(台北中央社)19日午後、台北市の繁華街で男が刃物で買い物客らを襲撃した事件で、衛生福利部(保健省)は20日、午前6時25分までに容疑者の男を含む4人が死亡、11人が負傷し、うち2人が集中治療室で治療を受けていると発表した。警察は男の関係先の捜索や家族からの事情聴取を進め、犯行の動機などを調べている。


▽容疑者の男、台北駅での犯行直前に放火

警察によると、男は過去に警備員の仕事をした経験があるものの現在は無職。今年7月、戸籍の移転に関する届け出がされておらず、兵役後の男子に課される招集教育訓練の通知が送付できなかったとして、台湾桃園地方検察署(地検)に指名手配されていた。今年1月から犯行現場に近い場所に居住していたが、ここ数日は台北メトロ(MRT)中山駅近くの宿泊施設に滞在していた。

男は19日午後3時過ぎ、台北市内でオートバイに放火。同5時過ぎには自宅にも放火した。この時点で警察の注意を引くことができなかったため、その後の犯行につながった可能性がある。

同5時過ぎ、メトロ台北駅の地下コンコースで発煙弾を投げた。制止しようとした男性1人が心肺停止となり、その後病院に搬送されたが死亡した。またメトロの職員が喉を負傷し、病院で手当てを受けた。意識はあるという。

男は歩いて宿泊施設に戻り、約30秒滞在して凶器などを持ち出し、同6時過ぎに中山駅近くの路上で再び発煙弾を投げた後、刃物を振り回しながら商業施設に入り、買い物客を切り付け、6階から飛び降りた。

▽事件直後の現場は混乱

中山駅近くの現場に居合わせた男性は中央社の取材に、多くの人が負傷者を囲み、救助隊員が負傷者を救急車に運んでいたと話し、大勢の人で混乱していたと語った。


別の男性は事件直後、多くの人が自分の方に走って来るのを見たと語り、直前には勤務先で台北駅での事件発生を受けて注意するよう呼びかけがあったことから、身構えたと話した。

事件を受け、被害者が出た商業施設は20日の営業を取りやめた。

▽男の自宅に火炎瓶の材料

警察は、事件後に男の関係先を捜索したところ、自宅や宿泊施設から火炎瓶の材料が見つかったと明らかにした。

また男の両親に対する事情聴取も行われた。消息筋によると、男は長期間家族と連絡をしていなかったという。

北部・桃園市にある男の実家近くの住人は取材に対し、男が指名手配された際に警察が両親を訪ねてきたことがあったと語った。男についてはあまり知らないと話した。

(陳昱婷、呉欣紜、葉臻、劉建邦、黄旭昇/編集:齊藤啓介)
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