使えるものは使いながらも、いたって冷静沈着に出世コースを進む新人俳優がいる。第37回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでフォトジェニック賞を受賞した谷原七音である。


 同コンテスト開催時から「谷原」姓に注目が集まり、父が谷原章介であることは知られていた。

 そんな谷原七音にとって、本格的な顔見世興行となるドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』(フジテレビ系、毎週火曜よる9時放送)では、どんな演技力を発揮しているのか? “イケメン研究家”加賀谷健が解説する。

着実な出世コースを進む谷原七音

「この街のことは隅々まで知ってんだよ」と誇らしげな主人公・今泉麟太郎(福士蒼汰)は、犯人との逃走劇を制し、これで自分も警視庁捜査一課の花形刑事かとぬか喜びしていた。が、異動先は広報課だった。刑事らしい(と想像する)職務はもちろんない。

 麟太郎の上司・下地和哉(正名僕蔵)によると、広報課長ポストは「幹部の登竜門」らしい。ここは、エリート警官にとってはむしろ出世街道の通過点。かたや一般的な警官にとっては、ほとんど島流し的な人事異動なのか(?)……。

 麟太郎はこれから一緒に働く同僚たちを紹介される。確かにキャラが強めのメンバーが揃っている。その中で若手の玉田宏樹は、やる気があるのかないのか、掴みどころのない表情を浮かべて、頼りない。

 が、本作『東京P.D. 警視庁広報2係』(以下、『東京P.D.』)この役を演じる谷原七音にとっては、(俳優として)着実に出世コースを進んでいることになるのだが。

本格的な顔見世興行として

 本作で谷原が演じる玉田役は、基本的に与えられた業務を流れ作業的にこなしていける、情報処理能力に長けた若手だ。自分の気が乗らないことにはそれなりの対応しかしないし、なるべくコスパよく働きたいタイプ。


 今時の若者像を単純に象徴するようなキャラクターでもあるが、正義感が強く熱血キャラな麟太郎に心が動かされたりもする。第2話で警視庁上層部による隠蔽を阻止しようとする麟太郎の単独行動に対して、玉田が業務外にもかかわらずサポートしようと率先して動く。

 結果的に隠蔽の実態を明るみに出せなかった麟太郎が、やけになって記者たちに暴露しようとする同話クライマックスでは、「ダメっすよ」と踏みとどまらせようとする。画面上では福士蒼汰の後ろでピントがボケていたが、その声は静かでも力強かった。

 こうした職場内の若手キャラは、谷原のような新人俳優にとっては本格的な顔見世興行として、等身大の魅力が伝わりやすい。

使えるものは使う貪欲な姿勢

 本作の公式Instagram上では第2話放送後に、福士蒼汰と谷原のツーショットを投稿していた(1月26日)。キャプションには「第2話の今泉と玉田のやりとりにもぜひ注目してください」とあり、トップ俳優との掛け合いで効果的な顔見世を成功させたといえる。

 福士と同じ研音所属後初の出演ドラマで、事実上の俳優デビュー作『奪い愛、真夏』(テレビ朝日系、2025年)では、ドロドロ不倫劇の中で的確なフレームアウト、フレームインを反復することで画面に身を任せ、うまく演技に強弱をつけていた。

 同作出演時、研音ホームページ上の日記には「台本に自分の名前が載っているのをみたときは、言葉で表現できないほどの喜びと何より純粋な嬉しさがありました」と初々しい気持ちを綴っている。

 初々しいが野心的でもある。谷原の俳優デビューを切り開いたのは第37回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト出場(2024年)だった。出場理由を「客観的にみた自分の注目度だけが一人歩きしてしまうと感じ」と語っていた。


「注目度」とは彼の父が谷原章介(実父はいしだ壱成)である出自のことだが、その上で「生まれも僕はアイデンティティーだと思う」だとはっきり言語化している。

 谷原七音には使えるものは使う貪欲な姿勢があり、なおかつ実力で勝負する潔さもあわせ持つ。それでいて『東京P.D.』での顔見世興行的な出演は冷静に物にしている。

 今後、出世コースを邁進するだろう谷原が頭角を現すことは容易に想像できる。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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