「長時間の映画を鑑賞する前に、ボンタンアメを食べたら、尿意が抑えられた」

そんな噂がSNSで広まったのは、もう半年ほど前のことだ。まさか......と思った人も多かったことだろう。

だが、長時間の映画やコンサートを鑑賞する際に、途中に席を立ってトイレに駆け込むなんてことは、誰しも避けたい。物は試しと噂に乗った人も、多くいた。

そして最近、3時間を超える長編映画『国宝』の話題が盛り上がるにつれ、この〝ボンタンアメ尿意抑制説〟を実行に移そうとする人の数が、さらに増えてきたようだ。

気になるのはその効果のほどだが......X上にはこんな喜びの声があふれている。

「国宝観るのにボンタンアメ持参したら尿意ゼロでいけたよ...一緒に行った母にもあげたら『効いたよ!?!?』って驚いてた」
「あくまで個人的な感想だが、ボンタンアメ本当に効いた。直前に二粒」
「ボンタンアメがマジで効いたので映画鑑賞にはボンタンアメを必ず持っていこうとなった」

だが一方で、「ボンタンアメ効かない」「ボンタンアメ一粒じゃダメだった!」といった反応も、見られた。......というわけで、Jタウンネット記者もスーパーでボンタンアメを購入して、記事を作成することにした。はたしてトイレに行かずに、記事を完成させられるのだろうか。

まずは、ボンタンアメについて詳しく知るべく、製造販売元であるセイカ食品(本社・鹿児島市)に話を聞いた。

「お客様に不明確なご返答はできません」

実は〝兄弟〟がいた!? 「尿意抑制」で話題のボンタンアメは、...の画像はこちら >>

ボンタンアメは、もちもちとした食感と、文旦や温州みかんの果汁による甘酸っぱい風味が特徴の古くから親しまれているお菓子だ。名前を聞くと、懐かしい気持ちになる人も多いことだろう。

Jタウンネットの取材に応えたのは、セイカ食品総務部の担当者だった。

まず「ボンタンアメは尿意を抑える」というSNS上の噂について聞くと、こう答えた。

「世間で出ている話につきましては、弊社では科学的知見を持ち合わせておりませんので、お客様に不明確なご返答はできませんこと何卒ご理解賜りたく存じます」(セイカ食品総務部担当者)

残念ながら、「ボンタンアメは尿意を抑える」説の実証は難しいようだ。

というか、食感も、味も、ちょっと不思議な食べ物だけど、ボンタンアメってそもそもナニモノなのだろう?

その製法について尋ねてみると、担当者は次のように答えた。

「ボンタンアメの主な原料は、水飴、砂糖、麦芽糖、もち米とボンタン果汁などです」「製法は、もち米を製粉したものに水を加えて膨潤させ、水飴や砂糖を加える。それを蒸気釜で攪拌しながら加熱し、最後に果汁などを投入、出来上がった生地を薄く延ばして冷却、一口サイズに裁断、オブラートに包んで完成です」(セイカ食品総務部担当者)

なるほど、あのもちもちはもち米だったのか!

そして原材料や製法に、尿意を抑えるヒントがあるかもしれない、とも思ったわけだが、皆目見当がつかなかった。

鹿児島生まれの記者としては、鹿児島県のお土産としてのイメージが強いボンタンアメだが、SNSの拡散の様子を見ると、全国的な知名度も高そうだ。

そこで現在の販売エリアを聞くと、

「ボンタンアメは全国で販売させていただいており、1年間の製造粒数1億2000万粒、14粒入りのボンタンアメで換算すると約850万個(2024年度実績)となります」

と担当者も誇らしげに語った。850万個!? そ、それはすごい......。

ボンタンアメの販売開始は1924年ということで、最近の商品パッケージには「100周年」というマークがデザインされている。鹿児島に生まれた郷土菓子が、100年を経て、全国で親しまれる存在になったのだ。今回、改めて話題にもなったことだし、今やSNS界隈でボンタンアメといえば知らない人はいない......というと、少し言い過ぎ?

ところで、セイカ食品にはボンタンアメの他にどんなお菓子を作っているのだろう?

ボンタンアメの〝兄弟菓子〟的なものってないのだろうか?

記者の問いに、担当者は「パイナップルアメです」と、即答した。

「ゴールデンパイン果汁」を使用したソフトアメということだ。

水飴、砂糖、麦芽糖、もち米など原材料はボンタンアメと共通だ。オブラートに包んであるところもそっくりだ。

ということで、Jタウンネット記者はスーパーに戻り、パイナップルアメを購入して来た。ボンタン果汁がパイナップル果汁が代わっているが、もちもちっとした食感や、オブラートに包まれたソフトな感触はボンタンアメに似ている。美味しくて、思わず3粒頬張ってしまった。

ちなみにセイカ食品の公式ウェブサイトを見てみると、パイナップルアメ以外にもシークヮーサーアメなんてのもあったし、ボンタンアメと同じくもち米が入ったもちもちのお菓子「梅もっち」や「もももっち」なんてのもあった。ボンタンだけではなく、色んな味があるようだ。

それにしてもボンタンアメとパイナップルアメ、記事を書くために、いったい何粒食べただろう。ついつい手が止まらなくなってしまうのが、危険だ。え? トイレ? 忘れてた!ともあれ、〝ボンタンアメ尿意抑制説〟が気になる方は、まず一度試してみてはいかがだろう。

ただしあくまで噂なので、抑制できなくても、自己責任ということで......。

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