橋田壽賀子脚本の人気長寿ドラマシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で10歳から12年間、“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じていた宇野なおみさん(36歳)。かつて“天才子役”と呼ばれた宇野さんは現在、フリーライター、エッセイストとして活動中です。


 そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けするエッセイ連載。今回は宇野さんが「ずっと怖かった」という言葉について綴ります(以下、宇野さんによる寄稿)。

「渡鬼の子」として、みっともない自分になりたくなかった

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 みっともない人だと思われたくない。でも、それって、誰に?

 皆様、ごきげんよう。フリーマーケットで素敵なものをゲットしたり、推し活でアイドルマスターのイベントに毎月行ったりして毎日すこやか、宇野なおみです。

 年度も替わりますし、すてきなものをしまう・飾るために、少し片づけをしたい所存です。

「“渡鬼の子”として清く正しく…」36歳・元子役の私が長年おびえていた“ある言葉”の正体
最近家から出土した写真。一応小学校の高学年です
 さて、今回はことばの話です。本が好きで、アナウンサーの娘で、子役から俳優をやって、通訳・翻訳をやって、書いてきた私。思えば言葉に執着してきた人生のような気がいたします。

 そんな私は長年、「みっともない」「みじめ」という言葉がとても怖かった。

 人からそう思われたくない、という気持ちがとても強かったんです。それは、子役として人前に立つ機会が多く、常に視線を意識して生きていたというのもあるかもしれません。

 人から、「渡鬼の子」と見られるのはどうしたって避けられませんからね。
誤解なきように言いますと、子役だったこと、貴重な経験をいただいたこと、今日までに至るまで自分の人生の宝物だと、ラッキーヤッピーちょっとおっぱっぴーだと思っております。

 爆裂LOVE&PEACEです(最近のお気に入り曲:M!LKさん、『爆裂愛してる』の歌詞より)。

 その「渡鬼の子」とみられてきたおかげで、常に自分を律し、おおむね清く正しく(※)生きて来れたわけですし。※主観であり実際とは異なる場合があります。

 ただ、「みっともない」「みじめ」、これはずっとずっと怖い言葉でした。「レ・ミゼラブル」というミュージカルの意味を調べたときに「みじめな人たち」という訳に遭遇したことが多分に影響している気がします。今思うと適訳は「かわいそうな人たち」じゃないですかね。「ああ無情」って邦題になっているくらいですし……。

みっともないとみじめの語源について調べたら

 20代はいろいろ悩み、苦しみ、試行錯誤の日々でした。そんな中で、どうしても嫌で怖かったこの言葉。30半ばを過ぎても、いまだに若干おびえながら暮らしていました。ただ最近、単語の語源をたまたま調べまして。

みじめ
[形動][文][ナリ]《「見じ目」の意》かわいそうで見るにしのびないさま。
いたいたしいさま。(コトバンクより)


 見じ、の「じ」は打消し推量。許すまじの「じ」ですね。目は痛い目にあう、のような、経験する様子の意味があるようです。 「見るのに忍びないさま」……ん?

 さて、お次は「みっともない」です。

 実用日本語表現辞典によると、

みともない ← みとうもない ← みたくもない(=見たくもない)

 が変化したものだそうです。 見とうもない、なるほど。

 要は「みっともない」も「みじめ」も、あくまで「他者から見た様子」を表した言葉だったわけですね。それはそうだ。

 つまり、「自分じゃどうにもコントロールできないエリア」ということです。

世の中は「自分でなんとかできること」と「どうにもできないこと」に分類される

「“渡鬼の子”として清く正しく…」36歳・元子役の私が長年おびえていた“ある言葉”の正体
ズッコケの一例:夏、一人旅前日に腹を下してのたうち回る
 わたくしは自分のことを、ややズッコケながら懸命に生きている、愛おしき人間だと思っております。

 しかして、「何フカしてやがるんだ」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。それはあくまでその方の視点であり、致し方ありません。
訂正する義務はないですから。いえできれば好んでいただけたら嬉しいのですけれども。

 税金を締め切りまでにおさめるとか、友人を裏切らないとか、過度な妄執を抱かないとか、自分でなんとかできることは世の中に多々ございます。

 でも、不倫や浮気や遺産相続で揉めるといった、信じた人に裏切られる事態、投資した会社がとんでもない粉飾決算をしていて株価が電子の海に塵となりぬる、などという状況は、自分ではコントロールできません。

・自分で何とかできること
・自分ではどうしようもないこと

 この区分けをきちんとする。これは、生きるための知恵のひとつだと思います。

 自分で何とかできることは、なるべく努力する。コンビニに行くのが面倒くさいなら、税金納付をオンライン手続きに変更するとか、朝が弱いなら目覚ましを大音量に替えるとかですね。

 実際にこれらは改善のためにやってみまして、まあまあ効果がありました。

 ただ、どうにもならないことに関しては、腹をくくる。これしかないんですよ。所得税とか、減額してもらいたいと思ったら強訴するしかないですからね。
大塩平八郎か。

自分で自分を「嘲らない」こと

 話を戻しましょう。

「みっともない」「みじめ」という言語が、人から見たさまを表すのなら、人からこう思われたとしても、コントロールなどできません。

 大事なのは、自分で自分をそう評し、嘲(あざけ)らないこと。

 もし私のように、人から見た様子を気にしている、という方がいたら、ちょっと一緒に肩の力を抜きませんか。

 若いころ、たくさんの壁にぶつかりました。いえ、今だって、うまくいかないこと、失敗ばかりです。渡る世間は失敗ばかりといった風情の人生です。

 でも、それを「みっともない」「みじめだ」と自分で断じるのは、しなくていい。先ほど申し上げましたように、私なりに懸命に生きております。そんな己を、自分で責め立てる必要はない。愛して、慈しんでやってもいいんじゃないか。


 そう思った瞬間に、長年の呪縛がすーっと抜けるのを感じました。う~ん、早く気づけばよかった。

 同じ「み」なら今を時めくアイドル、M!LKさんのことを考えていたほうが精神衛生上良いです。お気づきでしょうが、なんだか急にハマりました。

 どうか、ご自分のことも爆裂LOVE&PEACE、で生きていきましょう。

<文/宇野なおみ>

【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中
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