(台北中央社)台北市内で通行人らを無差別に襲撃した張文容疑者(27歳、事件後に死亡)について、事件前の動きや動機に関する捜査が進んでいる。これまでの調べで、1年半以上前から犯行に必要な用品の購入を進めていたことが分かっている。


張容疑者は19日午後、3カ所で放火をした後、台北メトロ(MRT)台北駅構内や中山駅周辺で発煙弾を投げ、通行人らを刃物で襲った。3人が死亡、11人がけがをした。容疑者も事件後、現場の商業施設の屋上から飛び降りて死亡した。

国軍の志願兵だった張容疑者だが、2022年に除隊。その後は警備員として1年ほど勤務し、離職後は無職だった。戸籍移転の未申告で予備役の教育招集令が送付できず、兵役妨害処罰条例で定める罪に抵触した容疑で今年7月に指名手配されていた。

台北市政府警察局の李西河局長は22日の記者会見で、張容疑者が昨年4月から、防毒マスクや発煙弾、ガソリンタンク、ガスボンベ、メタノールを相次いでインターネットで購入していたと明かし、計画的犯行だったことが極めて明らかだと述べた。

また、容疑者が犯行当日、放火や襲撃を相次いで行う過程で、移動手段や服装を複数回にわたって変えていたことが分かったと説明。警察の捜査を遅らせる狙いがあったとの見方を示した。

▽タブレットから犯行計画書 中国スパイの関与は「痕跡なし」=警察

検察と警察による捜査チームは20日、張容疑者が宿泊していたビジネスホテルで押収したタブレット端末を調べたところ、過去に接続したクラウドサービスから、犯行計画に関する資料を見つけた。この資料によると、張容疑者は数カ月前の時点で犯行地点や手段を決めており、地図も用意していた。

14年に台北メトロの車内で発生し、4人が死亡した無差別襲撃事件の関連ニュースを検索していたことも分かった。


台北市警察局刑事警察大隊の盧俊宏隊長は22日の会見で、犯行計画の内容は3カ所での放火と台北駅・中山での襲撃に関するものに限定されていると言及。報道陣から指摘された中国のスパイの関与については、関連する痕跡はないと説明した。

内政部警政署(警察庁)によれば、張容疑者は家族と2年以上連絡を取っていなかった。無職の張容疑者が、犯行に必要な資金をどう調達したかにも注目が集まっている。盧隊長は、金銭の流れに関する捜査を積極的に行っているとし、進展があれば説明すると述べた。

(黄麗芸、劉建邦/編集:田中宏樹)
編集部おすすめ