37歳で想定外の妊娠をし、2025年8月末に男児を出産した。

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 妊娠に気づいたのは16週に入ってからだった。
長年の生理不順や「妊娠は難しい」と言われていた過去に加え、ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性でセルフネグレクト癖があり体調管理がおざなりになること、算数障害(発達障害の一種で数字、計算に困難を抱える学習障害)で生理周期を正しく把握していなかったことなど、いくつもの要因が重なっていたのである。
 そして2025年8月末、無事男児を出産した。

 妊娠中は、発達障害のある私に本当に育児ができるのだろうかと不安だったが、実際に産んでみると、毎日やることが多くて病んでいる暇がない。また、それまで「困りごと」として表面化していたADHDの特性の多くが「困りごと」ではなくなってきたのだ。

 主に3つの困りごとを攻略できた。1つ目は情報の整理だ。

観察→ケアのループで自分なりの感覚をつかむ

 妊娠中、健康管理や育児についての情報がネット上にあふれており、ADHDの特性により膨大な情報を整理できずに混乱していた。

 しかし、こども家庭庁や厚生労働省など公的機関の一次情報をチェックしたり、取材したことのある産婦人科医や小児科医の記事や投稿をチェックしたりすることで(森戸やすみ先生やふらいと先生の記事や投稿はとても参考になる)、デマ情報を見分けられるようになり混乱することはなくなっていった。

 また、実際に赤ちゃんと向き合うことで身についていく経験値的なものが一番大きかった。毎日赤ちゃんをじっくり観察して、ケアを繰り返すことが大事だ。

 頭皮が荒れていればローションで保湿したし、ミルクを飲ませている最中、突然上唇を引っ込めて鼻と上唇の間に縦のシワを作って「もういらないお口」をして飲むのをやめるが、縦抱きしてゲップを出させるとまた続きを飲むようになることが多いのもわかった。

新しい育児法も「自分に必要か」で考えた

37歳で想定外の妊娠→現在、0歳育児中。「焦ることも多いけど…」発達障害の私がたどり着いた“苦手の攻略法”
筆者と息子
 SNSにはねんトレ(ねんねトレーニングの略。赤ちゃんが自力で眠りにつく力、通称“セルフねんね”を習得するための練習)やベビーサイン(まだ言葉を話せない赤ちゃんと、手の動きで感情や要求を伝え合う手法)といった昔の育児にはなかった情報もあふれている。

 ねんトレを知ったのは妊娠中で、ADHD特性と睡眠の関連性は深いという研究結果が出ている。
大量の情報が入り込んでくるため脳が疲れやすく、睡眠時間が多く必要になるのだ。しかし、仕事などで物理的に睡眠時間がじゅうぶんに取れなくなると、睡眠障害を併発する恐れもあるのだ。そのため、少しでも睡眠時間を確保しようと妊娠中にねんトレの本は買っていた。

 しかし、ねんトレ開始が推奨されているのは3ヶ月以降。新生児には向かない。夜間授乳で一番寝られない時期に寝たかったのだ。この時期は仕方ないので育休中の夫に頼ってなんとか乗り切った。授乳間隔が空いてきたところでようやくねんトレ開始推奨時期に突入。

 ここまで来るともうわざわざねんトレしなくてもいいかなと思ってしまった。ねんトレに成功した人の体験談を読むと、「自分も赤ちゃんも頑張った。赤ちゃんを泣かせているのはつらかった」とのことだった。ねんトレは赤ちゃんが泣いてもすぐには抱っこせず様子を見て寝させるトレーニングをするので、泣き声がかわいそうですぐに抱っこしてしまう人が多いのだ。


 私も、息子は抱っこすればすぐ泣き止むのでそっちのほうがラクだと思ったのだ。ねんトレを身に付けられるとこの先ずっとラクになりそうではあるが、今この瞬間のラクさを優先した。

