今回は、“孫のため”という名目で暴走した義父に振り回されてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

 佐藤美咲さん(仮名・32歳)は、結婚2年目で第一子となる娘を出産しました。
初めて迎える桃の節句は、家族3人でささやかに祝うつもりだったといいます。

「マンション暮らしですし、あまり大きな雛人形は置けないので、ガラスケースに入った小さなものを買おうと夫と話していました」

 限られた空間の中で、無理のない範囲で娘の成長を祝う……それが夫婦の自然な考えでした。ところがその穏やかな計画は、義父からの1本の電話で覆されたそう。

義父が何年もかけて手作りした、七段飾りの雛人形

「毎年必ず飾ってくれよ」義父が娘のために作った“巨大ひな人形...の画像はこちら >>
「初節句は一生に一度だからな。こっちでちゃんと用意しているから」

 有無を言わせぬ口調に違和感はあったものの、「ありがたいことだよね」と自分に言い聞かせていた美咲さん。しかし節句の1週間前に義実家から突然「今から持っていく」と連絡が入りました。

「玄関を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは段ボールがいくつも積み重なった光景で……開けてみたら、義父が何年もかけて手作りしたという七段飾りの雛人形だったんです」

 狭いマンションの玄関にそびえる大量の箱。その中身は、市販品とは比較にならない存在感を放つ“超大作”だったそう。

 義父は胸を張り、「木の台座も屏風も全部俺の手作りだ。顔も一体一体描いたんだぞ。市販の雛人形なんかとは気合いが違う」と誇らしげに語りました。

問題はその“大きさ”で……

 確かに手間も時間もかかっているのでしょう。ですが美咲さんの正直な感想はただひとつ“大きすぎる”でした。

「毎年必ず飾ってくれよ」義父が娘のために作った“巨大ひな人形”が迷惑すぎる! 送り返した結果…どうなった?
画像はイメージです(以下同)
「リビングの半分を占領してしまって、ベビーベッドの位置まで動かさなきゃいけなくなりました」

 祝うための雛人形が生活空間を侵食してしまい、主役であるはずの赤ちゃんの居場所が、作品のために押しやられるという本末転倒な状況になってしまったそう。


 さらに追い打ちをかけたのは、その後の義父の態度です。

「これは俺の作品だからな。毎年必ず飾ってくれよ。湿気に弱いから、収納場所もちゃんと考えろ」

 飾り方から保管方法まで細かく指示を出し、少しでも扱いに迷う素振りを見せると不機嫌になる。収納場所を相談すれば「大事なものなんだから、物置に押し込むなんてあり得ない」と一蹴されてしまったそう。

 それは贈り物というより“展示品の管理”を押し付けられたような感覚でした。

手作り雛人形へのモヤモヤは尽きず

「夫に相談しても『せっかく親父が作ってくれたんだから気持ちを汲んであげてよ』と、私の味方にはなってくれませんでしたね」

 しかも、その七段飾りは決して完成度が高いとはいえませんでした。髪はボサボサで目の大きさは左右非対称、人形ごとにサイズも微妙に違ったそう。

「正直この雛人形では娘が可哀想だし、どうしても美しい雛人形を飾ってあげたいと思ってしまったんですよね」

 後日、美咲さんは勇気を出して切り出しました。

「来年はもう少しコンパクトにできたらと思うので、ガラスケースに入ったものを購入しようかと……」

 すると義父は露骨に顔を曇らせ、「せっかくの手作りを邪魔もの扱いするのか」と怒り出してしまいました。

「“孫のため”と言いながらも、傷ついているのは自分のプライドのように見えました。その時に、この人は結局自分の満足のために孫を使っているんだなと気づいたんです」

「毎年必ず飾ってくれよ」義父が娘のために作った“巨大ひな人形”が迷惑すぎる! 送り返した結果…どうなった?
義父の気になる言動
 義父は自作の雛人形をうっとりと眺め、「本当によくできているだろう~」と何度も褒め言葉を促します。願っているのは孫の成長よりも、自分の作品への高評価のようでした。


七段飾りを義実家へ返却した結果

 悩んだ末、美咲さんは七段飾りを義実家へ返却。義父との関係はぎくしゃくしてしまいましたが、自宅にはようやく自分達で選んだ雛人形が飾られたことに満足しているそう。

「娘の笑顔を見ながら、ようやくホッとすることができました。義父の過剰な自己満足と承認欲求から逃れてやっと“家族の行事”を取り戻すことができた気がしたんですよね」と微笑む美咲さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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