:あと、グラフィティでスナップを撮るとき、モデルさんには必ず直立不動になってもらいます。ピースするのも抑えてもらうし、カメラと被写体との距離はどのスナップも一緒です。結構、撮影ルールがあるんです。

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本当に全員が直立不動
――本当だ! どのモデルさんもピースとかしていないですね。

仲野:デザインっぽく見せないようにするというか、その人のそのままの状態を見てほしいと思っています。だから、うちのスナップはちょっとカタログっぽい感じがしますよね。

 そもそも、立ち位置として『東京グラフィティ』はファッション誌ではありません。ファッション誌だとポージングをしたり目線を外したりしますが、ポージングで良い/悪いが決まるスナップは撮らないようにしています。そのままで撮ったとしても「いい!」と思える要素を撮る……というねらいがあります。そういう意味で、スナップは直立不動が基本です。

コロナ禍のストリートスナップは全員マスクをつけている

――『東京グラフィティ』がストリートスナップを撮る撮影場所は、原宿、秋葉原、巣鴨、新宿、浅草などすごく幅広いです。撮影場所はどんな基準で選んでいるのでしょうか?

仲野:歩いている人の雰囲気で、その街の実態が見えやすい場所ですね。そこにいることで許容されるファッションやカルチャーが見える街。


 たとえば、昔の原宿だったらロリータやパンク、秋葉原だったらオタク、浅草だったらおじいちゃんおばあちゃんなど。一定数の人種とファッションの雰囲気が僕のなかの認識としてあるので、いろいろな街の撮影でそれらを記録に残していく感じです。

 撮影場所は意識して毎回変えています。「駒沢公園でスケボーをしている女の子」というテーマを設定したストリートスナップ企画は、「駒沢に行ったらスケボーしてる女の子いるよね」「じゃあ、行って取材しよう」という話の流れで決まりました。今だったら「渋谷におしゃれな外国人、めっちゃ増えたよね」という話をよく聞くじゃないですか? 普通の人だと日常会話で終わる話ですが、僕らは「多いんだったら、本当に行って撮ってみようぜ」となります。そういうノリは、誌面のつくり方としてすごく大事にしています。

 たぶん、これって20年後に見たらすごくおもしろいことになると思います。「なんで、渋谷で外国人を撮ったの?」「いや、あのときめっちゃ多かったんだよ」って。そんな雑誌になるように想定して取材しているところはありますね。

――資料としてもすごく価値のある雑誌ですね。

仲野:リアルを切り取るという意味では、2021年あたりに撮ったスナップがおもしろいです。見返すと、登場している人が全員マスクをしているんです。


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2021年あたりは本当にこんな感じだった
 グラフィティはドキュメンタリー的な要素を含む雑誌なので、こういうのもすごく大事にしていて。本当はマスクを取った状態で撮ったほうがいいのでしょうが、「コロナ禍はみんなマスクをしていた」という事実は絶対残しておくべきだと思い、マスクありのままで撮影しました。

 たぶん、あの時期にマスクをつけたままファッションスナップを撮っていた雑誌は僕らだけだと思います。ファッション雑誌としてはあるまじき行為じゃないですか? でも、『東京グラフィティ』はファッション誌ではないし、どちらかというとリアル志向が強めなので、マスクありで写真撮った……というか、マスクを取るのをNGとしていました。

『東京グラフィティ』が雑誌として復活するのはいつか?

――復活した『東京グラフィティ』の今後の展開を教えてください。SNSは再始動しましたが、紙の本誌も復活しますか?

仲野:これは完全に内側の話なのですが、休刊したときに雑誌コードを切ってしまったんです。今、まさに相談している最中なのですが、雑誌コードを再び取るのはちょっと難しいかも……という状況でして(苦笑)。だから、書店販売はあっても、コンビニ流通はもうできないかなあと。

――コンビニの雑誌コーナーは縮小する一方ですが、今もコンビニ流通ができないと痛いのでしょうか?

仲野:そうですね、コンビニでの売り上げは結構多いです。ただ、今は昔みたいにコンビニで立ち読みができなくなってきていますよね。立ち読みができた頃、『東京グラフィティ』はコンビニ売り上げがすごく高かったんです。立ち読みする深夜族の人に刺さっていたらしくて(笑)。

――かつて、上下スウェットを着ながらグラフィティを立ち読みしていた人をよく見ました(笑)。

仲野:深夜、グラフィティを読んだらグッとくるという謎の効果があったようです(笑)。だから、僕らが今やらなきゃいけないことは雑誌コードを取り直すことですね。

 ただ、休刊前もそうでしたが『東京グラフィティ』を出しても赤字になるのは揺るぎない確定事項です。だから、今のグラフィティの会社の規模感だと、営業案件でかなり収益を出してからでないと紙の本誌は出せないという状況です。

