40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
第37回は、旅行会社勤務の大木さんが「NEWT」の最新調査をもとに、学生たちの卒業旅行事情を解説します。(以下、大木さんの寄稿)
卒業旅行シーズンの到来と若者のリアルな旅行事情
3月に入り、いよいよ卒業シーズン。この春、旅立ちを迎える人もいるのではないでしょうか。みなさんは、卒業旅行といえばどこを思い出しますか?
小学校・中学校・高校には修学旅行の記憶がありますが、大学の卒業旅行はまた少し特別。社会に出る直前、自分でアルバイトしてお金を貯めたり、親に“出世払い”を約束して援助してもらったりしながら、友人たちと計画したあの旅は、今も鮮明に覚えている人も多いはずです。
ここ数年は円安や物価高の影響もあり、卒業旅行といえば「安・近・短」。
つまり、安くて、近くて、短期間で行ける旅が主流でした。国内旅行に加え、韓国や台湾といった近場の海外が定番に。さらに、物価の安さを背景にベトナムやタイなども人気を集めていました。
ところが2026年、旅行アプリ「NEWT」が卒業旅行シーズンに向けて実施した学生(高校生・大学生・専門学生)対象の最新調査によると、その流れに変化が起きていることがわかりました。
いま、学生たちはどこへ向かっているのか――。今回は、最新データをもとに“今どき卒業旅行”のリアルを深掘りします。
ヨーロッパ旅行への急激な関心の高まり
実際に予算を聞いたところ、6割以上が「35万円以上」を想定。さらに「50万円以上」と回答した学生も2割を超えていました。
学生時代の50万円といえば、決して小さな金額ではありません。実際にどうやってお金を用意したかというと、大部分は「親の援助」ではありませんでした。
今の学生たちは、ただ“旅行費用を払う”のではありません。
かつては、親に援助してもらったり、余ったお金でなんとなく行くという、どこか受動的な側面もあったかもしれません。けれど今は違います。
「この旅にはこれだけ必要。ならば、今月はこのシフトを増やそう」
そんなふうに逆算しながらセルフマネジメントをしている姿が、データから浮かび上がってきました。
旅行に出発する前から、すでに自立のプロセスは始まっている。高いから無理、と諦めるのではなく、高い壁の先にある価値を見据えて行動する。この“自己投資マインド”こそが、2026年の若者たちの強さなのかもしれません。
今の若者にとってヨーロッパ旅行とはただの観光地巡りではない。自分で資金を作って、スマホやネットで自分で旅を探していく。
その達成感があるからこそ、現地にたどり着いたときしっかり吸収しようと思うし、35万円以上の価値となってくると考えるようなんです。
「時間を使ってお金を節約する」ーー学生たちのメリハリ消費
「どこをコストカットしていますか」という質問に対して最も多かったのは、移動費・交通費(41.1%)、そして宿泊費(36.1%)。
たとえば、直行便は高いからと、時間はかかっても乗り継ぎ便を選ぶ。豪華なホテルよりも、価格や立地を優先し、「寝られれば十分」とグレードを下げる。費用を抑える工夫は、航空券と宿選びに集中しているのです。
私も大学時代、イタリアに行ったとき、移動費を削るために、台湾で乗り継いで、途中アブダビで一回飛行機を乗り継ぎ、ローマへ向かうという便を使いました。移動費は抑えられたものの24時間近くかかってしまい、乗り継ぎもなかなか時間がかかり、どこに向かっているのかわからなくなってしまうような感覚になったことを覚えています(笑)。
しかし、学生時代は“時間”という資源がある。時間を使ってお金を節約する――この発想は、ある意味とても合理的です。
一方で、何にお金をかけているのか。
ホテル代を抑えた分で、本場イタリアで最高のトリュフパスタを味わう。バルセロナでは、憧れのサグラダ・ファミリアの内部まで見学する。単なる節約ではなく、「どこに価値を置くか」の取捨選択が明確なのです。
消費から投資へ。若者たちの新しい旅の価値観
かつては、ヨーロッパ旅行といえばブランドバッグを買うことがひとつのステータスだった時代もありました。しかし為替の影響もあり、今は“モノ”にお金をかけたいという声は少数派。代わりに選ばれているのは、今しかできない“一生ものの体験”です。
たとえば、ルーヴル美術館で「モナ・リザ」を目の前にしたときの空気感。現地の学生とパブで語り合う夜。
SNSを開けば、エッフェル塔も、タイムズスクエアも、画面越しにいくらでも見ることができる時代です。けれど、実際にその場に立ち、五感で感じる体験は、スクリーン越しでは代替できない。
情報があふれ、疑似体験が容易になったからこそ、「本物」に触れる価値がむしろ高まっている。コロナ禍で移動が制限される時間を経験した世代だからこそ、「行けること」「体験できること」の価値を、私たち以上に実感しているのかもしれません。
若いうちから投資を始めるというマネーリテラシーが広がるなかで、資産運用だけでなく“自己投資”としてのリアルな体験にも価値を見いだしている。
安く済ませることが目的の旅ではない。最高に濃い時間を過ごすために、不要な贅沢を削ぎ落とす。この大げさにいうと、引き算の美学みたいなものを、今の学生たちから感じました。
モノよりも体験へ。消費よりも投資へ。
限られたお金をどう使うか。今回の調査から見えてきたのは、単なる旅行トレンドの変化ではなく、若者たちの価値観の変化そのものでした。
<文/大木優紀>
【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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