新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(45歳)。

 40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。

 第41回は、ハワイ移住をきっかけに見えてきた、大木さんの子育ての悩みと向き合いながら、世界一周を経験したかかさん(@kaka_boshi_traveler)との対談を通して、「この選択でよかったのか」と揺れる中で見えてきたヒントを綴ります。

「これでよかったのか?」海外移住の悩み

「娘は小学校の卒業目前で退学」家族でハワイ移住した元テレ朝ア...の画像はこちら >>
 2025年10月、家族でハワイに移住して半年が経ちました。実は先日、日本に一時帰国し、娘が通っていた小学校の卒業式の謝恩会に参加しました。

 6年生の9月まで通った私立の学校を卒業目前で退学して、ハワイに移住することになった娘。ひとりだけ制服を着ていない娘の姿を見たとき、「これで本当によかったのか」という想いがよぎりました。

 ハワイ移住というとキラキラしたイメージがあるかもしれません。でも実際には、息子が学校で問題を起こすこともあり、子どもたちの進路にも悩みが尽きません。

 そんな気持ちを抱えていたとき、親子で世界一周を経験されたかかさんとの対談をする機会がありました。その対談を通して、ヒントのような言葉に出会ったので、今日はそのことについて綴ってみたいと思います。

レールに乗せる教育は現代にあっているのか?

 以前のコラムでも書きましたが、子どもたちは日本で都内の私立小学校に通っていました。受験をして入学し、いわゆる“レール”に乗せた形です。


 しかし、私の仕事の都合で、その学校を途中で離れることになり、現在はハワイの現地校に通っています。

 「世界は広くて、今いる場所だけがすべてではない」

 多様性のあるハワイの環境で、そんなことを子どもたちが肌で感じられていることは、親として大きな意味があったと感じています。

 それでも、自分で乗せたレールから、自分の手で降ろしてしまった。

 今回の一時帰国で、娘が本来出席するはずだった卒業式の後に開かれる謝恩会に足を運び、「この選択は親の勝手だったのではないか」そんな思いが、ふと胸をよぎりました。

 レールに乗せること。そこから外れること。どちらが、本当に子どものためになるのか。

 その気持ちを対談でかかさんに話したとき、こんな言葉が返ってきました。

「海外の教育も、日本の教育も、それぞれに良さがあると思います。ただ、たくさん見てきた中で感じるのは、日本の教育で一番もったいないのは、“レールが敷かれてしまうこと”なんです。

子どもも親も気付かないうちにレールに乗ってしまって、自分で考える機会を失ってしまうことが、一番問題だと思っています。もちろんそれが一概に悪いことだとは思っていません。
日本人のほとんどはそう育ってきていますから。

 でも世界はどんどん変わっているのに、教育も親のマインドも変わらない。それって本当に大丈夫なのかと、疑問を投じたいんです」

 そんなふうにかかさんからの喝をいただきました(笑)。まさに、勝手にレールに乗っていたのは、親である私自身だったのかも……と痛感する部分もありました。

かかさんの大切にしている教育観とは

「娘は小学校の卒業目前で退学」家族でハワイ移住した元テレ朝アナが“迷い”明かす。子連れ世界一周を経験したママに話すと
対談キャプチャ
 かかさんはそのうえで、ご自身が大切にしている教育観について、こんなふうに話してくださいました。

「私は子育てにおいて、“レールを敷く”のではなく、“枝を分けていく”ことを大切にしています。枝が折れてしまっても、次の枝がある。大事なのは、一本の細い木をまっすぐ伸ばすことではなく、太い幹を育てることだと思っています。

太い幹を枝分かれさせて大きくして、人生で何があっても、進んでた枝が折れてしまっても、別の枝に進めばいい。そうやって選択肢を持てる状態を子どもに残したいと思っています」

 だからこそ、海外に出る意義があるとかかさんは続けます。

「英語を学ぶことが目的ではなくて、そこで出会う人や、見たことのない景色や食べ物、そういう一つひとつが選択肢になるんです。でも、それは親自身も見ていないと、子どもに示すことができない。だからまずは親が世界を知ることが大切だと思っています」

 その言葉を聞いて、かかさんがこれまで見てきた世界の広さを感じました。


 実際にかかさんは、娘さんとの世界一周を終えた後も、親子で海外での生活を続けながら、カンボジアに学校をつくったり、セブ島で貧困層への支援活動を行ったりしてこられました。さらに現在はセブ島で、語学学校オープンに向けて準備をされています。

 さまざまな経験を重ねて、枠に囚われない生き方や子育てを実践しているからこそ、説得力のある言葉でした。

「遅れさせてはいけない」という焦りは本当に未来につながっているのか?