 ただでさえ、今は紙の雑誌を出すのが難しい時代。創刊当時の『東京グラフィティ』は1か月に1回出ていて、コロナ以降は季刊になりました。今の僕の想定としては、『東京グラフィティ』を紙で年に1冊は出したい……ぐらいのペース感で考えています。2026年の秋~冬ぐらいに出せればうれしいな、という感じです。でも、そのためには広告のほうでお金を稼ぐ必要がありますね。

――『近大グラフィティ』的なお仕事があれば……ということですよね。

仲野:そうですね。だから、ちょっと特殊ですよね。黒字にならない雑誌を出したいから、ほかの広告案件をがんばる編集部って「働き方として合ってるのか?」という気持ちもあるんですけど(笑)。

 あと、コロナ以降はリモートでできる企画を数多くやるようになり、その時期にアメリカやスコットランドなど海外のギャルの方をたくさん取材したんです。そうしたら「日本の雑誌から取材が来た!」と、海外のギャルたちがすごい喜んでくれて。だから、海外に向けたSNS展開にも力を入れていきたいと思っています。

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外国のギャルに自宅内で自撮りしてもらった企画
『東京グラフィティ』の一番太い読者層は30~40代ですが、それより若い人たちが新規でグラフィティに興味を持ってくれるだろうか……と、僕はずっと考えていました。若い世代は動画コンテンツが主流で、雑誌は本当に好きな人が読むものになっていますからね。

 一方、海外の人を取材したらすごく喜んでくれたのが編集者目線で僕はすごくうれしかった。「日本にはこういう雑誌があるみたいだよ」「え、こんなの知らなかった。おもしろい! 日本のことが知れる」と、数珠つなぎのように評判が広まっていって。

 グラフィティの楽しみ方の一つに「いろいろな人の価値観を知れる」という要素があります。それを海外の人も享受できると知れたときは、目から鱗でした。だから今、SNSの投稿はタグを英語にしてるぐらいなんです(笑)。それぐらい、海外の人にグラフィティを見てほしいという気持ちはあります。

復活後の『東京グラフィティ』が今の時代に担う役割とは

――廃刊・休刊になった雑誌は「役割を終えた」と評価されることが多いです。しかし、『東京グラフィティ』の休刊はその類のものではなかった気がします。この時代に『東京グラフィティ』が担う役割はどんなものだと思いますか?

仲野:僕は、「肯定」だと思います。すべてを肯定すること。

 SNS内で特定の人のファッションを馬鹿にしたり容姿をいじったり、今でもそういうやり取りをたまに見かけます。特に、オタクの人は「ダサい」「イケてない」「モテない」とSNSで虐げられやすい対象です。

 でも、グラフィティのコンテンツはすべての人を肯定していく。オタクの方々がファッションスナップに載る機会って、うちの取材以外ではあまりないと思うんです。でも、グラフィティのファッションスナップに載ることで、その方々はすごく肯定されているはずです。だって、僕らはオタクの方々をすごくカッコいいと思いながら撮っているので。

――ああ、いいですね。

仲野:僕らはすごく「いい!」「イケてる!」と思いながら撮っています。秋葉原の街で自分の“好き”を引っ提げている時点で「あなたは素晴らしいよ」という気持ちがあります。好きな推しのアイドルをファッションとして昇華させている表現をめちゃくちゃカッコいいと思いながら撮っている。そんなふうに肯定していくことがすごく大事だなと思います。

 だから、グラフィティが担っている役割は全肯定です。人を攻撃しないし、馬鹿にしない。取材した人を馬鹿にしないという姿勢を、すごく大事にしています。編集部は全員、グラフィティに載る人を「カッコいい」「イケてる」と思いながら撮る。それは大前提です。

――それはわかります。グラフィティを読むと、どんな属性の人も同じ扱いで並列で登場していますからね。

仲野:まさにそうですね。僕らは掲載する際の写真のサイズに関しても重視しています。たまに著名人の方が誌面に登場しますが、その際は優劣をつけないよう意識しています。普通の雑誌だったらおそらく、著名人の写真を大きくするはず。でも、僕らは一般の方々も著名な方々も全部、絶対に同じサイズにします。知名度を度外視する姿勢はすごく大事にしています。

 たとえば、『東京グラフィティ』では政治家の方々をよく取材するんですね。

――鈴木宗男さんや山本太郎さん、茂木敏充さんなど錚々たる人たちが載っていますね。

仲野:でも、一般の方々と同じサイズで毎回登場していただいています。

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一般の人も鈴木宗男も同じ大きさで登場する
 そうやっていろいろな方々を公平に載せることで、すべての人を肯定する。そして、すべての人に対して「それでいいんだよ」「いろんな人がいていいよ」と伝えてあげる。そんな役割を担っているのかなと思います。

<取材・文・撮影/寺西ジャジューカ>
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