2025年12月30日にお笑いコンビ「チーモンチョーチュウ」を解散し、現在はピン芸人として新たなフィールドへ挑戦し続けているきくちこうすけさん。

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 きくちさんは2019年より、“手話×お笑い=シュワライ!”をテーマに掲げる「よしもと手話ブ!」の一員として活動を開始。
ろう者も聴者も同時に笑えるお笑いライブに出演しています。今回は、きくちさんの手話に対する思いを伺いました。

娘の友人の父との出会いと「手話×お笑い」の閃き

――きくちさんが手話の活動を始めたきっかけを聞かせてください。

きくちこうすけさん(以下、きくち):僕の手話との出会いは2018年です。もともと僕は、1人で1時間喋り続けるトークイベントを隔月ペースで6~7年開催していたんです。そのスピンオフ企画として、後輩のLLR・福田から「1時間踊り続けるライブってどうですか?」と、自分が踊らないからって気楽に投げられたんですよ(笑)。

でも、それも面白いかもなと思って。1人では無理だったので、毎回ゲストを呼んで実際に開催していました。そのイベントに、当時ダンスを習っていた幼稚園生の娘を出演させたことがあるんです。その時、娘の友達も一緒に出てもらったのですが、その子のお父さんが難聴の方だったんですよ。

――お友達のお父様もイベントを見に来てくれたのですか?

きくち:はい。娘さんが踊る姿を見て、すごく楽しんでくれていました。でも、その方が今回のイベントを「音」の部分まで含めてどこまで楽しめたのだろうか?という疑問も頭に浮かんだんです。
聞こえづらい人でも100%に近い満足度を得られるお笑いライブって何だろう?と考えた時、「1時間喋り続けるライブを手話でやればいいんじゃないか」と思い至りました。

――それはすごい発想ですね!

きくち:すぐに当時のマネージャーに、芸人初の手話通訳士であるカエルサークルのソイくんを紹介してもらいました。最初は「手話とは何ぞや」というところから始まり、簡単な挨拶などを教えてもらいましたね。学びたいと思ってから実際に動き出すまで、本当に早かったです。滞りなくトントン拍子といった感じ。もし、その段階で何か引っかかっていたら、手話は始めていなかったかもしれません。

「よしもと手話ブ!」への合流と「野良」での実践

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――2019年には、「よしもと手話ブ!」が設立されました。

きくち:ソイくんのプロジェクトとして立ち上がった部活なんです。そこで僕も手話に興味のある芸人ということで声をかけてもらって。ピン芸人の上河内貴人も、手話検定3級を持っているということで本人の直訴で入部しました。当時は手話に関連する仕事をしていた次長課長の河本さんや、麒麟の田村さんも参加していましたね。

――とはいえ、その頃のきくちさんは手話を始めてまだ1年ほどですよね。どのように上達していったのですか?

きくち:僕の活動を知ったお客さんが、ろう者の友達を連れてきてくれたんですよ。
手話は学んでも使えなければ意味がない。だから、その人と手話で会話をし続けました。そこで「それは違う」とか「こうした方がいい」といった、わかりづらい表現方法を直接教えてもらったんです。

お笑いを手話へ昇華する難しさと意外なこだわり

――ダンスの時と同様に、教室や講習会などには通わなかったのですね。

きくち:そうなんですよ。でもその代わり、ろうの友達がまた別の方を紹介してくださったりして、どんどん知り合いの輪が広がっていったんです。実は手話って個人で結構クセがあるので、いろんな方にお会いすることで読み取りの勉強にもなりました。基礎はテキストやYouTube、実践は飲みに行くことで学んでいます(笑)。

――格闘技でいえば、まさにストリートファイト的な。

きくち:実践、実践の、完全な野良ですね(笑)。ただ、手話をお笑いに昇華することは、普通にネタをやるのとはまた違いました。言い方や声色で笑わせる手法が通じませんから。目で見て理解できるようにしたり、話の流れの中でボケたりツッコんだりしないと笑いは起きない。


これまで漫才で培った表現力以上に、より伝えることを突き詰めないといけないわけです。今までやってきたお笑いよりもできることの幅は狭くなったけれど、その分だけ奥行きが深くなったような気がしています。

――ダンスに手話、きくちさんは何事に対してもアグレッシブで努力家ですよね。

きくち:それ、よく言われるんですが、僕自身はその感覚が全然ないんです。でも、そういえば最近プライベートで料理をよくしていて。パスタが美味しいと言われているお店を巡りまくって、好みの濃厚さを突き詰め、結果的に自分の理想のカルボナーラを作り上げました(笑)。

――やっぱり野良で覚えていますね(笑)。

きくち:結局、その瞬間、瞬間の感覚で動いているだけなんだと思います(笑)。

全都道府県の人たちが笑える舞台と「手話通訳士」への挑戦


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――「よしもと手話ブ!」の活動のやりがいはどこにありますか?

きくち:僕らのライブは、手話と喋りを同時にやっているんです。ろうの方と聴者の方が、同時に「面白い!」となれる瞬間がある。それがすごく嬉しいし、モチベーションに繋がっています。これからは『よしもと手話ブ!』を全国的にもっと認知してもらって、全都道府県の人たちが一斉に笑える舞台を作りたいですね。


あと僕、ろう者の芸人がいてもいいなと思うんですよ。手話は使っても使わなくてもよくて、例えば沈黙の中でフリップだけで爆笑を生み出すような。そういう新しい芸人が出てきても面白いと思います。

――きくちさん自身の今後の目標を教えてください。

きくち:2026年は幅広く自分を試しつつ、手話関係では「手話通訳士」の資格を取りたいと思っています。手話ブ!に通訳士が2人いるという状態も強いじゃないですか。倍率が高く、合格率も低い試験(編集注:令和6年度の合格率は5.5%)ですが、持っているのと持っていないのとでは信頼度がだいぶ違いますから。改めて手話に向き合い、学び直す良い機会になると思っています!

<取材・文&撮影/もちづき千代子>

【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama
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