新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(45歳)。

日本人が持つ、世界的に見て“極めて希少な特権”とは?ハワイ移...の画像はこちら >>
 40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。

 第35回となる今回は、旅行会社に勤める大木さんが、「旅券の日」をきっかけに日本のパスポートについて深掘りします。(以下、大木さんの寄稿)

2月20日は「旅券の日」

 みなさん、2月20日が何の日かご存じでしょうか。

 あまり知られていませんが、この日は「旅券の日」ーーつまり「パスポートの日」です。

 2026年の「ヘンリーパスポートインデックス」によると、日本のパスポートは世界第2位の強さを誇ります。現在、日本のパスポートがあれば188の国と地域にビザなしで渡航できると発表されました。

 世界的に見れば、これほど自由度の高いパスポートは、まさに“信用の証し”。日本人であるということ自体が、国際社会から高い信頼を得ているという意味でもあります。

 けれど、その一方で、日本のパスポート保有率はわずか17.5%。およそ6人に1人しかパスポートを持っていない、という現実があります。

 世界が羨むほどの“プラチナチケット”を持ちながら、タンスの肥やしにしている。
あるいは、そもそも手にしてすらいない。

 なぜ私たちは、この「世界最強クラスの信用」を使わずにいるのでしょうか。今日は、そんなお話しをしてみたいと思います。

そもそもパスポートの本質的な価値とは?

日本人が持つ、世界的に見て“極めて希少な特権”とは?ハワイ移住した45歳・元テレ朝アナが解説
※イメージです
 そもそも、パスポートの本質的な価値とは何なのでしょうか。

 私たちがよく知っているのは、「写真付きの身分証明書として使える」という機能かもしれません。けれど、それはあくまで副次的な役割にすぎません。

 パスポートの本来の意味は、日本国政府が外国政府に宛てた“保護要請書”です。実際、券面の裏側にはこう記されています。

「所持人を通路故障なく旅行させ、かつ保護扶助を与えられるよう要請する」

 つまり、日本という国家が各国に対して「この人は日本国民です。どうか安全に通行させ、必要なときは守ってください」と公式にお願いしている文書なのです。

日本のパスポートの当たり前は、世界の当たり前ではない

日本人が持つ、世界的に見て“極めて希少な特権”とは?ハワイ移住した45歳・元テレ朝アナが解説
大木優紀さん
 その一冊を持つだけで、188の国と地域にビザなしで渡航できる。

 これは単なる偶然ではありません。

 先人たちが積み重ねてきた外交努力、経済力、そして何より「日本人は約束を守る」「大きなトラブルを起こさない」という国家への信用の蓄積。その結果として与えられている“見えない信頼”です。


 私たちは、その信用の上に立っています。しかし、この「当たり前」は、世界の当たり前ではありません。

 パスポートの力が弱い「持たざる国」の若者たちは、渡航のたびに高額な手数料を払い、膨大な書類を準備し、国によっては面接を受けなければなりません。それでも、ビザが下りないことは珍しくありません。

 そんな彼らにとって国境は、大きな壁になっている。

 一方で、日本人は188カ国がフリーパスで、国境が自動ドア状態になっている。私たちは「移動の自由」という、世界的に見れば極めて希少な特権を持っているのです。

旅券の日に問われる、日本人の国際化

 そして今年も、2月20日「旅券の日」がやってきます。この日は、外務省から最新の旅券統計が発表される日でもあります。

 これは単なる数字の発表ではなく、日本人の国際化の健康診断のような意味があるんじゃないかと、私は思っています。

 どれだけの人が世界へ目を向けているのか。どの世代が、どれくらい外に出ようとしているのか。その現在地が、数値として可視化される日なのです。


 今年の注目ポイントのひとつは、2025年3月から全国で可能になったスマートフォンでのオンライン新規発行申請。「面倒だから作らない」と言っていた層を、どれだけ動かせたのか。利便性の向上が、実際の行動変容につながったのか。

 その答えが、今回の統計で見えてくるはずです。これにより、パスポート取得のハードルは確実に下がりました。

 そして、コロナ禍以降たびたび指摘されてきた「若者の海外離れ」。この日に世代別の発行数も出るので、若年層の経済状況や内向志向の実態も浮き彫りになるでしょう。世界へ向かう余力があるのか、それとも余裕を失っているのか。

 結果次第では、政治の動きにも影響を与えるはずです。

 実際、2026年7月1日からはパスポート手数料を最大7000円引き下げる案が国会であがっています。現在1万6000円かかる10年用パスポートは、1万円以下になる見込みと報じられています。

 この方針は、年度末の予算成立を待って、正式に具体化される見通しとなっています。


 これは単なる安売りではありません。

 機会の平等化・標準化。経済的な理由で「世界を見る機会」を得られない若者を減らすための、未来への投資だと思っています。

世界最強レベルの信用を、どう使うか

日本人が持つ、世界的に見て“極めて希少な特権”とは?ハワイ移住した45歳・元テレ朝アナが解説
大木優紀さん
 海外旅行は、日本政府の視点で見れば「輸出」ではなく、むしろ「輸入」に近い行為です。

 日本のモノやサービスを売るのではなく、日本人が海外でお金を使う。短期的な経済収支だけを考えれば、優先順位が高い政策とは言いにくいかもしれません。

 それでも、パスポート手数料を最大7000円引き下げるという議論に至っている。

 これは単なる家計支援策ではないはずです。

 日本人が世界を見ることに、国家として意味を見出している。国境を越える経験が、長い目で見れば日本社会の力になる――そう考えているからこその政策ではないでしょうか。

 パスポートという、日本の赤い手帳。

 それは、単なる渡航書類ではありません。
日本という国の信用が凝縮された一冊であり、188の国と地域への扉を静かに開けてくれる鍵でもあります。

「たかがパスポート。されどパスポート。」

 世界が羨むほど強いパスポートを持ちながら、その価値を意識する機会は、実はあまり多くありません。

 2月20日、旅券の日。

 ぜひこの機会に、日本のパスポートが持つ本当の意味を、少しだけ立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。

<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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