木村拓哉が主演を務める大人気シリーズの劇場版『教場 Requiem』が、本日2月20日(金)に公開されました。長岡弘樹の同名小説が原作の『教場』シリーズは、未来の警察官を育成する警察学校が舞台。
右目が義眼の鬼教官・風間公親と、“夢と希望と秘密を抱えた”生徒たちの物語です。

 2020年の年明けにスペシャルドラマ『教場』(フジテレビ系)が放送された際は、その作風が大きな話題となりました。その後、2021年に同じくスペシャルドラマ『教場Ⅱ』、2023年には教場に立つ前の風間公親を描いた連続ドラマ『風間公親-教場0-』も放送されています。

 そして2026年、シリーズ集大成となる映画が2本公開されることになりました。前編『教場 Reunion』はすでにNetflixで配信され、週間TOP10で1位を獲得後も上位をキープするほど話題です(2月14日には地上波でも放送)。そんな『教場』シリーズのヒットの理由を紐解きます。

「脱・キムタク」がもたらした人間味と共感

「何を演じても“キムタク”」はもう古い?『教場』に見る、木村...の画像はこちら >>
 主演・木村拓哉。それだけで作品がヒットする時代ではもうありません。それでも『教場』シリーズ、そして昨年劇場版が公開された『グランメゾン』シリーズは大ヒットを記録しました。どちらも、従来のパブリックイメージを大きく刷新したという共通点があります。

 かつての木村といえば、憧れの職業を次々と演じ「何をやっても完璧」「圧倒的なかっこよさ」といった独自のスタイルを確立することで、スター街道を爆走してきました。その反面、世間から「何を演じても“キムタク”」と揶揄されることも少なくありませんでした。その点『グランメゾン』シリーズは、持ち前の華やかさを活かしつつ、あえて“おじさん”としての悲哀や泥臭さを描くことで共感を集め、物語の強さも相まってヒットしたと考えられます。


「静かな威圧感」と「圧倒的な熱量」が宿る新境地

「何を演じても“キムタク”」はもう古い?『教場』に見る、木村拓哉が“らしさ”を捨てて手にした「もの」とは
画像:株式会社エフエム大阪 プレスリリース
 一方で『教場』シリーズは、そうした従来のイメージを完全に排除することで、俳優としての新境地を切り拓きました。風間公親は、相手にも観る者にも感情の機微を見せない人物です。ここまで内面が読めず、冷酷無比なキャラクターは、過去の出演作を振り返っても極めて異質と言えるでしょう。

 そんな「らしさ」を封印した風間役であっても、やはり木村拓哉という俳優でなければ務まらなかったと感じさせます。まずひとつは、圧倒的な“オーラ”です。風間公親は、常に生徒たち、そして観る者に「緊張感」を与え続ける役どころ。

 それはかつてのキラキラした輝きではなく、相手を寄せ付けない静かな威圧感です。画面全体を支配するほどの巨大な存在感は、絶対的スターとして年齢を重ねてきた今の木村だからこそ出せる、唯一無二の覇気ではないでしょうか。

 そしてもうひとつは、凄まじい“熱量”を感じさせるということです。これまで多くの出演作がヒットしてきた理由は、観る者に物語の熱を届ける力が備わっているからに他なりません。それは、演じている役柄に高い“説得力”を与えているからこそ実現しているのです。

 多くの人が経験したこともない警察学校という閉鎖空間の物語にもかかわらず、その世界観に嘘がない。冷酷なキャラクターでありながら、作品が届けたい情熱が伝わってくる。
これこそが、俳優・木村拓哉の真骨頂ともいえます。

その“オーラ”と“熱量”に触れて、より光る次世代俳優たち

「何を演じても“キムタク”」はもう古い?『教場』に見る、木村拓哉が“らしさ”を捨てて手にした「もの」とは
画像:株式会社エフエム大阪 プレスリリース
 作品の魅力は、もちろん木村だけではありません。生徒を演じる役者たちも大きな輝きを放ちます。特徴的なのは、ある意味では学園ドラマ的作品であるにもかかわらず、若手の登竜門的な意味合いは薄いということです。生徒役に選ばれているのは、若手という枠に収まらない、すでに確かなキャリアを築いた実力派たち。

『教場』では、工藤阿須加、林遣都、大島優子、川口春奈、三浦翔平、西畑大吾(なにわ男子)、富田望生ら。『教場Ⅱ』では濱田岳、上白石萌歌、目黒蓮、福原遥、矢本悠馬、杉野遥亮、戸塚純貴、眞栄田郷敦など。『風間公親-教場0-』にいたっては、赤楚衛二、新垣結衣、北村匠海、白石麻衣、染谷将太――もう主演級です。

 そんな実力を持つ若手たちが、圧倒的存在感を放つ木村拓哉と共演することで、より深みのある演技を見せてくれたり、意外な一面を見せてくれたりすることも本作の魅力です。

 今回の2本の劇場版における生徒役は、佐藤勝利(timelesz)、綱啓永、齊藤京子、金子大地、倉悠貴、井桁弘恵、中村蒼らが名を連ねています。個人的に注目しているのは、現在放送中の大河ドラマ『豊臣兄弟!』で黒田官兵衛役を演じることが決まっている倉悠貴でしょうか。多くの映画やドラマに出演し、朝ドラ『あんぱん』でも注目された彼の実力が、忌憚なく発揮されている予感がします。

一貫して描かれている“人間の業”が観る者を惹きつける

 最後に触れたいのは、『教場』シリーズとしての物語性です。
生徒たちがそれぞれに“秘密”を抱え、適性のない者が風間によって容赦なくふるい落とされていく展開はもちろんですが、何よりの見どころは人間の描き方ではないでしょうか。

 警察官と聞いて、多くの人が抱くのは「揺るぎない正義」の体現者というイメージかもしれません。身も心も削り、市民の平和を守るために尽力する——そんな崇高な使命を背負った姿です。ゆえに、教場の門を叩く生徒たちもまた、そうした潔白な志を持つ人々だと思われがちです。

 しかし、本作が映し出すのは、単なる理想像としての警察官ではありません。描かれているのは、理想を追い求めながらも抗えない、多種多様な“人間の業”そのものです。強さだけでなく、弱さも情けなさも、生徒たちがある種すべてをさらけ出し、丸裸にされていく人間ドラマにこそ、私たちは惹きつけられているのではないでしょうか。

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 劇場版『教場 Requiem』では、第205期生たちが抱える闇や秘密が暴かれるなかで、風間の右目を奪った因縁の相手・十崎波琉(森山未來)との事件に決着がつくと思われます。超豪華な卒業生たちとともに、どんなラストを迎えるのか――見逃せそうにありません。

<文/鈴木まこと>

【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
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