15年前、宮城県利府町で東日本大震災の被災を経験した漫画家・アベナオミさん。コミックエッセイ『今日、地震がおきたら』(KADOKAWA)では、「在宅避難(自宅で生活を継続する避難方法)」をしていたといいます。


 断水や停電が続く中、外出もままならない在宅避難生活では、情報が入ってこないことへの恐怖も大きかったのだそう。給水所や人の集まる場所での口コミが、重要な情報源になっていました。

 子育て世帯ならではの備えのポイントや、家の中のセーフティスペースの作り方など、すぐに実践できる防災のヒントを、アベさんに教えてもらいました。

※東日本大震災の被災体験を描いた漫画を紹介しています。地震や津波を想起する文章・イラストがありますのであらかじめご留意ください

※本記事は全3回のうちの3本目です

「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がな...の画像はこちら >>


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)


情報が入らない恐怖、「宮城県だけの地震だと思っていた」

――震災後の数日は、電気が止まってテレビや携帯電話が使えず、情報が入らなかったそうですね。

アベナオミさん(以下、アベ):自分たちが何も知らないことへの恐怖がすごかったです。ラジオで「津波が押し寄せました」と聞いても、どんな状況かわからない。そのため当日の夜は、宮城県だけの地震だと思っていました。

在宅避難だったため、余計に情報が入りづらかったのかもしれません。治安の悪化などさまざまな不安があったので極力外出も控えていました。そういう状況の人が多かったのか、給水所など人の集まる場所では、知らない人同士で話し始めることがよくありました。「あそこまで電気が復旧したらしい」とか「物資を配っているのを見たよ」と、周りの会話から情報が入ってくるので、「まるでラジオみたい」と感じていました。

――災害時には、やはり地域のコミュニティーは大切なのでしょうか。


アベ:私自身は、地域の方との交流ができる方はしてもいいと思いますが、ストレスに感じる方は無理しなくてもいいと思います。今の時代は、個人情報を明かすことでいろいろなリスクもありますから。実際、人が集まるところではいいこともありましたが、大人が本気で喧嘩をする場面も見ました……。順番を抜かしたとか、些細なことから揉め事が起こるくらい、皆ピリピリしているしストレスフルな状況がありました。

交流が苦手な方は、自分で自分の命を守るため、自宅の備えをしっかりと固めていただければいいと思います。

備えるべきは「水・火・災害用トイレ」

「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)
――子育て世帯が、災害時に特に備えたほうがいいことはありますか?

アベ:乳幼児だったら、お出かけする時に携帯する、ミルクやおむつ、お尻拭きなどの基本のお世話セットの延長線上で備えていただくといいと思います。

トイレトレーニング中の子も、災害時には排泄がうまくできなくなることがあるので、おむつは余分にあった方がいいかもしれません。また、ある程度大きい子だと「暇な時間」が敵になるので、風船なんかがあると意外と楽しく遊べたりします。

小中学生になると、ストレスを感じていても我慢をする子が多いので、メンタルケアが大切になってくると思います。お友達との連絡手段を確保してあげたり、ゲームをするための充電器なども大切な準備だと思います。

――防災の備えのポイントを教えてください。

アベ:私がおすすめする防災グッズは、水、火、災害用トイレの3つだけです。

日本列島は縦に長いので、救援物資が届くのに最低でも3日間はかかると思います。
行政機関も3日はパニック状態だと思うので、その間は自宅でしのげるよう準備してください。余力があれば、1週間、1日1~2食食べられる量があるといいですね。

食料は「ローリングストック法」で

――災害用の食料は、どんなものがあるといいのでしょうか。

アベ:食料というと、非常食を思い浮かべる方が多いと思うのですが、災害時はまず冷蔵庫に入っている食料から食べてください。電気が止まることが多いので、まずは肉や野菜などの足の早いものから食べます。そのあと、冷凍庫の中のものを冷蔵庫に移すと保冷になります。溶けてきた冷凍庫の食品を食べ、最後に何もなくなったら非常食を食べるという順番です。非常食も美味しいものが多くなっていますが、やはり家にある食材を調理するための備えをしておくことが重要だと思います。

お米は、だいたいのお家が買い置きをしていると思うので、水と火さえあれば食事が作れます。災害時に備えて、一度は鍋でお米を炊く練習をしておくと心強いと思います。飲み水は飲み切れるサイズの500mlのペットボトルを買っておくのがおすすめ。買い置きが大変な場合は、日頃からウォーターサーバーを導入しておくと備えになります。

火は、カセットコンロとガスボンベを備蓄しておくといいのですが、どうしても置き場所がないという方は、小さめのチーズフォンデュ鍋でもOKです。
キャンドルなどで加熱すれば、簡単な調理が可能です。

――食料の備蓄のコツがあれば教えてください。

アベ:おすすめなのが「ローリングストック法」です。特別な非常食を別に用意するのではなく、普段から食材や加工品を少し多めに買い置きしておき、食べた分を補充していく方法です。

災害時も普段と同じ食事ができるようそなえられますし、非常食のように賞味期限切れになる心配も減ります。特にお子さんがいる家庭では、アレルギーや好き嫌いの問題もあるので食べ慣れているものをストックしておくことがとても大切だと思います。

命を守る「セーフティスペース」の作り方

「宮城県だけの地震だと思っていた」大震災で痛感した“情報がないことへの恐怖”。体験した漫画家に聞く<漫画>
『今日、地震がおきたら』(著/アベナオミ・刊/KADOKAWA)
――それ以外にも、災害の備えで重要なことはありますか?

アベ:「セーフティスペース」として、倒れてくる家具や飛散するガラスのない場所を家の中に2か所は確保していただけるといいと思います。うちの場合は、震災の時はたまたま寝室がセーフティスペースになっていたので、子どもを安全に過ごさせることができました。

――セーフティスペースを作る時のポイントはありますか?

アベ:まず1か所は、寝室がおすすめです。全身鏡を割れない素材のものにしたり、高さのある家具は布団の上に倒れない向きに変えていただくだけでもいいです。お布団の上だけはセーフティスペースにすることが大事だと思います。

もう1か所はリビングです。
よく、地震が起きたらテーブルの下に隠れるといいますが、震度7くらいの規模だと、とても動けません。そのため、リビングで家族がいつも座っているソファの上がセーフティスペースになっているといいと思います。我が家では、子どもたちに「地震が起きたらソファの上でクッションで頭を守る」と教えています。

――照明が割れたりするのが怖いのですが、対策はありますか?

アベ:ガラス製のペンダントライトなどは落ちて割れやすいと思います。そのため、落ちないようにサブでチェーンを付けているお宅もあります。ただ、照明に限らず防災のために選ぶとインテリアがつまらなくなってしまいます。割れにくい素材を選んだり、置き場所を工夫したりしながら、好みと防災の妥協点を探っていただければと思います。

――この本を通じて、読者に伝えたいメッセージはありますか。

アベ:震災から15年が経ちますが、日本に住んでいる限り地震はいつ起きるかわかりません。防災は、つい後回しになってしまいがちですが、日頃意識してストックを増やしたりしておくと、災害時以外にも急に子どもが熱を出したりした時などに役立つこともあるんです。

自分と家族を守る備えをしておくことは、巡り巡って知らない誰かを助けることにもつながっていきます。まずは、できそうなことから少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。


<取材・文/都田ミツコ>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
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