マーケッターで人気評論家の牛窪恵さんが、自身の阪神タイガース愛も込めた新著『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう』(集英社)を出版しました。

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 プロ野球チームの「推し活」に日々没頭する牛窪さんが、専門とするマーケティングや行動経済学の知見もたよりに導き出したのは、誰もが共感する普遍的な「幸福論」です。


 本稿では牛窪さんのタイガース愛、そして、生活に浸透する「推し活」の日常について聞きました。

Facebookでのタイガース熱がきっかけに

なぜ阪神ファンはあんなに幸せそうなのか?元巨人ファン女性が分析する“意外に深かった結論”
牛窪さん
――新著執筆のきっかけは牛窪さんのFacebookでタイガース関連の投稿を見た、著述家であり編集者の石黒謙吾さんだったそうですね。

牛窪恵(以下、牛窪) はい。甲子園(阪神甲子園球場)で観戦した記録を、写真付きでよく投稿しているんです。本書のきっかけとなったのは2025年7月頃の投稿で、私の投稿を見た石黒さんにとってどうやらビビッと来たそうなんです。タイガース愛がハンパでない私としては、最初の連絡をいただいてから「ありがとうございます! 阪神ファンの本が書きたいと思っているんです!」と即答しました。

――内容としては、牛窪さんの芯からほとばしるタイガース愛に、マーケッターとしての知見をかけあわせながら幸福論を説く異色のビジネス書といったイメージでした。

牛窪 実は、過去にもタイガースの本を出したくて、出版社にアプローチしたことはあったんです。でも「阪神ファンだけにしか読まれない本はちょっと……」と難色を示されてしまって。石黒さんとの相談でも当初、同じことを言われました。その後「阪神ファンだけをターゲットにするのではなく、阪神ファンがなぜ『幸福感』を強く感じやすいのか、マーケティングにも関わる研究論文や調査結果を基に探っていく本にするのはどうか」とアドバイスをいただいて、ようやく企画書の方向性がかたまり、出版が決まりました。

バッグも手作りするほどのタイガース愛

なぜ阪神ファンはあんなに幸せそうなのか?元巨人ファン女性が分析する“意外に深かった結論”
阪神グッズを持ち運ぶための自作のバッグ
――牛窪さん自身は幼少期の巨人ファンにはじまり、一時は他球団にも心を奪われながら、20年来の阪神ファンになったそうですね。

牛窪 忘れもしない2003年9月、星野仙一監督(当時)率いるタイガースが18年ぶりのリーグ優勝を決めて以来のファンです。試合観戦はもちろん、生活にもタイガースがなじんでいますね。
日常的に使っているコーヒーカップも洗面所のタオルもタイガースですし、現在の「推し」である森下翔太選手のタオルをはじめ、歴代の推しタオルやユニフォームもかなりの枚数を持っています。

タイガースによる女性ファン限定イベント「TORACO DAY」専用の古いユニフォームなどを使って、グッズを持ち運ぶためのバッグを自作しているんです。マスコットのつば九郎をあしらい、かわいいデザインが目立つヤクルトのバッグと違い、阪神のバッグはコテコテだったり「男目線」だったりするデザインが多いので、手作りに注力するようになりました(笑)。

なぜ阪神ファンはあんなに幸せそうなのか?元巨人ファン女性が分析する“意外に深かった結論”
バッグの裏面
――ご主人も大の阪神ファンだと。

牛窪 はい。ただ彼は関西人で、私よりもずっと古くからのファンなので「君は暗黒時代を知らないからね」と(笑)。タイガースが負けて、私が怒っていると「タイガースなんて負けるのが当たり前なんだから、そんなことでいちいち腹を立てるのはまだまだ」と諭されますし、いい意味で「行き過ぎない推し活」のブレーキになっています。

プロ野球ファンの熱意でアンケートが大成功に

なぜ阪神ファンはあんなに幸せそうなのか?元巨人ファン女性が分析する“意外に深かった結論”
『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう』(集英社)
――新著の執筆段階では、牛窪さん自身がXで阪神の女性ファン「TORACO」のみなさんに向けてアンケートを募り、2868通もの熱意ある回答が寄せられました。

牛窪 出版社との話し合いで「新著ならではの調査結果があると、なおいいですね」となったんです。石黒さんも「100~200通ぐらい集まればいいよね」とおっしゃっていましたが、アンケート開始から2日ほどで1000通を超えたのでビックリしました。最終的に約1週間で2868通に達して、回答期間中は阪神の男性ファンのみなさん、そして他球団のファンのみなさんも「牛窪さんが困っているから助けてあげて」と言いながら拡散してくださって、プロ野球ファンの強い絆を感じました。

――阪神ファンのみならず、プロ野球ファンが一丸となっての展開は熱いですね。

牛窪 そうなんです。
各チームのファン同士は分断されているイメージもありますが、今はセ・パ交流戦でリーグ間の垣根も低くなくなったし、多球団やMLB(アメリカとカナダのプロ野球リーグ)の選手が集う国際大会の「WBC(WORLD BASEBALL CLASSIC)」もあるので、ファン全体が「プロ野球人気をもっと盛り上げたい!」という使命感で繋がっているんだと感じます。

「小さな幸せ」を積み重ねられるコミュニティの重要性

なぜ阪神ファンはあんなに幸せそうなのか?元巨人ファン女性が分析する“意外に深かった結論”
応援時の牛窪さん
――そんなプロ野球ファンの思いも乗った書籍のみどころも教えていただきたいです。

牛窪 阪神ファンを題材に「幸福感」を掘り下げた新著では、行動経済学やマーケティングなどに関連する国内外の研究論文を多数集めました。校正の段階では、私の会社の校正スタッフ(女性)の力も借りたんですが、彼女たちは阪神ファンどころか野球は全然詳しくないのに、「この考え方って、今日から使えますね」などと共感してくれたんです。

たとえば私のように、「今カレ」の阪神の応援をよりいっそう頑張れるのは、過去にファンだった巨人という「元カレ」をライバル視しているからこそで、こうしたいい意味でのライバルの存在による効力アップを「ピア効果」といいます。このように、野球以外の生活や仕事で活かせる考え方を多く盛り込んだので、彼女たちも「日常的に意識したい」と言っていました。

また、この本に書いたファン同士の繋がり、私のような「推し活仲間」との繋がりは、タイガースやプロ野球が好きな方でなくとも、「そうそう」と共感していただけると思います。損得ではなく、フラットに同じ価値観を共有して「小さな幸せ」を積み重ねられるコミュニティは、社会的にも経済的にも分断が生まれがちな現代社会にとって、とても重要な要素。実は持続的な幸福感(ウェルビーイング)とも、深い関わりがあります。

みなさんもこの本を機に、「自分の好き」で繋がれる相手をシンプルに探していただけたら、いま以上に毎日が輝いてくるはずです。

<取材・文/カネコシュウヘイ>
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