今年最も話題を呼んだ受賞作の一つが韓流アニメ『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』で、長編アニメ映画賞と歌曲賞の二冠に輝いた。
感動的なスピーチの直後に大ブーイングが……
2025年6月に配信がスタートした『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(以下、ケデハン)は、架空の人気K‑POPグループ「HUNTR/X」が、音楽の力で悪魔の侵略を阻止する物語。K-POPの華やかなステージのシーンと、ド派手なアクションバトルが融合した映像美が世界を魅了し、ネットフリックス史上最多視聴作品となった。また劇中でHUNTR/Xが歌っている曲『Golden』は世界的ヒットとなり、グラミー賞を受賞。さらに今年のアカデミー賞でK-POP初となる歌曲賞を受賞した。
この曲を手掛け、歌唱も担当した韓国系アメリカ人の歌手イジェは涙ながらにこう語った。
「子供のころは、K-POPのファンだということをからかわれていましたが、今はみんなが、韓国語も入っている私たちの歌を歌ってくれるのです。とても誇りに思います」
「この曲は成功ではなく、レジリエンス(逆境から立ち直る力)についての歌なのです」
韓国出身でアメリカ育ちのイジェ。韓国の芸能事務所で練習生として長くつらい下積み生活を経験したが、デビューには至らず。そんな彼女にとって、歌手・シンガーソングライターとしての才能が世界で認められ、これまでの苦労が報われた瞬間だった。
ところが、その直後、授賞式会場が大ブーイングに包まれる事態に……。
「歴史的な受賞をしている最中にステージから追い出された」
イジェに続いてマイクの前に立ったのは、共同制作者の作曲家イ・ユハン。彼がメモを取り出した瞬間、なんとオーケストラが退場を促す音楽を大音量で流し始めた。他の受賞者には数分間ものスピーチ時間が与えられていたにもかかわらず、『Golden』制作チームのスピーチは2分足らずで強制終了され、CMへ切り替わってしまった。
米芸能メディア『Deadline』は「チームの他の受賞者たちも胸を打つスピーチを用意していたかもしれないが、観客はそれを知ることはない。彼らはこの部門において歴史的な受賞をしている最中にもかかわらず、無情にも演奏でスピーチを打ち切られ、ステージから追い出されてしまったからだ」とアカデミー賞の対応を酷評。
米芸能ニュースサイト『Vulture』も「この夜、オーケストラの演奏が始まったことはたびたびあったが、『Golden』チームの時ほどひどい瞬間はなかった。正直、悪意さえ感じられた」と断じた。
その他『CNN』『Forbes』『Rolling Stone』『Billboard』といった欧米メディアも、単なる「時間切れ」ではなく、非常に重大な出来事として報道。過去の受賞者の長いスピーチを例に出しながら「あからさまな二重基準(ダブルスタンダード)」と指摘する記事や、「K-POPの影響力を軽視すべきではない。世界中のファンを敵に回すことになる」、「世界は彼らのメッセージを聞く機会を奪われた」といった厳しい論調が相次いだ。
受賞者によってコロコロ変わる“45秒間”ルール
批判が高まるなか、今回のアカデミー賞授賞式の中継を統括したウォルト・ディズニー・テレビジョンの幹部ロブ・ミルズ執行副社長のコメントが3月16日(現地時間)に公開された。米業界紙『バラエティ』のインタビューに応じたミルズ氏は、問題となっている受賞スピーチの打ち切りについて次のように語った。「オスカーを受賞してステージに上がるのは、1人の場合もあれば、5、6人になる場合もあります。するとすぐに、彼らに割り当てられた時間が足りなくなってしまいます。『スピーチをする人を1人に指定してください』と決めるべきなのか。
「あらゆる可能性を検討し、最も洗練された解決策を見いだそうとしています。というのも、せっかくの晴れ舞台なのに誰かの話を途中で遮るのは心苦しいことだからです」
「『スピーチには指定の時間がある』と事前に伝えてはいますが、なかなか難しい問題です。何が最善の策かはまだ分かりませんが、時間をかけてじっくりと、真剣に向き合わなければならない課題であることは間違いありません」
実はアカデミー賞では、放送時間をコントロールするために、受賞者がスピーチを終えるまでの時間を“45秒間”と定めているそう。時間を過ぎると、オーケストラが退場を促す音楽を流し始め、最終的にはマイクの音量が絞られるという。
ただ実際には「空気感」や「重要度」によって運用が変わる……という暗黙の了解があり、主要部門や大物俳優の受賞スピーチは、1分~2分を超えても許容されているそうだ。2025年の第97回アカデミー賞授賞式では、主演男優賞に輝いたエイドリアン・ブロディが5分40秒という史上最長のスピーチを記録した。
ちなみに、ケデハンは長編アニメ映画賞も獲得しているが、同賞の受賞スピーチではオーケストラの音楽が一瞬流れたものの、なんとか最後まで話し終えることができた。
憎むよう教えられてきた相手を信頼し、愛するようになること
降壇後、イジェをはじめマーク・ソネンブリック、テディ・パーク、イ・ユハンら『Golden』の制作チームはバックステージでスピーチの続きを行った。
スピーチを打ち切られてしまったイ・ユハンは「すべての家族、アイドルのメンバー、そしてテディ・パークに感謝します。信じられないほどの名誉です」とあらためてコメントし、関係者に感謝をあらわした。
また米ソングライターのソネンブリックは、こんな思いを語っている。
「この映画のテーマの一部は、憎むよう教えられてきた相手を信頼し、愛するようになることです。
自分一人で上を目指すのではなく、仲間と共に高みを目指すことをテーマに描いたケデハン。史上空前の大ヒットを受けて、続編の制作も発表されている。
<文/BANG SHOWBIZ、女子SPA!編集部>
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