 ベビーサインについても、そんなものがあるのか! と驚いたが、日々のお世話に精一杯なので、もっと余裕のある人がやればいいと思った。このようにして育児情報を取捨選択できるようになってからはメンタル面も安定してきた。

優先順位をつけるために、まずは考える

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「ぴよログ」というアプリに記録している息子の睡眠時間。最近は夜まとまって寝る日も増えてきた
 攻略できた困りごとの2つ目は、順序立てすること。ADHD特性により「その場で目についたもの」から取り掛かることが多かった。しかし、そうなると優先順位が曖昧になり、パニックに陥ることもあった。

 育児は想像以上に「優先順位をつけて順番に」やらないといけない場面が多い。息子が派手にうんちを背中漏れしていると思ったら、飼い猫が粗相し始める、洗濯機も終了した音が鳴ったので洗濯物を干さないといけない。こんなとき、何を優先すれば後々ラクになるかを考える必要がある。むやみに動くのではなく、まず考えるようにした。

 また、子どもは自分の予定通りに動いてはくれない。寝かしつけの時間は20~21時と決めているが、必ずしもその時間内に寝てくれるとは限らない。
寝かしつけた後は私の自由時間なのだが、寝かしつけに時間がかかればその分、自由時間が減る。寝かしつけたらネトフリでこの映画を見ようと思っていても、見られないことが多々あったので、ある程度のあきらめにも慣れてきた。

算数障害のせいで苦手な「模様替え」

 3つ目は空間認知能力の弱さを攻略する方法がわかったことだ。算数障害があるせいで、空間認知能力が極端に弱く、初めて行く場所は地図を見てもたどり着けなかったり、うまい具合に模様替えができなかったりした。ドラマなんかで出てくるカッコいい職業の一つの空間デザイナーになんて絶対なれない。

 ベビーグッズを置くための模様替えは、妊娠中に夫に手伝ってもらった。しかし、今のベビーベッドの配置がどうしても気に入らない。

 うちは2LDKで、13畳のリビングダイニングに4.5畳と6畳の部屋がある。不動産屋で物件の間取りを見た際は、4.5畳の部屋を私の仕事部屋にしようと思っていた。しかし、内見してみると4.5畳の部屋にはエアコンがなく、間取りの都合上リビングからエアコンの空気を送るのも厳しい。その部屋にエアコンを取り付けるのも大家さんの許可が必要で、取り付けられたとしても退去時に原状回復として取り外す手間がかかる。

 そのため、通常なら寝室にするはずの6畳の部屋を私の仕事部屋にし、エアコンのない4.5畳の部屋を夫の部屋(家にいない時間が長いためエアコンはなくていいとのこと)、リビングにキングサイズベッドを置いて実質寝室にしている。

 寝室にしているリビングにベビーベッドを置くスペースがないため、ダイニングの冷蔵庫の真横に置いていた。
でも、息子が寝ているときに冷蔵庫の開閉音で起きてしまったり、私としてはブーンというコンプレッサーの音が気になったりしていた(息子はコンプレッサーの音は気にしていないようだったが)。

模様替え攻略のきっかけは「角度の違う複数枚の写真」が

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息子を抱っこしたまま右手だけで原稿執筆、見守る飼い猫
 どうにかしてベビーベッドを冷蔵庫の横以外に置けないか考えまくった。困ったときはChatGPTに頼っている。いろんな角度から部屋の写真を複数枚撮ってAIに考えてもらったが、AIはそこまで完璧ではないので部屋のサイズ感を捉えてもらえず、納得のいく答えを得られなかった。

 ChatGPTに聞くために撮った部屋の写真であるが、じっと眺めていたらひらめいた。ベッドの足元の1mほど先にテレビを設置しているため、その間に1mの隙間がある。もっとベッドをテレビに近づければベッドの頭のほうに1mほどの空間ができるので、そのスペースにベビーベッドを置けばいいのだ。

