3月24日、人力舎所属の実力派トリオ・トンツカタンが解散を発表。ネクストブレイクとも噂されていただけに、世間では衝撃が走った。


この発表を知った時、現役芸人でもある筆者は驚きと同時に、妙な納得感もあった。昔に比べ、芸人が解散しやすい状況になっているからだ。

「ネクストブレイク」と期待されていたトリオ

トンツカタンは森本晋太郎、お抹茶、櫻田佑からなるトリオだ。「お笑いハーベスト大賞」は優勝、「NHK新人お笑い大賞」「ABCお笑いグランプリ」は決勝進出など、若手の登竜門的賞レースで存在感を示している。

そんなトンツカタンの解散を惜しむ声が数多く上がり、一時期SNSのトレンドワードに上昇するほどとなった。

トンツカタンは現在、ネクストブレイク枠として頭角を表してきたところだ。トリオの顔でもある森本は、テレビでの露出も増加。『ツッコミのお作法 ちょっとだけ話しやすくなる50のやり方』(KADOKAWA)という本も出版した。

実力派トリオの電撃解散に「妙に納得」したワケ…現役芸人が感じ...の画像はこちら >>
YouTubeチャンネル「タイマン森本」は再生回数100万回を超える動画もあり、さらにはネット配信番組「BLACK or WHITE」(NewsPicks)で癖の強いタレントを活かすMC能力が評価され、いまや「ポスト上田晋也」との呼び声高い。

そしてお抹茶も今年の『R-1グランプリ2026』(関西テレビ、フジテレビ系)で決勝進出。奇想天外で独特の世界観のネタで、ファイナルステージまで進出するなど爪痕を残した。

3人の活動スタイルに「解散もやむなし」

ツッコミ能力の高い森本、天真爛漫なボケのお抹茶、そして飄々とした個性派である櫻田とバランスの良い3人に、知名度がついてきた矢先の解散。個人的にも驚いたし、正直「もったいない」という思いも強かった。

ただ、冷静になって3人の活動スタイルを見ると「解散もやむなし」と言わざるを得ない。


「ネタ」と「露出」のバランスは難しい

『バナナマンのしらバナ』(TBS系)という番組内では、バナナマンに「お抹茶が解散したがっている」という相談を持ち掛ける回があった。

その中でお抹茶は「森本は僕たち以外の人とネタをやっていて、それが寂しい」「森本以外のツッコミを入れたい」と吐露。森本はその高いツッコミ能力を活かして、他芸人たちとの絡みが多いことが気にかかっていたようだ。

森本もそれに対して、「(トリオとして)やりたい気持ちはあるが、自分以外の人とやりたいの止めてもいいものか」と悩んでいた。

おそらくお抹茶は「トリオのネタを第一にしてほしい」、森本は「まずは一人で売れて、トリオを引っ張って行きたい」というスタンスの違いがあり、これが埋めきれなかったのだろう。

現に森本が忙しくなるにつれて、トリオとしての活動や舞台数がかなり減っていた。森本が一人で露出すればするほど、トリオとしての活動が減る悪循環になっていたと言える。

「ネタ」と「露出」どちらを選ぶかという足並みが揃っていないと、コンビやトリオとしては活動が難しい。なぜかというと、どちらを重視するかで活動の仕方が180度変わってくるからだ。

「ネタ」を重視するなら舞台数を増やさなければいけないし、「露出」を選べば必然的に舞台数は減り、ネタを磨く機会がなくなる。実は活動を続けるにあたって、この価値観は一緒でなければしんどい、というのが現実だ。

ネットの普及で若手でも「食える」状態に

トンツカタンの解散を目の当たりにしても感じたが、最近、若手芸人の解散のハードルが低くなっている、YouTubeやSNS、配信などのプラットフォームが発展し、例えコンビを解消したとしても、「食えてしまう」ことが当たり前になっているのだ。

実力派トリオの電撃解散に「妙に納得」したワケ…現役芸人が感じる“昔より解散しやすい”時代の変化
『ツッコミのお作法 ちょっとだけ話しやすくなる50のやり方』(KADOKAWA)
一昔前は解散してテレビや舞台の仕事が無くなれば、ネクストブレイク枠にいようが稼ぐ手段を失うということが当たり前。だが今、SNSでマネタイズ出来る手段さえ持っていれば、解散しようが明日から食いっぱぐれることがない。


そのせいで、今の活動に少しでも満足がいかないようなら、解散して理想を追い求めることを選ぶ若手が増えたのだと考えることは容易だ。

芸人が稼ぐプラットフォームの増加

実際の例を挙げるとすれば、『ABCお笑いグランプリ』で優勝した下田真生と九条ジョーのコンビ・コウテイは、解散後もYouTubeなどで各々活躍。

特に下田は粗品に可愛がられており、粗品のYouTubeや配信ありのライブなどに出演。解散前と比べても給料は大して変わらないどころか、増えている可能性もある。

また、カトパンにそっくりのおデブ女芸人としてブレイクした餅田コシヒカリと小野島徹のコンビ・駆け抜けて軽トラも典型的な例だ。餅田が可愛らしい顔立ちを活かしてファッション系のYouTubeを伸ばし、他SNSでのフォロワーも増加したことで、「プロデュース業に転身したい」という理由で解散に至った。

10年前からは考えられない理由だが、現在、芸人が稼げるプラットフォームが増えたことで、このような転身も可能となったのだ。それゆえにネクストブレイク枠にいたとしても、「解散」という道を選びやすくなったのだろう。

トンツカタン、それぞれの未来は明るい

今回の解散を受けて、「露出の多い森本や、精力的にライブに出演するお抹茶は大丈夫だろうが、櫻田はやっていけるのか」という不安の声が多数上がっていた。

筆者としては、櫻田は独特の雰囲気があり、演技が上手いので、今後は俳優として活動の幅を広げていくのが良い気がする。SNS上でもお笑いファンや同業者からこのような意見が多くみられているため、期待も高まっていると言える。

解散は残念ではあるが、三人がそれぞれが進みたい道を天秤にかけての結論である。同業者としては全力で応援したい。
「トンツカタン、解散して正解だったね」と明るく言える未来を願うばかりである。

<文/寒田帽子>

【寒田帽子】
現役のお笑い芸人。かつては年間100本以上のライブ出演。ライブ主催者としての一面も持つ
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