地元の新店区公所(役所)によると、新店渓の渡し舟の歴史は清朝時代の1881年までさかのぼる。かつては橋がなく、移動は渡し舟が頼りだった。9カ所あった渡し舟のうち、「新店の渡し」は新店中心部と湾潭、直潭、塗潭、屈尺、安坑地区を結ぶ交通の要衝だった。陸上交通の発展で現存する人力の渡し舟はここが台湾唯一だ。
20年以上運航を支えているのは、湾潭地区に暮らす李清さん(61)と李さんの弟。取材当日は小雨が降り、利用客は多くなかったが、呼び出し用のボタンを押すと、李さんは対岸から舟をこいで川を渡り、「乗りますか」と声をかけてきた。
かつては24時間運航で重労働のため、こぎ手はほぼ毎年交代していた。運行時間は後に1日18時間に短縮され、現在は午前6時から午後7時までになった。だが、年間を通じて休みは旧暦の大みそかのみだ。
過酷な仕事を、なぜ続けられるのか。李さんは、人力の渡し舟は歴史的背景があり、一種の文化遺産だとした上で、自身が舟をこぐ技術を持ち、区公所も存続の意向があるからだと語る。落水した人を救助した経験も少なくない。
最盛期には、小さな舟に通勤通学先へ急ぐ数十人が乗り込むこともあった。時代の変化に伴い需要は減ったが、湾潭地区には100世帯余りが暮らしており、今でも通勤で利用する人がいるという。
距離は短いが、強風時やにわか雨の時などには川の流れが変わるため、オールの操作には一定の技術が必要だ。経験と臨機応変に対応する能力が問われる。
かつては河岸の各家庭が舟を持ち、舟をこぐ技術も持ち合わせていた。だが、長時間労働で休みがなく、夏の暑さと冬の寒さに耐えなければならないため、仕事を継ぐ意欲のある若者は多くない。文化が失われる可能性も指摘される。李さんは、今は仕事として、しっかりとやり続けると語っている。
(曹亜沿/編集:齊藤啓介)








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