 海外での生活が始まってから、もうひとつ、ずっと頭の中にあるのが子どもたちの学びのことです。

 いつか日本に帰るときが来るのに備えて、日本の学習要領に沿って、しっかりフォローしていくべきなのか。私は子どもたちに、日本での学習に遅れがないように問題集を揃えて、朝の時間に解かせたりしています。

 でも、現地の学校の学習もあるなか、日本の学習も並行してやっていくのは大変で……。

 そんなお話を対談でしたとき、対照的な考え方に触れました。かかさんは、まったく違う視点を持っていました。

 かかさんに娘さんの日本の学習についてどうしているのか尋ねると、

「本人がやりたいと思っていないことは、無理にやらせていません。それよりも、その子が今、何に興味を持っているかのほうが大事だと思っています。極端な話、今やっている勉強が10年後、本当に必要かといわれたら、そうじゃないものも多いと思うんです。10年後の日本の世界で、漢字を書けることがどのくらい求められているでしょうか」

 さらに、こんな言葉もありました。


「どうしても高校や大学進学をゴールに考えてしまうと、そこから逆算して焦ってしまう。でも私は、小学生で起業する道があってもいいと思っています。そのための支援はどれだけでもしたい。人生のゴールを大学進学に置いていません。大学は本人が学びたいと思ったときに、いつでも行けると思っています」

 さすが、かかさんの視野はどこまでも広いというのを痛感しました。

環境を変えるだけでは変わらない、子育ての本質とは

 教育について考える中で、もうひとつ、私の中で大きかったのが、息子のことでした。

 日本の私立の小学校に通っていた頃、息子はしゃべりすぎてしまう性格で、和を乱し周りと対立することがありました。うまく馴染めず自己肯定感がどんどん下がってしまっていました。

 ハワイに来て、多様性が受け入れられる環境に変わり、ひとつの価値観に縛られず、もちろんよかった面もあります。個性が受け入れられて、少しはラクになるのではないかと思っていました。

 けれど実際には――環境が変わっても、うまく言葉にできず、気持ちがあふれてしまい、キレてしまうということがあって。

 そんな彼を受け入れてくれる世界はどこにもない。だから直さなきゃいけない部分ではあり、どうしていいのか悩んでいました。


 そんな息子の様子をかかさんに相談したとき、こんな言葉をかけていただきました。

「きっと、頭の中の言語化がまだうまくできていないんだと思います。言いたいことはあるのに、それをどう表現していいかわからないから、行動で出てしまう。もし私の娘が同じ状況であったら、家庭の中でとことん言葉にする手助けをします。“本当はどうしたかったの?”って、一緒に整理していく。

そして、“じゃあ次はどうする?”って、解決策も一緒に考える。もちろんすぐにできるようにはならないと思います。でも、それを繰り返していくことが大事だと思います」

 さらに、ふたつの言語を操らなきゃいけないという環境だからこその難しい点もあります。

「今は日本語と英語が混ざる環境でもあるから、余計に混乱している部分もあると思います。だからこそ、家庭の中で安心して言葉を使える時間がすごく大切なんです。忙しい日々の中でも、スマホを見ないで1分でも長く子どもと向き合う時間を作る。ここに安心材料があると、子どもの意見をたくさん引き出すことができます。


ただ聞いてあげるだけでなく、親としての意見をちゃんと伝えてあげる。そうやって、子どもの心を育てるのが大事なのかなと思います。週末でもいいからちょっと違う環境に入れてみると、また切り替えができるかもしれませんね」

 その話を聞いて、はっとしました。

 環境のことばかりに意識が向いていたけれど、本当に大事なのは、そこではなかったのかもしれない。

 どんな場所にいても、子どもが安心して気持ちを言葉にできること。そして、それを受け止めて、一緒に考えていくこと。

 結局のところ、子育ての本質は、「どこで育てるか」ではなく、「どう関わるか」なのだと気づかされました。

親子で見つけた「レールの外の景色」

「娘は小学校の卒業目前で退学」家族でハワイ移住した元テレ朝アナが“迷い”明かす。子連れ世界一周を経験したママに話すと
大木さんのお子さんたち
 今回のかかさんとの対話を通して、改めて親子で海外に身を置くからこそ見える景色があるのだと実感しました。

 今私が抱えている揺らぎは、日本にいてレールに乗っているだけでは見えなかったことです。言葉が通じない。文化が違う。それだけで、当たり前だと思っていた世界は一気に広がっていきます。

 そしてその一つひとつの経験が、子どもにとっての「枝」になっていくのだと、かかさんとのお話を通して、大きな力をもらいました。

 子どもと過ごす時間は、本当にあっという間です。それなのに私は、「悩んでいる」と言いながら、目の前の子ども自身を、きちんと見られていなかったのかもしれません。

 どんな環境を選ぶかも大切ですが、それ以上に大切なのは、その環境の中で何を感じ、どう関わるか。

 子どもと過ごす限られた時間の中で、一緒にどんな景色を見て、どんな経験を重ねていくのか。その一つひとつが、きっとこれからの人生の「枝」になっていくのだと思います。

 そんな時間をほんの少しでもいいから、意識的につくっていきたいと思っています。

<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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