新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(45歳)。

45歳・元テレ朝アナが振り返る、20代後半の“焦りと迷い”「...の画像はこちら >>
 40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
現在は旅行アプリ「NEWT(ニュート)」の広報を担当。さらに2025年10月には、ハワイ子会社「ALOHA7, Inc.」のCEOに就任し、家族とともにハワイへ移住。新たなステージで活躍の場を広げています。
 第42回は、「クォーターライフクライシス」という言葉から自身の20代後半を振り返ります。

クォーターライフクライシスを振り返る

 「クォーターライフクライシス」という言葉をご存じでしょうか。

 20代後半から30代前半にかけて訪れる、「私の人生、このままでいいんだっけ?」という嵐のような揺らぎの時期。そのことをクォーターライフクライシスと呼ぶそうです。

 かつての私にも、まさにその渦中にいた時期がありました。今振り返ると、「どうしてあんなにもがいていたんだろう」と不思議に思うほどですが、当時は確かに、出口の見えない焦りの中にいたように思います。

 40代半ばを迎えた今だからこそ思うのは、あの焦りにもちゃんと意味があった、ということ。あの頃の自分に「大丈夫だよ」と静かに声をかけるような気持ちで、今日はその“焦りの正体”について綴ってみたいと思います。

クォーターライフクライシスの正体は「親離れ」だったのかも

 40代半ばになった今、あの頃の自分を振り返ってみると、あの焦りは、本当の意味での「親離れ」だったのではないかと思います。

 20代後半になると、周囲が結婚したり、仕事で成果を上げたりと、急に“人生が進んでいる人たち”が目に入るようになります。

 一方で、自分の手元には何もないような気がして、理由のわからない焦りに駆られてしまう。
でも、この苦しさの正体は、「何も持っていないこと」への不安ではなかったのかもしれません。

 というのも、20代前半、つまり大学卒業くらいまでは、私たちは親や学校、社会が用意してくれた初期設定の“OS”の上で生きてくることができます。いい学校に入り、いい会社に就職する――そんなわかりやすいマイルストーンが用意されている世界です。

 けれど20代後半になると、そのOSが突然通用しなくなる。これまでの価値観では進めない場所に立たされ、「自分で選ぶ」ことを求められるようになるのです。つまり、自分専用のOS、自分なりの価値観や生き方を、ゼロからつくっていかなければならないフェーズに入る。

 そう考えると、あの焦りや迷いは「うまくいっていないサイン」ではなく、本当の意味での親離れだったのではないかと思うんです。だからこそ、バグが出たり、フリーズしたりする。

 それは、自分で自分の人生を歩みはじめた証拠なんじゃないかなと、思いました。

展示会にすぎない「SNS」との付き合い方

 そんなふうに、心がいちばん不安定になりやすい“OSの切り替え時期”に、SNSを開くとどうなるか。そこには、まるで「正解」のような道を進み、成功している誰かの人生が、24時間いつでも流れてきます。

「あの子はこんなキャリアを築いている」「この人は理想的な結婚をして幸せそう」

 そんな投稿を見てしまうと、自分が選ばなかった道が正解に見えてきてしまう。

 でも、40代になった今だからこそわかるのは、SNSは“人生の展示会”のようなものだということです。


 そこに並んでいるのは、きれいにライティングされた一部の作品だけ。いわば、誰かが丁寧に切り取って、カスタマイズした「完成形の画面」です。

 その裏側にある葛藤や涙、うまくいかなかった時間までは、映し出されません。

 だから、いま自分がつくろうとしている「自分自身の価値観」と、あえて比べる必要はないのだと思います。

 むしろ素敵な投稿に出会ったときは、「こんな選択肢もあるんだ」と、未来の可能性を知るきっかけとして受け取ればいい。

 比べるものではなく、世界の選択肢を広げてくれるカタログのように、エンタメとして楽しむ。

 とはいえ、当時の私はやはり例外ではなく、SNSを見ては落ち込んだり、誰かと自分を比べてしまうことも、何度もありました。

今この瞬間を大切にする生き方をしても大丈夫

45歳・元テレ朝アナが振り返る、20代後半の“焦りと迷い”「私の人生これでいいんだっけ」の正体とは
大木優紀さん
 スタートアップ企業に転職してから、「マイルストーンから逆算して考える」という言葉をよく聞くようになりました。

 マイルストーンとは、プロジェクトの中間目標地点のことをいい、そこから逆算して、スケジュールを立てていくことがビジネスの現場では重要だとされています。

 転職当初は「マイルストーンって何ですか?」と聞いていたはずなのに、今では当たり前のようにその言葉を使っている自分に、嫌気がさすんですが(笑)。

 仕事において、この“逆算思考”が大切なのはよくわかります。けれど、個人の人生においても同じように、「未来のために今は歯を食いしばって耐える」生き方が本当に正解なのか――ふと立ち止まって考えることがあります。

 偉大なスポーツ選手や成功している女性タレントの方々は、このマイルストーン思考、つまり目標から逆算する生き方を勧める方が多いですよね。
逆算のマイルストーンをしっかり立てたら人生変わったよというような。

 でも正直にいうと、私はそんな生き方がちょっとしんどいなと思っていて。

 明確な目標に向かって、頑張り続ける。それが苦ではない人もいるのだと思います。でも私はそういう生き方が苦しくなることがある。だから永遠の三流なのかもしれませんが(笑)。

 だから、そういう発信ばかりが目について苦しくなったときは、いったんSNSを閉じて、スマホをバッグにしまいます。

 そして、目の前の「今」に意識を向ける。窓の外の雲、通り過ぎる人の靴の音、今食べているものの味を感じてみる。

 そうすると、不思議と、さっきまで「ヘタレだな」と思っていた自分の気持ちも、大切なものに思えてくることがあります。

何者かにならなくても、楽しんでもいい

45歳・元テレ朝アナが振り返る、20代後半の“焦りと迷い”「私の人生これでいいんだっけ」の正体とは
大木優紀さん
 40代になって気づいたのは、何者かにならなくても、私は私として毎日を楽しんでいいんだ、ということでした。

 クォーターライフクライシスを経て、本当の意味での親離れをし、自分なりの価値観を少しずつ確立していく。


 そして、SNSのノイズを手放した先に残るのは、「今ここにいる自分」です。その自分をご機嫌に保つこと。

 それこそが、私にとっての“人生のデザイン”なのではないかと、今は思っています。

 20代、30代。焦ってもいいし、迷ってもいい。でも、SNSの誰かの正解に合わせる必要はありません。もし、クォーターライフクライシスを感じている方がいたら、1回スマホを置いて、美味しいパンでも食べながら息抜きをしてみる。

「何者かになること」よりも、「今の自分の人生を楽しむこと」に、そっとフォーカスしてみる。そうすると、違った景色が見えるかもしれません。

 ちなみに私は、クォーターを一気に超えたミッドライフクライシスの側なんですが、20代30代の焦りの時期を振り返って感じたことを今日は綴ってみました。

<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。
21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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