(台北中央社)立法院(国会)で野党の賛成多数で可決された「不当党産処理条例」など三つの法改正案について、卓栄泰(たくえいたい)行政院長(首相)は4日、法の公布に必要な副署(連署)を行わないと決定した。これに対し、野党の国民党や民衆党は同日、報道資料を通じて反発した。


副署をしないと決めたのは、国民党が戦後に不当に取得した資産を国や元の権利者などに移行することを定めた「不当党産処理条例」改正案の他、衛星ラジオ・テレビ放送に関する「衛星広播電視法」改正案、「立法院組織法」改正案の3法改正案。

不当党産処理条例改正案では、公益社団法人中国青年救国団を適用対象から除外する内容が含まれた。衛星広播電視法改正案では放送免許の更新を主務機関に退けられた事業者が、行政訴訟手続きの完了まで従来の免許で放送の権利を引き続き行使できる内容が盛り込まれた。立法院組織法改正案には、立法院が毎年、公務予算から立法委員(国会議員)の事務費や公設秘書の給与などの補助費用を計上する内容が明記された。

行政院の李慧芝(りけいし)報道官はこれらの改正案について、憲法の原則に著しく背くと指摘。不当党産処理条例を巡っては、すでに司法院大法官会議(憲法法廷)で合憲判決が下されていることを挙げ、改正案は司法と法の支配の基礎を揺るがすものだとの見解を示した。他の2法案についても、憲法の権力分立や法治国家の原則に違反するとした。

李氏は、行政院は立法院の職権を尊重するとした上で、法改正が憲政秩序と民主主義の原則に著しく反する場合、行政院には憲政機関として憲法に基づいて歯止めをかける責任があるとし、副署をしないとの決定は、憲政制度や法の支配、人々の権利を守るためだと説明した。

▽国民党や民衆党が反発

立法院国民党団(議員団)の林沛祥書記長は4日、行政院長は法律に基づき、法案に副署し、公布する憲政上の義務を負っていると指摘した上で、仮に政治的立場や個人的な好き嫌いで副署を拒むとすれば、これは憲政体制に背くだけでなく、行政権が法に拘束されるべきだとする根本原則を揺るがすとした。また行政院長が法案に「同意しない」との理由で副署をしないことがまかり通るのならば、今後、「気に食わない」との理由で執行しないことも可能になるのではないかと疑問を呈し、国家の憲政秩序に長期的で深刻な悪影響を及ぼすと主張した。

民衆党団の陳清竜総召(院内総務)は、立法院で可決された法律を、頼清徳(らいせいとく)総統や卓氏が気に食わないとの理由で公布せず、副署をしないことが許されるのであれば、これほど独り勝ちの行政権は立法権を空洞化させるだけでなく、司法権にまで取って代わると指摘。台湾が誇る民主主義と法の支配は、憲法を破壊し政治を乱す独裁者によって少しずつむしばまれているとし、民意は必ずや最も厳しい反撃を下すはずだとの見方を示した。


行政院はこれまで、立法院で可決された法案について違憲の疑いがある、または実施が困難だと判断した場合、再議(審議のやり直し)や違憲審査の申し立てといった形で対応していた。卓氏は昨年12月、財政収支配分法(財政収支画分法)改正案に対し、副署を拒否する手段を初めて用い、先月6日にも、軍人家族の居住地域「眷村」の改築に関する条例改正案に副署しないと発表していた。

(頼于榛、王承中、陳俊華/編集:名切千絵)
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