新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(45歳)。

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 40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。

 第36回となる今回は、大木さんがハワイにて日本の高校生の修学旅行を添乗した体験を元に「苦労キャンセル界隈」について深掘りしていきます。(以下、大木さんの寄稿)

「コスパ」ならぬ「エネパ」とは?

 みなさんは、「エネパ」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

「タイパ」「コスパ」に次ぐ新しい価値観として注目されており、かけたエネルギーに対してどれだけリターンがあるかを重視する考え方のことです。

 2026年の日経トレンディがヒット予測キーワードに挙げた「苦労キャンセル界隈」と呼ばれる人たちも、まさにこのエネパを軸に動いています。

 彼らの親世代にも近い私は「若いうちの苦労は買ってでもしろ」と言われて育ちました。しかし今は、コストをかけてでも無駄な苦労をキャンセルし、効率化するのが主流になりつつあります。

 先日、日本の高校生のハワイ修学旅行に添乗する機会があり、私はこの世代の「苦労キャンセル」と「エネパ思考」のリアルな姿を目の当たりにしました。

 彼らと過ごした数日間で見えた「苦労キャンセル界隈のリアル」について、書いてみたいと思います。

デジタルと事前準備で「失敗」を徹底キャンセル

修学旅行でハワイに来た日本人高校生たちに“戸惑ってしまった”ワケ。ハワイ移住した45歳・元テレ朝アナが明かす
大木優紀さん
 いまの高校生は、海外でもスマートフォンを当たり前のように使いこなします。

 彼らにとって、海外だからといって特別な苦労はありません。Googleマップや翻訳アプリを駆使し、迷うことなく涼しい顔で集合場所に現れます。
スマホは彼らの「苦労キャンセル」に欠かせない標準装備です。

 特に私たちの世代と決定的に違うと感じたのは、「買い物の仕方」でした。かつての修学旅行といえば、お土産屋さんをぐるぐる回り、「どれにしよう」と延々と迷うのが“あるある”でした。

 しかし今の高校生は、事前にSNSで徹底的にリサーチし、「誰に・何を・いくらで買うか」を完全に決めてから現地入りします。

 迷いなく目的地へ行き、お目当てのものを手にする姿は、買い物というより、すでに知っている正解を「回収」する作業のようでした。

 旅先で道に迷ったり、イマイチなものを買ってしまったり。かつては「旅の醍醐味」と呼ばれた紆余曲折や失敗リスクすらも、彼らは見事にキャンセルしているのです。

無駄に消耗しない。「ここぞ」で輝く高度なエネパ思考

 そうした無駄のない行動を見ていると、現代の若者は「脱エネルギーでドライだ」と誤解されがちです。

 しかし、間近で見ていて印象が変わりました。決してエネルギーがないわけではなく、使い方が非常に巧みなのです。

 彼らは、移動や時差で疲れる旅行中、意図的にエネルギーを“オフ”にする時間を作ります。
無理にはしゃいだり、テンションを上げ続けたりはしません。初日の到着時などは、想像よりもおとなしくて、ハワイで迎え入れた私は想定外のテンションにやや戸惑いました。

 しかし、写真を撮る瞬間や仲間と盛り上がるアクティビティなど「今だ!」という場面では、一気にスイッチを入れ、エネルギーを最大化させます。

 さらに、彼らは自己分析ができており、自分の得意なフィールドをよく理解しています。ある子は趣味のカメラをを構えた瞬間や、またある子は習っているフラダンスを披露する瞬間など、自分の見せ場に入ると一瞬で眩しく輝くのです。

 無駄な消耗を避けるのは、自分の個性を際立たせる瞬間にエネルギーを集中投下するための、高度な自己プロデュースなのだと気づかされました。

 彼らにとってハワイという特別な場所すらも、自分を表現するための舞台装置としてスマートに使われているようでした。

旅の恥はかき捨てない。スマートな新しい生き方

修学旅行でハワイに来た日本人高校生たちに“戸惑ってしまった”ワケ。ハワイ移住した45歳・元テレ朝アナが明かす
大木優紀さん
 最初は「ちゃんと楽しめているのだろうか」と心配した親世代の私ですが、数日間を共にして、彼らは決して冷めているわけではないとわかりました。

 昔は、予定外のトラブルや苦労こそが成長につながると考えられてきました。「旅の恥はかき捨て」というように、慣れない土地で恥をかき、失敗を笑い飛ばすのがかつての旅でした。

 しかし、エネパを極め、苦労をキャンセルする若者たちは、入念な準備と賢いエネルギー管理によって「旅でも恥をかかない」のです。


 高度な情報社会の中で生まれ育った彼らは、「情報弱者」にならない訓練を生まれながらにされていた……ということなのかもしれません。

 努力の形も、苦労の定義も、時代とともに変わっていく。

 それもまた、今どきの新しい旅の形であり、新しい時代の眩しい生き方なのだと感じた修学旅行でした。

<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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