※一部最新話までのネタバレを含みます
東京P.D. 警視庁広報2係
まず、一風変わった刑事ドラマとして筆者が注目しているのが、『東京P.D. 警視庁広報2係』(フジテレビ系、火曜よる9時~)です。主演の福士蒼汰を取り囲むキャストが実に豪華。緒形直人をはじめ、金子ノブアキ、吉川愛、正名僕蔵、竹財輝之助、津田寛治など、「渋めの実力派」が脇を固めている点も見逃せません。
“広報課”が舞台の異色作、重厚なテーマに唸る
毎クール、数多くの刑事ドラマが制作されていますが、本作が特異なのは舞台が“広報課”であること。広報課2係の任務は、記者会見の段取りや警察内部の情報管理、捜査幹部との折衝、さらにはメディアとの情報コントロールなど、一筋縄ではいかない泥臭い交渉がメインです。
本作が新鮮なのは、事件に対して“広報課”の視点を主軸に据えながらも、捜査一課の刑事、報道するメディア、そして事件関係者の視点を交えて描いている点。それぞれの利権や人間模様が複雑に絡み合い、見応えのある社会派ドラマに仕上がっています。
“足で稼ぐ捜査”ではなく、“情報”を武器に事件に向き合う切り口は、これまでの刑事ドラマとは一線を画す面白さと言えるでしょう。
テーマの重厚さも特筆すべき点です。1・2話では現職警察官が起こしたストーカー殺人事件と警察組織による隠ぺい体質が描かれ、3・4話では猟奇殺人と、実名報道の是非を扱いました。
まだ5話が終わったところなので、今からでも追いつけます。サスペンス好きはもちろん、質の高い人間ドラマを求めている方にもぜひチェックしてほしい一作です。
冬のなんかさ、春のなんかね
恋愛の正解探しをしない!人間味のリアリティから目が離せない
本作が賛否を巻き起こしている一番の理由は、主人公・文菜(杉咲花)の共感性が低いことでしょう。優しい彼がいるのに他の男性とホテルに行ったり、自分を想い続ける男友だちに八つ当たりしたり——。正直「憧れる」とも「気持ちが分かる」とも言いにくいヒロインです。
しかし、文菜だけでなく、彼女を取り巻く元カレたちや友人たちまでも、皆それぞれに独自性に富んでいます。クセの強いキャラクターに加え、会話を通じて“正解のない”人間の関係性や心情を丁寧に描く作品だからこそ、観る者によって受け取り方も変わるのでしょう。
それは、タイパ重視の令和の時代とは逆行しているのかもしれません。でも、人間関係に分かりやすい正解はないし、恥ずかしい失敗をすることも、上手くいかないこともある。
それでも試行錯誤しながら、恋をして、好きな人や気になる人と繋がろうとし続ける文菜や元カレたちの姿には、生身の人間味を感じます。
第5話で描かれた大学時代の彼氏・佃武(細田佳央太)との恋も、非常にリアルでした。すごく好きで付き合ったけれど、好きの温度感の違いを感じて不安になり、「もっと好きになってほしかった」と別れを選ぶ。共感はできずとも、そんな風に考えてしまう切ない気持ちは分からなくもありません。
そんなリアルな人間関係の中で、心の機微が繊細に描かれる本作。文菜がどうなるかという結果よりも、「この物語をどう着地させるのか」を最後まで見守りたいと思います。
テミスの不確かな法廷
人間描写と法廷劇のバランスが絶妙
自らの特性を隠しながら裁判官を務めるという難役を、主演・松山ケンイチが高い表現力で魅せている点はもちろん素晴らしい!しかし見どころは、松山の演技だけではありません。ひとつは、安堂清春が抱え続けている葛藤です。人を裁く裁判官という立場から、彼は懸命に“普通”を装っています。物語冒頭、彼は「僕は宇宙人。生まれながらにして、地球人の“普通”が分からない」と語りました。ある意味で、己を偽って生きているということ。しかも、その生き方を提示したのは、他ならぬ安堂の父親だったのです。
これまでの5話を通して、彼は周囲と同じように振舞えないことよりも、自身を“普通”に見せかけていることの方が、ずっと苦しそうに見えます。それでも安堂が、裁判官としてだけでなく、自身の特性と格闘しながら事件関係者と向き合っていく姿が緻密に描かれていて、観る者を惹きつけるのです。
さらに安堂を取り巻く人々も個性豊かで、「“普通”とは何なのか」と考えさせられる、キャラの立った登場人物ばかり。そんな彼らが、安堂の視点をきっかけに真相をあぶり出していく事件の描き方も秀逸です。
物語はいよいよ後半戦。前橋一家殺人事件の再審請求審がはじまります。事件の真相と、安堂が自分自身の特性にどんな「判決」を下すのか。気になって仕方がありません。
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ジャンルは違えど、どの作品も「人間の本質」や「社会のあり方」を独自の視点で切り取った力作ばかり。物語はいよいよ最終盤に向け、さらなる怒涛の展開が予想されます。
皆さんが今、毎週楽しみにハマっている「冬ドラマ」は何ですか?放送終了まで残り約1カ月。お気に入りのドラマを、ぜひ最後まで堪能しましょう!
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
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