 夫に手伝ってもらいベッドを動かし、頭上にベビーベッドを置くとぴったりと収まった。その上、今までは息子が寝たらダイニングの電気を消して暗闇の中夕飯を食べねばならなかったが、ダイニングとリビングの間に少しだけ壁があるのでそこにベビーベッドを押し込んだことで、リビングの電気を消していればある程度の暗さを確保でき、ダイニングの電気を付けて食事できるようになった。

 深夜息子の様子を見るのも、今まではダイニングまで行かねばならなかったが(5歩だけど)今はベッドからでも確認できる。

 産後、「赤ちゃんを見たい」といろんな人が我が家にやって来たが、内心私は「冷蔵庫の横にベビーベッドがあるのはおかしいと思われるのではないか」と心配していたので、もっと早く今のレイアウトを思いついておくべきだった。

 このレイアウトができたのは写真のおかげである。LDのある人は一般の人とは学習の仕方が違うため、療育の現場では数字ではなく図形やイラストを使うそうだ。
私はその療育の方法と同じで、複数枚の角度の違う写真を使ったからこそ克服できたと言える。

育児のほとんどは「子による」

 最後に、発達特性とは直接関係はないが「子による」と感じることの多さもとても実感している。こんなに赤ちゃんによって個人差があるとは知らなかった。私より1ヶ月遅く出産した友達は、赤ちゃんをベビーカーに乗せてよく外食をしている様子をSNSに投稿している。私は産後、まだ赤ちゃん連れで外食をしたことがない。

 ベビーカーでお散歩の最中、角打ちもできるワインショップに寄って父親への誕生日プレゼントを買った際、軽く1杯飲んで行こうと思っていた。ところが、店内に入ると息子がグズり出し、父親へのプレゼントだけ買ってそそくさと店を後にした。

 赤ちゃん連れで頻繁に外食できる友人はどんな手を使っているのだろうと思い、LINEで聞いてみると、「基本的に泣き続けることがない。ミルクを飲みたいときにサインとして少しグズるだけ。ただ、これがいつまで続くかわからないから期間限定のスペシャルボーナスタイムと思っている」とのことだった。

 うちの子も激しくは泣かないが、普通の外食にはかなり勇気がいるため来週ママ友とランチをするのも、個室とベビールームやミルク用のお湯の提供のあるお子様連れ歓迎のカフェだ。ここまでしっかりした環境でないと外食は厳しい。

 また、その友達は地方在住だ。
対して私は新宿まで電車で1駅のかなり都心に住んでいる。家賃も高いため近所の飲食店はどこも狭く、「店内は狭いためベビーカーお断り」という張り紙のある店もある(そのような店はテイクアウトできることが多い)。

 子の性質と、住んでいる地域によって子育ての仕方はかなり変わってくるのだ。

「私に合う育児」に取り組んでいきたい

37歳で想定外の妊娠→現在、0歳育児中。「焦ることも多いけど…」発達障害の私がたどり着いた“苦手の攻略法”
離乳食をスタート
 最近、離乳食をスタートさせた。産後ケアで助産師さんに、ほかのお母さんと赤ちゃんの離乳食の様子を見せてもらった際、その赤ちゃんは「もっとちょうだい!」と言っているかのように手でバンバンお母さんの膝を叩いて催促していた。対して息子は10倍粥を口に入れてもまずそうな顔しかしない。

 一旦休んでまた翌週仕切り直して再スタートしようかと思ったが、調べると初日においしくなさそうな顔をしていても4~5日目から変わるとのことだった。たしかに、まずそうな顔をしているがきちんと飲み込んでいて吐き出すことはない。

 動画を撮っていたため母親にも見せたが「大丈夫そうだね」と言われたので、そのまま進めて現在3日目だ。

 育児をしているとSNSでほかの赤ちゃんやお母さんと比べて焦ってしまうことも多い。でも、私は自分の発達特性を自分なりの工夫でカバーしつつ、私に合う育児に取り組んでいきたい。

<文/姫野桂>

【姫野桂】
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei
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